潰瘍性大腸炎の治療方針
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潰瘍性大腸炎は、現在病変の起こっている範囲や重症度、合併症の発症状況などを総合的に判断した上で治療方針が決められます。
治療は、軽度の場合には、炎症を抑えて症状を軽減し、体液と栄養素を補うことを目的として行います。
中等度の場合には、入院加療が必要で、脱水症状や低カリウム血症、貧血、低蛋白血症、栄養障害などに対処します。
劇症の場合には、予後が極めて不良となるので、手術が必要かどうか早期に判断し、必要と判断された場合は手術を行います。
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食事制限
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血便が出るために血液が失われて起こる貧血には鉄剤を補給します。生野菜や果物は大腸内壁を傷つけるので摂取を避けます。人によっては、乳製品が症状を悪化させることもあります。
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薬物療法
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薬物療法では、コンビネーション療法といって、基準薬の「5-アミノサリチル酸剤」と「副腎皮質ステロイド剤」の併用によって行われ、寛解導入と寛解維持が可能となります。しかし、これらの治療によっても憎悪や再燃を繰り返す場合などでは、症状によりその他の医薬も使用されます。
現実に使用される薬物療法には「」「」「」「」「」および「」などがあります。
下痢止め薬
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比較的軽度な症状の下痢には、下痢止めとして抗コリン作用薬や少量のロペラミドやジフェノキシレートなどが使われます。
激しい下痢には、高用量のジフェノキシレート、脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが使われることがありますが、医薬により副作用で中毒性巨大結腸を誘起しないよう慎重に観察が必要です。
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抗炎症薬
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炎症の軽減と再燃予防のために抗炎症薬として、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジドなどが用いられます。
これらの薬は経口投与あるいは浣腸や座薬として使われます。これらの医薬は、症状を維持したり寛解させるには限定的な効果しかありません。
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ステロイド薬
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ベッドに寝込むほどの重い炎症でなければ、高用量のブレドニンなどのステロイド薬の経口投与で、劇的に寛解が得られます。改善を維持するために、スルファサラジンやメサラミンなどを投与します。
ステロイド薬は継続使用すると必ず重篤な副作用を招きますので、徐々に用量を減らし最終的には服用を中止します。
重症の場合には入院し、ステロイド薬と水分を静脈内投与などで治療します。直腸内への大量出血がみられる場合は輸血が必要となることもあります。
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免疫抑制剤
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長期のステロイド療法でようやく寛解を維持できるような場合に、免疫抑制薬のアザチオプリンやメルカプトプリンなどが使われます。免疫抑制剤は、免疫系で重要なT細胞の働きを阻害する薬です。これらの薬は、2~4か月使用を続けないと効果がこないのと、深刻な副作用の心配もあるので、医師による慎重な経過観察・管理が必要となります。
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外科療法
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医薬による内科的療法などで改善がみられず、寛解が得られない場合には、手術による療法が検討されますが、潰瘍性直腸炎でどうしても手術が必要となる頻度は多くはありません。
大腸がんが診断されたときや、大腸狭窄などで、大腸全体と直腸の切除が必要となる場合には、腸瘻バッグを生涯にわたって使用しなければならないこともあります。しかし、近年、手術法も進歩が大きく、より負担の少ない方法も実用化されつつあります。
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