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〔消化器のがんとは〕 |
〔消化器〕あるいは〔消化器系〕は、いわゆる〔消化管〕と〔消化腺〕とから構成されています。 |
これら〔消化管〕や〔消化腺〕を構成する消化器系の部位には、次のように多くの器官があります。 |
消化器系の構成 |
消化管 |
・口 ・咽頭 ・食道 ・胃 ・小腸(十二指腸・空腸・回腸) ・大腸 (盲腸) (結腸:上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸) (直腸) ・肛門 |
消化腺 |
・唾液腺(口腔へ唾液を分泌) ・膵臓(十二指腸に膵液を分泌) ・肝臓・胆嚢(十二指腸に胆汁を分泌) |
これらの「消化管」や「消化腺」にも悪性腫瘍は発生します。そして、消化器系の悪性腫瘍(がん)には、次のようなものがあります。 |
消化器系のがんの種類 |
食道がん | |
胃がん | |
十二指腸がん | |
大腸がん | |
肝臓がん | |
胆嚢がん | |
胆管がん | |
膵臓がん | |
肛門がん | |
消化管間質腫瘍 |
食道がんは、食道の内面を覆う粘膜の表面にある上皮や粘液腺上皮に出来るがんです。 食道の上皮は扁平上皮でできているので、食道がんの90%以上が扁平上皮癌と呼ばれるがんです。 食道がんは、初期段階では自覚症状がなく、進行すると飲食物を飲み込むとき痛みを感じたり、しみたり、つかえたりするようになります。 また、腹痛、背部痛、体重減少などがおこることもあります。 食道がんの原因の多くは、喫煙と飲酒にあるとされ、喫煙と飲酒は相乗的に作用してリスクが高くなると指摘されています。 また、熱いものや辛いものが好きな人にも発生しやすいといわれています。 食道がんに罹り易い人は、咽頭がんや喉頭がんにも罹り易いとされ、このようながんに罹った人は、食道がんに罹る確率が高くなります。 野菜や果物の摂取により、食道がんの予防に確実な効果あるとされています。 |
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胃がんは胃に生じる悪性腫瘍で、胃粘膜の上皮に発生する「胃癌」と、上皮以外の組織から発生した胃悪性リンパ腫などのがんがあります。 胃がんが、胃の粘膜、粘膜下層にとどまっている早期胃がんは無症状であり、X線検査や内視鏡検査で早期に発見されて早期治療をすれば完治できます。 胃がんが進行すると、みぞおち辺りの痛みや腹部膨満感、吐き気、嘔吐、下血などの症状がみられるようになり、食欲不振や体重減少などの現象が現れてきます。 塩分の多い食事、熱い食べ物、喫煙習慣、過剰飲酒などが原因の一つとされています。 |
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十二指腸の中央部には十二指腸乳頭部というところがあり、ここに胆管と膵管が合流した共通管が繋がっています。 この部分にできるがんは「胆道がん」として取り扱われますので、それ以外の部分の十二指腸粘膜にできる悪性腫瘍を「十二指腸がん」と呼んでいます。 十二指腸がんは消化器系がんの中では比較的発症率は低く0.3~2.9%程度とされています。 十二指腸がんは初期段階では特別な症状を呈することがなく、進行がんになってからも腹痛や吐き気、嘔吐、体重減少、貧血などの症状が現れるものの、十二指腸がんに固有な症状は現れません。 |
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大腸がんは、盲腸、結腸、直腸などの大腸に発生する上皮性のがんです。これらは上皮に発生するがんなので大腸癌とも表記され、直腸がんと呼ばれることもあります。 大腸には、盲腸・上方結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸がありますが、大腸がんがよくできる部位は、直腸とS状結腸です。 大腸がんになると下痢や便秘を繰り返したり、腹痛、腹部膨満感などの症状がでるようになります。血便がでることがあります。 大腸には多くのポリープができやすく、通常は良性のポリープが多いですが、放置するとがん化するものもあります。 大腸がんは食生活の欧米化で増加の傾向があるといわれています。 |
