FGSの原因には、家族性、薬剤性、ウイルス感染などいろいろな要素が認められ、糸球体上皮細胞障害の結果として引き起こされる糸球体病変ということになります。 この病気は、ステロイド薬など種々の薬物にも抵抗性を示す難治性、進行性の疾患であり、現在まで有効な治療法が存在せず、多くの場合に病後の経過も決して良くない疾患です。 |
病気が進行し、腎機能が次第に低下して腎不全に陥ると、最終的には透析療法の導入が不可欠となります。透析治療は一旦開始すると、生涯にわたって続ける必要があります。 尚、FGSという言葉は、英語の「Focal Glomerular Sclerosis」の略号です。 |
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◆〔FGS:巣状糸球体硬化症〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。 |
どんな病気ですか? |
FGS(巣状糸球体硬化症:そうじょうしきゅうたいこうかしょう)は、腎臓の糸球体の一部に巣状局所性の糸球体硬化性の病変が見られる腎臓疾患のひとつです。 多くの場合、典型的なネフローゼ症候群の症状を呈し、難治性で進行性の病気です。ネフローゼに伴う主な症状は、高度の蛋白尿の出現、低蛋白血症、全身のむくみ、血液中のコレステロールが増える高脂血症などです。 多くの場合、急速な腎機能の低下があり腎不全となり、最終的には人工透析を導入することになります。予後は良くありません。 この病気は、各年齢層に発症しますが、若年者に多く50歳以上では少なくなっています。成人では男子に多く発症します。また、ネフローゼ症候群患者の5~10%を占めています。 |
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◆〔FGS:巣状糸球体硬化症〕の症状をご説明します。 |
FGS:巣状糸球体硬化症の症状 |
巣状糸球体硬化症の症状は、これにより起こるネフローゼ症候群です。典型的症状は、全身的なむくみ、高度な蛋白尿、低蛋白血症の出現、そして血液中のコレステロールが増加する高脂血症などです。 ステロイド薬などに抵抗性を示す難治性・進行性疾患で、現時点では有効な治療薬・治療法はなく、急速に腎機能低下が進行し腎不全に陥ることとなり、最終的に人工透析が不可欠の状態となります。 |
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◆〔FGS:巣状糸球体硬化症〕の原因や発症の仕組みをご説明します。 |
FGS:巣状糸球体硬化症の原因 |
巣状糸球体硬化症の原因は不明ですが、移植した腎臓に高頻度で発生し、免疫抑制剤と血漿交換療法で改善することから、免疫に関係する因子の存在が疑われています。 また、家族性、薬剤性、ウイルス感染などいろいろな原因が認められるとされる説もあります。 巣状糸球体硬化症は、次のような全身性疾患で多くみられます。 ・全身性エリテマトーデス ・ヘノッホ・シェーンライン紫斑病 ・亜急性細菌性心内膜炎 ・顕微鏡的多発動脈炎 ・Goodpasture症候群 ・Wegener肉芽腫症 ・IgA腎症 |
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◆〔FGS:巣状糸球体硬化症〕の検査方法や診断方法をご説明します。 |
FGS:巣状糸球体硬化症の診断 |
巣状糸球体硬化症の診断は、尿検査や血液検査などで行いますが、最終的には腎臓組織を採取しての腎臓生体検査(腎生検査:光学顕微鏡観察、電子顕微鏡観察)が必要です。
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◆〔FGS:巣状糸球体硬化症〕の治療方法をご説明します。 |
FGS:巣状糸球体硬化症の治療 |
巣状糸球体硬化症の治療は「薬物療法」「血漿交換療法」「腎移植」および「人工透析」により行われます。この病気の薬物療法にステロイドが使用されますが、しばしばステロイド抵抗性が現れるため、薬物療法では対処できないことも少なくありません。 腎移植が次の選択しですが、腎移植した腎臓にも、FGSが再発しやすく、結局人工透析するしか道がないことも起こります。 |
薬物療法 |
薬物療法で最初に用いられるのは副腎皮質ステロイド投与法で、プレドニゾロン40mg/日を4~8週投与し、その後4~8週毎に10mg/日づつ漸減する方法です。 しばしばステロイド抵抗性が現れることがあり、この場合にはステロイドパルス療法も行われることがあります。ステロイドに抵抗し、しばしば腎不全に発展することがあります。 大量のステロイドを長期にわたって投与することで良好な結果が得られることもあります。 ステロイド抵抗性のために、完全寛解あるいはある程度の改善に至らない場合には、免疫抑制剤投与を行うことがあります。この例としては、シクロホスファミド 50~100mg/日を8~12週、シクロスポリン1.5~3.0mg/kg/日を3~6カ月、ミゾリビン150mg/日を3~6カ月などが行われます。 その他、必要に応じ、蛋白尿減少効果と血栓症予防を図るために抗凝固薬や抗血小板薬、脂質代謝改善薬などを併用することもあります。 |
血漿交換療法 |
薬物療法で思うように効果がえられない場合、血漿中のLDLコレステロールや免疫グロブリンIgMや補体C3などを除去する目的で、血漿交換療法が用いられることがあります。 |
腎移植 |
薬物療法や血漿交換療法で好結果が得られない場合、次の選択肢は腎移植です。腎移植を行っても、腎移植後に再発する確率は非常に多いとされています。 |
人工透析 |
薬物療法や血漿交換療法、腎移植などで改善できない場合、腎臓の機能は徐々に低下してゆき、腎不全の状態に至ってしまいます。この場合の唯一の対処法は人工透析です。 人工透析には、毎週2回病院を訪問し4時間程度の時間をかけて透析を受ける方法と、6時間ごとに腹膜に透析液を入れ、腹膜の機能を利用して透析する方法とがあります。 病院での人工透析は、衛生面の管理などは抜群ですが、毎週2回は病院で過ごすことになるため、長期の旅行などが不可能という不便さがあります。 これに対して、腹膜を用いた人工透析では、自分自身で自宅や外出先などで透析液の交換ができるので、日常生活への影響度がかなり改善されます。最近では、この方法を行う患者も増加しつつあります。また、病院での透析と腹膜透析とを併用することも可能です。 人工透析の更に詳細は、「慢性腎不全」などのページでご説明していますので、そちらを参照して下さい。 |
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◆〔巣状糸球体硬化症〕の予後はどうなるかご説明します。 |
巣状糸球体硬化症の予後 |
一般に、巣状糸球体硬化症の予後は決して良好とはいえません。自然に寛解したという例がまったく無いわけではありませんが、ステロイド抵抗性などの問題がでる場合には、慢性腎不全になることが多く、更に進行して末期腎不全に陥ると腎移植や人工透析が不可欠となります。 成人発症例よりも小児発症例の方が寛解率は高いとされています。 巣状糸球体硬化症での腎生存率については次のような統計データがあります。この数値は腎臓が持ちこたえる確率を表しているもので生命の生存率ではありません。20年後には、<100%-43.5%=56.5%>の患者が人工透析を必要とするという意味で理解してください。 5年:85.3% 10年:70.9% 15年:60.9% 20年:43.5% このように、この病気の予後は決して良くはありませんが、最終的に人工透析を行うことで、生命の危機は回避することが可能ですのでご安心ください。 |