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心の病気

 

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〔心の病気〕

◇その他の障害◇

過換気症候群


 〔過換気症候群〕は、特別な身体的病気がないのに、急に息苦しくなり、動悸、頻脈、めまい、手足のしびれなどを発作的に引き起こす病気です。

 この発作は過換気発作と呼ばれ、通常、30~60分くらいで自然におさまります。

 しかし、何度も繰り返し起こります。


 〔過換気症候群〕の症状として、四肢知覚異常、神経筋の被刺激性亢進、テタニー、耳鳴りなどの症状が現れたり、ときには意識障害を伴うこともあります。

 通常、過換気の発作は安静時に多く起こりますが、何らかの運動が原因となる場合でも、運動中ではなく、運動終了後に起こることが多いです。

 〔過換気症候群〕は、几帳面で神経質な人に発症しやすいとされています。また、よく発症する年代は10~20代の若者が中心です。

 尚、〔過換気症候群〕は英語では〔hyperventilation syndrome〕と呼ばれています。


どんな病気ですか? ◆〔過換気症候群〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
過換気症候群

 過換気症候群(Hyper Ventilation Syndrome)は〔過剰換気症候群〕や〔過呼吸症候群〕〔過換気テタニー〕等とも呼ばれる病気で、心因的な原因以外には特別な原因がなく、発作的に呼吸困難を訴えて、過換気状態となる病気です。

 過換気症候群は、几帳面で神経質な人に発症しやすいとされています。また、よく発症する年代は10~20代の若者が中心です。


どんな症状ですか? ◆〔過換気症候群〕の症状にはどんなものがあるかご説明します。
過換気症候群の発症

 過換気症候群の発作は、基本的に過度の不安など精神的な不安や緊張により、呼吸を必要以上に行うことで発症します。パニック障害などのような精神的疾患を持つ患者などにより多く発症しやすい病気です。

 一般に運動自体で発症することは少ないとされますが、激しい運動の直後で過度の不安や緊張を伴うような状況下でも発症することがあります。

過換気症候群発作時の症状

 過換気症候群の発作時の初期状態の一般的症状は、低酸素症と類似し、手足の痺れや唇の痺れや動悸、目眩などが典型的なものですが、程度が酷くなると呼吸困難、息苦しさなどの症状が現れます。更に、頭のふらつき、眠気、激しい耳鳴りや悪寒を来たすこともあります。

過換気症候群の主な症状
呼吸困難 初期には息苦しさを感じ、酷いときは呼吸困難になる。
呼吸が速くなる 呼吸を深くすると胸部に圧迫を感じる。
胸部の圧迫感 圧迫感と痛みを伴う。
動悸 心臓が激しくドキドキする。
目眩 耳鳴りや悪寒を伴うこともある。
痺れ 手足や唇の痺れ現れる。
不安定な意識 頭がボーとし、まれに失神することもある。
不安亢進 死の恐怖を感ずることもある。

 過換気症候群の発作があっても、これが原因で死に至ることはありませんが、心臓病などの持病があって、このような発作が起こる場合には、心臓発作を誘発する危険性はあります。


原因は何ですか? ◆〔過換気症候群〕の原因や発症の仕組みが分かります。
精神的な不安

 いわゆる「過呼吸」は、マラソンやバスケットボールなどのような呼吸を多く必要とする激しい運動の後で、必要以上の換気活動をしてしまうために、動脈血液中の酸素分圧が上昇し、二酸化炭素分圧が減少して起こりますが、過換気症候群の発作は「精神的な不安」が原因となり過呼吸状態を起こします。

 このように、過換気症候群における「過呼吸」は、その原因が「精神的不安」によるものである点で、一般的に称される過呼吸とは異なります。

 一般的な激しい運動後に起こる過呼吸も過換気症候群での過呼吸も、発症後の症状はほぼ同様です。

その他の原因

 通常は何らかの精神的、時には肉体的ストレスを発端として、激しい呼吸を始めて、困難発作をきたし、深く速く、努力性の呼吸運動を行って過呼吸状態に陥りますが、特別な精神的原因がなくても、他の病気による発熱により息が荒くなり、それが発端となって過換気症候群を発症することもあります。

