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医療技術

〔PET:ポジトロン断層法〕


 PETは「Positron emission tomography」の略号で、日本語では「ポジトロン断層法」という医療測定機器であり、陽電子検出を利用して行うコンピュータ断層撮影技術です。

 PETは、脳や心臓などの断層映像を撮ることができ、病気の位置や病気の状態、原因などを的確に診断することができる最新の検査法です。



 CT(コンピュータ断層撮影法)やMRI(核磁気共鳴画像法)などが病気などの組織の形態を観察する検査法であるのに対して、PET(ポジトロン断層法)は、生体の機能を観察するとこができる点が特徴です。


PET:ポジトロン断層法の装置 ◆〔PET:ポジトロン断層法〕の装置はどのようなものかご説明します。
PETの装置
PET装置の写真画像  PETの装置は結構大型の機械という感じのする装置です。

 左の写真のように全身を横たえて、丸い穴のあいた装置の中に入り込むようになっています。測定画像の精度を上げるために、身体は軽く固定されます。

 PETは、陽電子(電荷がプラスの電子:ポジトロン)を放出するアイソトープ(放射性同位元素)で標識された薬剤を注射し、その体内分布を映像化して解析する装置です。

 使用するアイソトープの半減期は20分~110分程度と非常に短く、使用量も少ないので、人体への被爆量はほとんど問題ではありません。1回のPET検査での被爆線量は、人間が1年間に自然界から受ける被爆線量とほぼ同程度です。(写真は、Wikipedia(Positron emission tomography)より引用)

PET(ポジトロン断層法)の長所と短所
長所 ・CTやMRIでの画像解析や超音波検査では、「がんの形や大きさ」を解析できますが、PETでは、「がんの性質(悪性度)」を解析できます。がんの転移の診断や再発巣の診断ができるほか、治療効果の判定に有効な検査です。

・悪性度の高いがんが見つかった場合は、手術の範囲を広げたり、適切なあるいは抗がん剤の選択など、治療方針を最適化することができます。

・がんの転移が局所に限らないような場合、PETでは1回の検査で全身を検査できるので転移がんや再発がんの発見精度が高まります。

・がん細胞は放射線治療や化学療法などが有効な場合、先ず活性度が低下し、それから死滅していくので、これらの治療効果を早期に判定することができ、次の段階の治療方針を定め易くなります。

短所 ・PETの大きな欠点は、解析の空間分解能が悪いという点です。写真でいえば、ピントがずれているような画像となります。ピントが悪いと、病巣がどこにあるかはっきりしない場合が起こります。この解決策として、PETと同時にCTやMRIなどの空間分解能の高い測定を併行して実施することが多くなっています。

・どんな細胞もブドウ糖をエネルギー源として使いますが、PETでは、アイソトープで標識されたブドウ糖を使用することでがんの存在を容易に検出できます。がん細胞は正常細胞より活性度が高く、より多くのブドウ糖を取り込むので、がん細胞があればより多くの「陽電子・電子衝突」が検出されます。一方で、肺炎などの「炎症巣」があると、同様に多くのブドウ糖が消費され、多くの陽電子・電子衝突が検出されることになるので、がんなのか、他の病巣が存在するのかの区別が出来ない場合も起こります。

・PETでは、診断が困難ないくつかのがんがあることが知られています。胃がんや腎がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、肝細胞がん、胆道がん、白血病等は発見しにくいとされています。



PET(ポジトロン断層法)の画像 ◆〔PET(ポジトロン断層法)〕による画像はどのようなものか示します。
PETによる頭脳内部の様子

 下に示す写真は、頭脳のPETポジトロン断層法による解析写真ですが、患部のどの部位が悪性度が高いかなどを容易に確認することができるようになります。(写真は、Wikipedia(Positron emission tomography)より引用)

脳のPET写真画像


PET(ポジトロン断層法)の技術 ◆〔PET(ポジトロン断層法〕の技術についてご説明します。
PETの基本原理

 ポジトロンとは、陽電子のことで、普通の電子がマイナスの電荷を持っているのに対して、通常の電子と同量のプラスの電荷を持つ電子のことをいいます。

 陽電子と電子とは、プラスとマイナスの電荷を持つために互いに引き合う性質があり、両者は接近すれば容易に衝突し結合します。

 陽電子と電子が結合すると、両方とも一瞬で消滅し、電子の静止質量に等しいエネルギー(511eV)の光子(γ線:ガンマー線)が、正反対の方法に2個放出される性質があります。PETでは、このような性質を利用して人体内部のがんの存在状態を検出します。

