PTSDの治療方針
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)もひとつの病気であり、治療により完全治癒あるいは改善することができます。他の病気と同様、早期発見・早期治療が重要であることはいうまでもありません。
上記にDSM-Ⅳの診断基準を表示しましたが、専門医がこの基準に従って診断すれば、現在のPDSDの状態を正確に診断することが可能と考えられます。
PTSDであると診断するに当たっては、医師は、それが急性か慢性か、重症度・緊急度はどの程度か、精神的・身体的・人格障害などの合併症は起きているか、患者を取り巻く家族環境などはどうなっているかなどを正確に理解し、診断しなくてはいけません。
そのための大前提は、患者と治療に当たる医師との間の信頼関係にあります。
患者と医師との間の信頼関係が築けた条件下で、診断および治療が行われますが、先ず最初に行うことは、患者に対しての「PTSDとは何か?」という基本教育です。
PTSDは、そのような状況下に置かれれば、誰でも罹りえる疾患であり、その患者の何らかの失敗を意味するものなどではないこと、恥ずべきものなどではないことをしっかり理解するまで、何度でも徹底的に教え込みます。
さらに、患者は、自傷行為・他傷行為・破壊的行為をしないことなどを理解しなければなりません。治療には長い期間が必要であり、努力と忍耐が必要であること、耐え切れずドロップアウトしてしまう人が少なからずいることも理解しなくてはなりません。
これらの準備ができると、下記のような多くの方法で治療が開始されます。これらは単独に行うことも並行して行うこともあります。
・心理的デブリーフィング
・行動療法
・薬物療法
・精神生理学的治療
・精神分析的治療
・催眠療法
・自己暗示法
・グループ療法
・家族療法
・入院治療
・その他の治療法
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心理的デブリーフィング
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心理的ブリーフィングは、異常な体験の直後の数時間~数日以内に、異常な体験が後遺症としてトラウマとなるのを予防する目的で開く集会のことです。ここでは、異常体験者はあくまで、患者ではなく、異常な体験をした普通の人・正常な人として、「自己の体験」を話し、聞いてもらいます。
このようなブリーフィングがトラウマ防止の効果があるかどうかは議論が分かれるところですが、少なくともPTSDの早期発見・早期治療には役立つとされています。
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行動療法
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行動療法は、患者と心理療法士などのカウンセラーとが、過去のことを思い出しながら会話することで、トラウマを解明し、解いてゆく方法です。この方法は、PTSD患者にパニック障害や恐怖心、広場恐怖(アゴラフォビア)などの症状がある場合、有効な治療法だとされています。
行動療法には「暴露療法」「ストレス管理訓練」および「認識行動療法」などがあります。
暴露療法
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暴露療法では、患者は瞑想するように目を閉じてリラックスした姿勢で、セラピストとの間で会話を続けます。リラックスした中で、自分が体験した事件などを何度でも繰り返し思い出して話します。
患者は、リラックスする方法を学びながら、過去に自分が経験したトラウマとなっていることに直面します。瞑想し自分の体験を繰り返し暴露しながら、しかもリラックスする方法を学ぶことで、やがてトラウマに対する恐れが縮小し、苦痛から解放される可能性がでてきます。
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ストレス管理訓練
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PTSD患者は心理療法士の支援を受けながら、否定的な思考に対する囚われや、衝撃的な出来事で圧倒される感覚を徐々に減少させてゆく方法を学ぶ治療法です。
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認識行動療法
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PTSD患者は、心理療法士の支援のもとで、心理的ストレスをもたらすマイナス思考やマイナスの確信を識別します。そしてトラウマとなっている出来事に対して、今までとは異なる、違った見方・解釈・対処ができることを学ぶ治療法です。
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薬物療法
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薬物療法は、医師の処方により、PTSDに効果のある治療薬を服用する療法です。
通常、PTSD治療の第一選択薬剤には、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」が処方され、多くの場合、2~5週間ほどで症状を軽減する効果が現れます。
その他にも、第二選択薬としての、「TCA(三環系抗うつ剤)」や、「交換神経抑制薬」「ベンゾジアゼピン系薬」「抗けいれん薬」「抗精神病薬」などが処方されることもあります。
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精神生理学的治療
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精神生理学的治療は「EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)」といわれる療法で、眼球運動と回想や情緒認識を組み合わせた方法で、眼球をリズムに乗って左右に運動させ、感情の処理過程を促し、外傷記憶による苦痛を取り去ろうとする方法です。
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精神分析的治療
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精神分析的治療は、寝椅子に患者を寝かせ、自由連想法を用いて行う治療法です。患者は思いついたことを何でも話します。カウンセラーが支援し、自己解明を進めるという方法です。週に4~5回、40~50分のセッションを行います。これを2~7年継続します。
この方法は、あまり実用的ではないといわれています。
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催眠療法
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催眠療法は、患者を、完全な催眠状態にして、トラウマを思い出させていく方法で、他の行動療法と組み合わせて改善を図る療法です。
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自己暗示法
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自己暗示法は、自分自身で如何にしてリラックスうするかの方法を学ぶイメージトレーニング療法です。自分でリラックスする方法を会得するとともに、自分の気持ちをコントロールできるようにするのが目的です。
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グループ療法
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グループ療法は、同じトラウマを持つ人々が場所と時間を決めて集まり、カウンセラーの指導のもとで、各自の問題やトラウマを話し合う療法です。
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家族療法
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家族療法は、PTSD患者の治療というより、患者を取り巻く家族問題の緩和を目的とした「システムズアプローチ(家族関係のトラブルを直接扱う療法)」と、PTSDの患者を持つ家族を支援する療法とがあります。
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入院治療
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入院治療は、慢性PTSD患者の中で外来治療が困難な人に長期治療の一環として行います。また、自傷行為・他害行為・破壊的行為などの危険を防止し、安定化させるための短期間支援環境として行うこともあります。
入院治療では、一定の治療目標を定め、いくつかの治療法を組み合わせて集中的に治療を行います。
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その他の治療法
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その他の治療法として、絵画療法、音楽療法、箱庭療法、舞踏療法、心理劇、詩歌療法などに触れる芸術療法、ペットとすごす動物療法などがあります。子供のPTSD患者などには有効な方法とされます。
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