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医療技術

〔MRI:核磁気共鳴画像法〕


 1980年代初頭に登場したMRI(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、核磁気共鳴画像法と呼ばれる極めて高度に発達した医療機器です。

 核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)という現象を利用して生体内部の情報を高精度に画像化する方法です。



 この技術は、以前には「Nuclear Magnetic Resonance Imaging」という風に「核(Nuclear)」という文字が付いていましたが、核という言葉からの連想で、患者が放射能に晒されるのではという不安を抱かせるために15年ほど前に「Nuclear」の文字は削除されました。

 現実にこのシステムは、放射能とは全く無縁の安全な装置で被爆の心配などまったくありません。


MRI(核磁気共鳴画像法)の装置 ◆〔MRI(核磁気共鳴画像法)〕の装置はどのようなものかご説明します。
MRIの装置
MRI装置の写真画像  MRIの装置は結構大型の機械という感じのする装置です。

 左の写真のように全身を横たえて、丸い穴のあいた装置の中に入り込むようになっています。測定画像の精度を上げるために、身体は軽く固定されます。

 MRIは、X線を使用することなく、人体のあらゆる部分の断層画像を描く方法です。

 断層画像という点では、X線CTによるものと似た画像が得られますが、原理的に物質の物理的性質に着目する撮影法であるゆえに、CTスキャンでは得られない多くの情報が得られます。

 脳の内部や脊髄、腹部、血管、四肢など人体のあらゆる部分を任意の角度から撮影し断層画像を得ることができます。放射線を使用することもなく、CTスキャンでは不得手な部分の断面画像も撮影できる点で優れています。

MRI(核磁気共鳴画像法)の長所と短所
長所 ・測定にX線を使用しないので、被爆の心配がまったくない。

・画像は、明暗がはっきりと映り、正確な解析がしやすい。

・人体のあらゆる部分を任意の角度から断面画像として撮影できる。

・主に、脳内部、脊髄、子宮、前立腺、膀胱、骨・関節、軟部組織、大血管などの画像撮影が簡単にできる。

短所 ・設備費が高価であり、どの医療機関でも使える状況にはならない。

・測定時の所要時間が長い。といっても、10分~1時間くらいのものです。

・骨や石灰化した部分の詳細画像は必ずしもうまく得られない。

・空間分解能力は比較的低い。

・周波数を変更して磁場を変化させるために、工事現場にいるようなちょっと大き目な騒音がします。音は危険を伴うようなものではありません。



MRI(核磁気共鳴画像法)の画像 ◆〔MRI(核磁気共鳴画像法)〕による画像はどのようなものか示します。
MRIによる頭脳内部の様子
脳のMRI写真画像  左に示す写真は、頭脳のMRI断層写真ですが、任意の角度から撮られたこのような影像を詳細に調べることで、病変などの存在や大きさ、進行度合いなどを容易に確認することができるようになります。



MRI(核磁気共鳴画像法)の技術 ◆〔MRI(核磁気共鳴画像法)〕の技術についてご説明します。
システム構成

 MRI装置は、磁場と電波とを用いて人体内部の断層画像を得る装置です。そのため、非常に強力な磁石と電波送受信用のアンテナとを備えています。患者はMRI装置中央部にある穴の中に横たわって検査を受けます。

 撮影時には、あたかも工事現場にでもいるような大きな連続音がしますが、これは周波数を動かして磁場を変化させるためのもので、異常ではなく、決して危険を及ぼすようなものでもありません。

測定原理

 人間の身体を構成している物質の中には多くの水分や脂肪分が含まれます。身体を構成する主要な元素成分の一つは水素で、MRI測定は水素原子核の特性を利用しています。MRIでは磁場を利用するのですが、ここで使用される磁場の強さはT(テスラ)という単位で表現されるような非常に強力なものです。

 水素の原子核は、強力な磁場を受けると一斉に同一方向に向きを揃えます。この状態で特定の周波数の電磁波(電波、ラジオ波)の照射を受けると、核磁気共鳴という現象を起こし、同一方向を向いていた水素原子核の向きが少しずれてゆきます。

 次に、この電波の照射を止めると、水素原子核は、今度は逆に<電磁波を放出しながら>原子核の向きが揃った元の状態に戻ってゆきます。この戻る速さが、身体内の組織や、病変などによって異なります。

 放出される電磁波を受信するために、検査するからだの部位ごとに複数のコイルが準備され、このコイルによって電磁波を受信し、コンピュータで解析すると画像化することができます。これがMRI核磁気共鳴法による人体内の断層影像を取得する基本原理です。

検査時の注意事項

 MRIでは、身体の任意の部分の断層画像を、角度を変えるなど複数の条件下で調べることが出来ます。検査に要する時間は短ければ10分程度で済みますが、通常は10~30分くらいかかります。特殊な検査を行う場合には、1時間くらいかかることもあります。

 MRIは非常に応用範囲の広い技術ですが、磁気や電磁波を使用するために、特別な制約もあります。通常、体内に磁石によって吸引されるような金属物体を埋め込んでいる人には使用することができません。

 この例として、ペースメーカー、脳動脈クリップなどがあります。これらのものを体内に装着していると磁性体部分が、強力な磁石により引き付けられ、体内に傷をつけたり、動作不良を起こす恐れがあります。

 その他にも、検査に影響を与えたり、機器の故障のもとになるものとして、磁気カード(キャッシュカード、プリペイドカード、クレジットカードなど)や、メガネ、ヘヤピン、安全ピン、入れ歯、ネックレス時計、ブラジャーのホック、アクセサリー類、カイロなどがあります。検査前に、必ず身体から取り外しておく必要があります。

 MRIでは、副作用の心配がないガドリニウム造影剤を使用します。上腹部の肝臓、胆嚢、膵臓などの検査を受ける際には最低4時間以上の絶食が必要ですが、それ以外の部位の検査であれば、検査前の絶食も特には必要ありません。

 MRIの検査では、非常に狭いトンネルの中に全身が入ることになるため、中には閉所恐怖症などが起こり、測定を始める段になって測定を拒否断念する方もおります。そのような症状を持つ人は、事前に担当の技師に話しておく方がいいです。通常、患者は、非常連絡用のブザーを渡され、外部との連絡をとることができます。