ポジトロン核種

 陽電子は自然界には存在しないので、PET検査に使用する直前に発生させる必要があります。

 陽電子を放出する物質は「陽電子放出核種」と呼ばれますが、これらの物質の半減期は非常に短かく、検査に使用する寸前にサイクロトロンなどで製造しなければなりません。

 日本核医学会、日本アイソトープ協会 発行の「PET検査Q&A(2003年3月5刷)」によれば、ポジトロン核種には次のようなものがあります。

PETに使用されるポジトロン核種
ポジトロン核種 半減期 製造方法
11C(炭素-11) 20分 小型サイクロトロン
13N(窒素-13) 10分 小型サイクロトロン
15O(酸素-15) 2分 小型サイクロトロン
18F(フッ素-18) 110分 小型サイクロトロン
62C(炭素-62) 10分 ジェネレーター
68Ga(ガリウム-68) 68分 ジェネレーター
82Rb(ルビジウム-82) 75分 ジェネレーター

PETの測定原理

 PET検査では、先ず、陽電子を放出する「陽電子放出核種」を静脈注射するか呼吸により体内に吸入させます。この陽電子放出核種は、血流に乗って身体の中を移動して、脳や心臓などに到達します。

 こうして人体内部に投与された陽電子放出核種は、体内で崩壊するごとに1個の陽電子を放出します。放出された陽電子は、体内に無数に存在する原子中の電子1個と対消滅して、2個の光子(γ線)を正反対の方向に放出します。

 PET装置には、検査を受ける人の周囲を囲む多数のγ線検出器が配置されていて、二つのγ線が同時に検出されたとき、その二つの検出点を結ぶ直線上のどこかで、陽電子と電子の対消滅が発生したことになります。

 これらの情報を集め、解析し、画像処理を施すことで、対消滅が発生した体内の点分布を示す三次元画像を生成することができます。

 トレーサーとなる陽電子放出核種は、血流に乗って体内を巡るので、陽電子の発生と電子との間の対消滅とは、血流が多い部分に集中することになります。従って、PET装置で検出される画像は、リアルタイムでどこに血流が集中しているかなどの様子を赤裸々に見せてくれることになるのです。

目的に合ったPET製剤

 体内の血流のあるところ、血流が集中する部位の様子は、PET装置により検査できるわけですが、それぞれの目的に合ったPET製剤というものが存在します。ここでも、日本核医学会、日本アイソトープ協会 発行の「PET検査Q&A(2003年3月5刷)」よりの情報を引用します。

検査目的にあったPET製剤
ポジトロンで標識したPET製剤 剤 形 検査目的
15O-酸素 吸入剤 脳酸素消費量の検査
18F-フルオロデオキシグルコース 注射剤 心機能検査、腫瘍検査、脳機能検査
18F-フルオロドーパ 注射剤 脳機能検査(ドパミン代謝)
11C-メチオニン 注射剤 アミノ酸代謝検査、腫瘍検査
11C-メチルスピペロン 注射剤 脳機能検査(ドパミンD2受容体)
13N-アンモニア 注射剤 心筋血流量の検査
15O-水 注射剤 脳血流量の検査

測定部位の状態判別

 神経活動や病気などにより、特定の部位で代謝量や血流量が増大するなら、識別したい指標に合わせたトレーサーを使用してPET画像を作成すれば、どこで何が起きているかを詳細に知ることができることになります。

 脳や心臓での識別やがんの検査などにおける判定方法を下表に示します。

脳や心臓での各部位の状態識別
脳の検査  脳は、ブドウ糖や酸素を大量に消費していて、血流やエネルギー代謝は、神経細胞活動が活発な部位では高く、衰えた部位では低くなるので、この状態を調べれば、脳の部分ごとの機能を詳細に調べることができます。

心臓の検査  24時間休むことなく働いている心臓の筋肉には多くの血液が供給され、多くのエネルギーを消費しています。PETで筋肉中の状態を調べれば、心臓の異常部位や状態が詳細に調べられます。

がんの検査  がん細胞は、正常細胞より分裂が盛んで、多くのグルコース(糖分)を消費しています。このため、グルコース検出用のPET製剤を用いれば、がんの部位や病巣の大きさなどが詳細に分かるようになる。


検査時の注意事項

 PETの検査では、原理的にアイソトープで標識されたブドウ糖が重要な役割を果たしますので、検査前の1食分は食物を摂取することができません。特に、甘いものを食べたり、飲んだりすることは厳禁です。

 PETの検査では、先ず静脈注射を行い、薬剤が全身に満遍なく行き渡るまで約60分間ほど待機します。

 その後、患者はペットの装置内に入り寝た状態になり安静を保ちます。

 PETの装置は特別に大きな音がすることもなく静かに検査が始まり、約30~60分間で検査は終了します。

 結局、注射してから検査が完全に終了するまで、トータルで約2時間かかることになります。