基本分野選択:HOME健康・医療館 現在:PC版スマホ版へ移動 今日の運勢館おすすめカラオケ愛唱館
sentofu体の病気心の病気医療技術医薬品健康増進栄養成分健康食品全身美容保険介護健康用語nullサイト情報


心の病気心の病気全般心の病気の分類幼児期・小児期・青年期障害せん妄・痴呆・健忘性障害一般身体疾患による精神障害物質関連障害統合失調症・他の精神病性障害気分障害不安障害身体表現性障害虚偽性障害
解離性障害性障害・性同一性障害摂食障害睡眠障害衝動制御障害適応障害パーソナリティ障害臨床的関与対象状態その他の障害
 
心の病気
 

信号様式GIFアニメ アマゾン 信号様式GIFアニメ

 

〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕

 〔心的外傷後ストレス障害〕は〔PTSD〕とも呼ばれている精神障害です。

 以前には〔外傷後ストレス障害〕と呼ばれていた病気です。

 過去の恐ろしい出来事や人の対処能力をはるかに超えた圧倒的体験により、心に加えられた激しい衝撃のために、心に永続的、不可逆的な傷を残した状態です。


 このような「心の傷」は、「心的外傷」または「トラウマ」と呼ばれています。

 トラウマには、戦争や巨大地震、巨大津波、原発事故、大洪水、火災などの災害による急性トラウマと、繰り返される虐待やテロ、強姦、監禁の被害などによる心理的外傷とがあります。

 このような極度に大きな衝撃は、脳に外傷記憶を形成してしまい、一生を通して心から消し去ることはできません。

 心に傷を残した出来事や情景を想起するような状況に遭遇すると、その時の悪夢がフラッシュバックし、強烈な恐怖心が湧き上がり、繰り返し脳裏によみがえってきて戦慄に恐れおののきます。

 本人は、トラウマとなった出来事や光景を思い出すような行為や場面、人物をひたすら避けようとします。


どんな病気ですか? ◆〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
どんな病気ですか?

 〔心的外傷後ストレス障害〕は、過去に経験した衝撃的な出来事や事象により、心に加えられた傷が元となり、後になって様々な障害を引き起こす疾患です。

 この疾患は、〔PTSD(Post-traumatic stress disorder)〕や〔外傷後ストレス障害〕とも呼ばれますが、日常生活場面では〔トラウマ〕と呼ばれるのが普通の病気です。

 心的外傷あるいはトラウマには、巨大地震や巨大津波、大火事、洪水などの自然災害や、大きな交通事故や戦争などの人災、そしてテロ事件や監禁、虐待、強姦、強盗などの凶悪犯罪などによる被害によって、心に刻み込まれるものなどがあります。

 トラウマが発症するのは、事件や出来事から1、2週間~数か月経過してからです。最初は眠れなくなったり、金縛りにあったり、悪夢に悩まされたりする、睡眠障害から始まるのが普通です。PTSDの発症には個人差があって、同じような体験をしても、全く平気な人もいないわけではありません。

 無論、このようなトラウマは古代よりあることなのですが、精神の疾患としてはっきりと位置づけられたのは、ベトナム戦争で極度な精神状態に追い込まれた、アメリカ帰還兵たちに問題がおきて一般に広く認知されるようになってからです。


どんな症状ですか? ◆〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕の症状をご説明します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状

 アメリカでの精神障害の指針として「DSM-Ⅳ」という基準があります。これは、米国精神医学会が公表した基準で全世界で広く用いられている基準です。

 この基準での前提は、「実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、患者が体験し、目撃し、または直面した。」となっており、これにより「患者の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。」と定められています。

 要約するなら、「日常生活ではありえないような、生死にかかわるような緊急事態に自分が体験したり、あるいは他人が遭遇しているのを目撃した経験が一度ならずあり、それにより大きな衝撃をうけ心に傷が残っている。」ということです。

 人は誰でも重大な出来事や事件、自然災害などに遭遇するので、誰でもこのような衝撃を受け、トラウマを抱えることがおこります。DSM-Ⅳ基準によるPTSDの診断基準は後ほど掲載しますが、PTSDによる心理的・身体的症状は次の表で示すように現れます。

 これらの症状は、どれかひとつが現れるのではなく、ひとつあるいは2つ、3つが複合して現れてくる特徴があります。

PTSDによる心理的・身体的症状
トラウマの再体験  PTSDの患者は、無意識のうちに、トラウマとなっている体験や悪夢、幻覚などがフラッシュバック(再体験)し、あたかも再度その体験が起こっているような錯覚をします。トラウマを何度でも追体験し、激しい恐怖と苦痛とを味わいます。