 また、極端な例では、遊び心から早めの呼吸を繰り返しただけでも過呼吸症状を発症することも多くあります。

発症のメカニズム

 過換気症候群の発作が起こると、動脈血液中の二酸化炭素(CO2)分圧が著しく低下し、血液中の酸素(O2)分圧が異常に高くなります。また、「呼吸性アルカローシス(respiratory alkalosis)」という状態を来たします。

 正常人であれば、体液のpHは7.35~7.45の中性域に維持されていますが、これを上昇させようとする病的な状態をアルカローシスいいます。このアルカローシスには、「呼吸性アルカローシス」と「代謝性アルカローシス」の二種類が知られています。

 呼吸性アルカローシス状態では、体内で産生されるCO2量に対して、細胞より呼出されるCO2量が過剰となります。この原因には、何かの不安による過換気、頭部の外傷、脳腫瘍などのような呼吸中枢を刺激するものや、うっ血性心不全や肺炎、肺塞栓などのような、呼吸器の刺激によるもの等があります。


診断はどうなりますか? ◆〔過換気症候群〕の検査方法や診断方法が分かります。
診断方法

 基本的に過換気症候群が発症しているなら、血中酸素濃度と二酸化炭素濃度に異常があるので、病院でそれらを測定してもらえば容易に診断されます。

 発作時には、血中二酸化炭素濃度は異常に低下し、逆に酸素濃度が高くなっています。血液のpH(酸素濃度指数)を測定すると、アルカリ側に偏移した、呼吸性アルカローシスと呼ばれる状態になっています。

 症状が過呼吸状態となっていても、その原因が真に精神的緊張や不安ではなく、狭心症、気胸、気管支喘息、脳腫瘍、脳炎、日射病などの病気により起こる場合もあります。この場合には、真の原因が何であるかを鑑別する必要があります。

 鑑別のために、医師の指示により、わざと速く呼吸させて、過呼吸状態を再現させる「過呼吸誘発テスト」という診断方法もありますが、危険を伴うので、あまりお勧めはできません。


治療はどうやりますか? ◆〔過換気症候群〕の治療方法が分かります。
過換気症候群の治療

 過換気症候群の発作が起こった場合の治療法は、物理的に症状を和らげるようにする「ペーパーバッグ法」と呼ばれる方法と、精神安定剤などの医薬を用いる方法とがあります。

 発作はパーパーバッグ法で数分で治まるのが普通ですが、繰り返すような場合でも一般的には数時間以内には自然に治まります。

ペーパーバッグ法

 ペーパーバッグ法(paper bag rebreathing)は、なるべく大きな紙袋やビニール袋を膨らませて、口と鼻を覆い、その中で呼吸を繰り返す方法です。

 この方法の原理は、自分の呼気を再び吸気することで、一時的に酸素の供給量を減少させ、血液中の二酸化炭素濃度を上昇させ、これにより症状を緩和するというものです。

 この場合、口と鼻を紙袋などで完全に覆ってしまうと、今度は酸欠状態となる恐れがでてくるので、必ず少し隙間を作っておくことが重要です。また、呼吸の速さと深さを徐々に減少させながら呼吸を繰り返すことが重要です。意識的にこのような方法を行えば、2~3分で緩やかな呼吸ができるようになります。  この方法は、過換気症候群の緊急的な対処法としては、簡単で即効性もありますが、下記(合併症はでますか)の項で説明するような危険性もあるので、注意が必要です。

医薬品法

 発作が起こってしまったときには、ペーパーバッグ法が有効で、現実的には唯一の方法ですが、もしも不安が強く発作を繰り返しそうな場合には、抗不安薬・精神安定剤などを服用すると効果があります。

 もしも、パニック障害やうつ病などの持病があるなら、基本的にその治療が必要となります。

 しばしば発作を起こすような患者では、医師は、この病気の性質を十分に理解させ、不安感を取り除くような指導も行います。


合併症が出ますか? ◆〔過換気症候群〕にどんな合併症が出るのかが分かります。
ペーパーバッグ法の危険性

 過換気症候群の発作が起こった場合、これが真に精神的緊張や不安による発作であれば、上記に説明した方法による治療が有効です。

 しかし、もしも、心筋梗塞や気胸、肺塞栓などが原因で頻呼吸が起こり、過換気症候群の症状を呈する場合には、上記は正しい治療法とならず、死に至る可能性も大となります。心筋梗塞や気胸、肺塞栓などの可能性がある場合には、緊急に救急車を呼ばなくてはなりません。