脳の構造
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先に述べたように、脳は頭蓋骨の中にあって、大きくは「大脳」「小脳」および「脳幹」からなりたっていて、人間の生命活動や精神活動をつかさどっています。
大脳は、左右二つの半球からなり、2~5mmの大脳皮質と呼ばれる層が表面を覆っています。
大脳皮質には神経細胞(ニューロン)が張り巡らされていて、人間を最も人間らしくしている心や精神の働きである、創造力、感情、思考、言語、記憶、知能、意欲、感覚、判断力などをつかさどっています。
大脳の内部には、髄質と呼ばれる層があります。
脳幹は、間脳、中脳、橋、延髄の四つの器官から成り、呼吸や心臓の動き、体温調節など生命活動を司っています。
また、間脳にある視床下部は、自律神経やホルモン分泌をコントロールする中枢です。
小脳は、身体の平衡機能や運動機能をつかさどっています。脳からは、神経繊維の束が延髄へと続き、脳と身体の各部分とを連結しています。これらの脳神経と脊髄神経を中枢神経といい、体のすべての機能は中枢神経によってコントロールされています。
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心の病気の根本原因
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人間を人間らしくしている大脳に異変があると、心の病気が発症します。異変の起こる原因には物理的に大脳が損傷を受けるような場合、大脳自体に発生する病気、および神経細胞や神経伝達物質の量や作用が低下したり、過剰になったりする場合などがあります。
結局、脳に異変が起こることで心の病気が発症するのですが、そうなると、身体の各部へも正しい指令が届かなくなるために、身体の各部組織や臓器も変調をきたすようになります。
心の病気は、単に心・精神だけの病というだけではなく、すべての身体部位に影響を与えるようになるのです。
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心の病気はどんなとき起きる
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現時点で心や精神の病気がなぜ起こるのか完全に解明されているわけではありません。しかし、主な原因には「遺伝的素因」「生育環境」「本人の気質・性格」「精神的・肉体的なストレス」「脳自体の病気や怪我」「酒・タバコ・薬物などの化学物質による中毒」「生活習慣」「身体の病気」、そして「老化」など様々なものがあるとされています。
これらの要因はそれ一つだけで心の病気を誘引するわけではなく、いくつかが複雑に影響し合いながら病気として発症してくると考えられます。さらに、重要な点として、これらの素因の多くを有していても、家族や周囲の人々の支援があると、心の病気を発症しないで済むことも少なくないのです。
これら、心の病気の誘引となる原因の中で、遺伝的素因や本人の気質・性格など避けようのないものも多いのですが、外界からの環境変化や体調変化などがトリガーとなって病気が発症することも多いとされます。環境変化や体調変化の一例としては次のようなものがあります。
ストレス
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現代社会で何のストレスもなく暮らすことは不可能ですが、そんな中で、人生の転機となる場面が心の病気を発症する引き金となることが知られています。
入学・卒業、就職・転職・退職、結婚・離婚、引越し、近親者の死などの環境変化が原因となることも多いのです。また、昇進してその責任の重さに絶えかねて心の病気を発症することも珍しくありません。
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脳の病気や化学物質
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脳自体の病気や事故などによる外傷が原因で、脳の神経細胞がダメージを受け、正常な心の機能を果たせなくなることがあります。事故などで脳の一部分を失うなどすると、たとえ生命を取りとめても、何らかの精神的障害が残ります。
脳からの指令伝達物質であるホルモン系統などに異常が出ても、身体活動、そして精神活動が乱され脳の病気を発症することがあります。アルコールやタバコなどに執着する人では、それらの化学物質の影響で中毒症状を起こし脳の病気を発症するケースも多々あります。
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