トラウマに関することへの回避・麻痺  トラウマのフラッシュバックを極度に恐れるようになり、トラウマの体験を想起するような会話や思考、トラウマ体験を思い出すような行動や人、環境などを回避し、避けるようになります。孤独感や疎外感が強くなります。

 一方で、普通なら未来に向かって抱く希望や物事への関心が薄弱となり、無力感にさいなまされるようになります。そして、トラウマ体験の一部が思い出せないという感情の萎縮、麻痺症状がでることがあります。

過度の覚醒  トラウマのフラッシュバック(再体験)を極度に恐れるあまり、ちょっとした刺激に過敏に反応し、容易にパニックに陥ります。気持ちや警戒心が高ぶり、ちょっとしたことで怒りを爆発させることが起こります。



原因は何ですか? ◆〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因

 既に述べたように、PTSD:心的外傷後ストレス障害の原因は、日常生活ではありえない生死に関わるような緊急事態に、自分自身で体験したり、あるいは他人に襲い掛かるのを目撃した衝撃が、心の傷となって、その後にフラッシュバック(再体験)するのが原因です。


診断はどうなりますか? ◆〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕の検査方法や診断方法をご説明します。
PTSDの診断

 PTSDの診断は、米国精神医学会による「DSM-Ⅳ」基準により行われるのが普通です。この他にも、WHOが作成した「ICD-10基準」というものもあり、こちらもよく使われます。

 ここでは、米国精神医学会によるDSM-Ⅳの基準をご紹介します。DSM-Ⅳでは、PTSDは急性と慢性とに区分されています。PTSDの症状持続期間が3か月未満の場合を「急性」、3カ月以上の場合を「慢性」としています。

 心的外傷体験の後で、解離、再体験、回避、不安などの反応性の症状が2日以上続き、4週間以内に消失してしまう場合のPTSDは、〔急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)〕と呼びます。

 PTSDの症状が発現する時期が、心的外傷の経験後6か月以上経過した後である場合、〔発症遅延のPTSD〕と呼びます。

PTSDの診断基準
(DSM-Ⅳ)

A.患者は、以下の2つが共に認められる外傷的な出来事の経験がある。

1.実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、患者が体験し、目撃し、または直面した。
2.患者の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。


B.トラウマが、以下の一つ以上の形で再体験され続けている。

1.出来事の反復的、侵入的、かつ苦痛な想起で、それは心像、思考、または知覚を含む。

2.出来事についての反復的で苦痛な夢。

3.トラウマとなった出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする。(その体験を再体験する感覚、錯覚、幻覚、解離性フラッシュバックのエピソードを含む、また、覚醒時または中毒時に起こるものを含む)。

4.トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる、強い心理的苦痛。

5.トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性。


C.以下の3つ(またはそれ以上)によって示される、(トラウマ以前には存在していなかった)トラウマと関連した刺激の持続的回避と、全般的反応性の麻痺。

1.トラウマと関連した思考、感情、会話を回避しようとする努力。

2.トラウマを想起させる活動、場所、人物を避けようとする努力。

3.トラウマの重要な側面の想起不能。

4.重要な活動への関心または参加の著しい減退。

5.他の人から孤立している、または疎遠になっているという感覚。

6.感情の範囲の縮小(例:愛の感情を持つことができない)。

7.未来が短縮した感覚(例:仕事、結婚、子ども、正常な一生を期待しない)。


D.(トラウマ以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進状態で、以下の2つ以上によって示される。

1.入眠または睡眠維持の困難。

2.易刺激性または怒りの爆発

3.集中困難

4.過度の警戒心

5.過剰な驚愕反応


E.上のB、C、Dの症状が1ヶ月以上持続する。


F.障害は、臨床的に著しい苦痛、または社会的・職業的・その他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。


治療はどうやりますか? ◆〔心的外傷後ストレス障害(PTSD)〕の治療方法をご説明します。
PTSDの治療方針

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)もひとつの病気であり、治療により完全治癒あるいは改善することができます。他の病気と同様、早期発見・早期治療が重要であることはいうまでもありません。

 上記にDSM-Ⅳの診断基準を表示しましたが、専門医がこの基準に従って診断すれば、現在のPDSDの状態を正確に診断することが可能と考えられます。

 PTSDであると診断するに当たっては、医師は、それが急性か慢性か、重症度・緊急度はどの程度か、精神的・身体的・人格障害などの合併症は起きているか、患者を取り巻く家族環境などはどうなっているかなどを正確に理解し、診断しなくてはいけません。