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肝がんは、肝臓にできる悪性腫瘍の総称で、肝細胞がんと胆管細胞がんとがあります。 肝がん特有な症状はなく、初期段階では上腹部の痛み、不快感、腹部膨満感、食欲不振、倦怠感などの症状を呈します。 肝がんがかなり進行してくると、黄疸がでたり腹水がたまったりします。肝がんが発生する原因は、C型肝炎、B型肝炎によるものが大部分で、一般的に慢性肝炎や肝硬変を経過して肝がんへと進行します。 日本では、肝臓の実質である肝細胞から発生する「肝細胞癌」が90%、肝臓内の胆管から発生する「胆管細胞癌」が5%ほどを占めています。 |
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胆嚢は右上腹部にあり、肝臓と十二指腸を繋ぐ胆管の途中にある袋状の臓器で、肝臓で作られる胆汁は胆管を通過して十二指腸に流れ込み消化を助けます。 ここにできたがんが胆嚢がんです。 胆嚢がんは、初期には症状はなく進行してくると上腹部にしこりや鈍痛があらわれ、黄疸がでることもあります。 胆嚢がんは早期発見が困難な上、特に有効な治療法もないため予後の悪いがんです。 胆嚢がんは、初期には症状がなく、やがて胆嚢壁への浸潤が進み、リンパ管や神経に沿って肝臓、十二指腸、結腸などに転移します。 胆嚢がんの発生率は悪性腫瘍の1.6%ほどしかありませんが、60歳代に多くみられます。女性が男性の1.5~2倍ほどの率で発症します。 主な危険因子は、胆石症、胆嚢炎、膵胆管合流異常症、原発性硬化性胆管炎などです。 |
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胆管は、肝臓で産生された胆汁を十二指腸へ流すための導管です。 ここに発生する悪性腫瘍が〔胆管がん〕で、このがんは胆管上皮より発生します。 〔胆管がん〕が徐々に大きくなり胆管を閉塞してしまうと、黄疸や〔胆管炎〕を引き起こします。 更に進行すると、膵臓などの近隣臓器に浸潤したり、リンパ節や肝臓へ転移していきます。 このがんは、発生部位により〔肝門部胆管癌〕や〔上部胆管癌〕〔中部胆管癌〕〔下部胆管癌〕などの種類に細分類されます。 |
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膵臓は胃の後ろにあって、消化液である膵液や血糖を調節するインスリンホルモンを分泌する臓器で、ここに出来る悪性腫瘍が膵臓がんです。 このがんは、早期発見が非常に困難な上、一度発生すると進行が非常に速いために、治療ができず死に至る可能性も高く、治療をしても予後は非常に悪いです。 初期にはお腹の不調や食欲不振などがみられますが、進行すると上腹部や背中に痛みを感じたり、全身の倦怠感、嘔吐、体重減少などがみられます。 |
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肛門入口より恥骨直腸筋付着部上縁までの約3cmほどの管状部分を肛門管といい、ここにできる悪性腫瘍を〔肛門がん〕といいます。 これは〔肛門管癌〕〔肛門癌〕などと呼ばれることもあります。 〔肛門がん〕の多くは〔扁平上皮がん〕ですが、〔腺がん〕や〔類基底細胞がん〕〔悪性黒色腫〕〔ページェット病〕〔ボーエン病〕など、いろいろなタイプのがんが発生します。 〔肛門がん〕の主な症状は、かゆみやしこり、出血、疼痛、粘液分泌、便秘、便失禁などです。 〔肛門がん〕の発症原因はよく分かっていませんが、60歳以上の人に多く発生します。 男性では肛門縁に多く、女性では肛門管の上部に多く発症します。 |
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〔消化管間質腫瘍〕は、食堂から直腸までの消化管に発生するがんで〔GIST〕とも呼ばれます。 消化器のがんはほとんどが粘膜などの上皮に発生しますが、〔GIST〕は粘膜の下の平滑筋や粘膜筋板層に発生します。 このがんの患者数は10万人に1~2人ほどしかいないため、「希少がん」の部類に入ります。 〔消化管間質腫瘍〕の多くは胃に発生し、小腸や大腸にも発生しますが、食道にはほとんど発生しません。 このがんは、あまり周囲の正常組織に浸潤することがないため、腫瘍が相当大きくなるまで自覚症状がなく発見が遅れがちとなります。 症状がでる頃になると、出血や腹痛、腹部のしこりなどがでてきますが、これだけで〔GIST〕の発見は難しく、がん検診などのバリウム検査や内視鏡検査などで発見される場合がんほとんどです。 |