 そのための大前提は、患者と治療に当たる医師との間の信頼関係にあります。

 患者と医師との間の信頼関係が築けた条件下で、診断および治療が行われますが、先ず最初に行うことは、患者に対しての「PTSDとは何か?」という基本教育です。

 PTSDは、そのような状況下に置かれれば、誰でも罹りえる疾患であり、その患者の何らかの失敗を意味するものなどではないこと、恥ずべきものなどではないことをしっかり理解するまで、何度でも徹底的に教え込みます。

 さらに、患者は、自傷行為・他傷行為・破壊的行為をしないことなどを理解しなければなりません。治療には長い期間が必要であり、努力と忍耐が必要であること、耐え切れずドロップアウトしてしまう人が少なからずいることも理解しなくてはなりません。

 これらの準備ができると、下記のような多くの方法で治療が開始されます。これらは単独に行うことも並行して行うこともあります。

 ・心理的デブリーフィング
 ・行動療法
 ・薬物療法
 ・精神生理学的治療
 ・精神分析的治療
 ・催眠療法
 ・自己暗示法
 ・グループ療法
 ・家族療法
 ・入院治療
 ・その他の治療法

心理的デブリーフィング

 心理的ブリーフィングは、異常な体験の直後の数時間~数日以内に、異常な体験が後遺症としてトラウマとなるのを予防する目的で開く集会のことです。ここでは、異常体験者はあくまで、患者ではなく、異常な体験をした普通の人・正常な人として、「自己の体験」を話し、聞いてもらいます。

 このようなブリーフィングがトラウマ防止の効果があるかどうかは議論が分かれるところですが、少なくともPTSDの早期発見・早期治療には役立つとされています。

行動療法

 行動療法は、患者と心理療法士などのカウンセラーとが、過去のことを思い出しながら会話することで、トラウマを解明し、解いてゆく方法です。この方法は、PTSD患者にパニック障害や恐怖心、広場恐怖(アゴラフォビア)などの症状がある場合、有効な治療法だとされています。

 行動療法には「暴露療法」「ストレス管理訓練」および「認識行動療法」などがあります。

行動療法によるPTSDの治療
暴露療法  暴露療法では、患者は瞑想するように目を閉じてリラックスした姿勢で、セラピストとの間で会話を続けます。リラックスした中で、自分が体験した事件などを何度でも繰り返し思い出して話します。

 患者は、リラックスする方法を学びながら、過去に自分が経験したトラウマとなっていることに直面します。瞑想し自分の体験を繰り返し暴露しながら、しかもリラックスする方法を学ぶことで、やがてトラウマに対する恐れが縮小し、苦痛から解放される可能性がでてきます。

ストレス管理訓練  PTSD患者は心理療法士の支援を受けながら、否定的な思考に対する囚われや、衝撃的な出来事で圧倒される感覚を徐々に減少させてゆく方法を学ぶ治療法です。

認識行動療法  PTSD患者は、心理療法士の支援のもとで、心理的ストレスをもたらすマイナス思考やマイナスの確信を識別します。そしてトラウマとなっている出来事に対して、今までとは異なる、違った見方・解釈・対処ができることを学ぶ治療法です。


薬物療法

 薬物療法は、医師の処方により、PTSDに効果のある治療薬を服用する療法です。

 通常、PTSD治療の第一選択薬剤には、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」が処方され、多くの場合、2~5週間ほどで症状を軽減する効果が現れます。

 その他にも、第二選択薬としての、「TCA(三環系抗うつ剤)」や、「交換神経抑制薬」「ベンゾジアゼピン系薬」「抗けいれん薬」「抗精神病薬」などが処方されることもあります。

精神生理学的治療

 精神生理学的治療は「EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)」といわれる療法で、眼球運動と回想や情緒認識を組み合わせた方法で、眼球をリズムに乗って左右に運動させ、感情の処理過程を促し、外傷記憶による苦痛を取り去ろうとする方法です。

精神分析的治療

 精神分析的治療は、寝椅子に患者を寝かせ、自由連想法を用いて行う治療法です。患者は思いついたことを何でも話します。カウンセラーが支援し、自己解明を進めるという方法です。週に4~5回、40~50分のセッションを行います。これを2~7年継続します。

 この方法は、あまり実用的ではないといわれています。

催眠療法

 催眠療法は、患者を、完全な催眠状態にして、トラウマを思い出させていく方法で、他の行動療法と組み合わせて改善を図る療法です。

自己暗示法

 自己暗示法は、自分自身で如何にしてリラックスうするかの方法を学ぶイメージトレーニング療法です。自分でリラックスする方法を会得するとともに、自分の気持ちをコントロールできるようにするのが目的です。

グループ療法

 グループ療法は、同じトラウマを持つ人々が場所と時間を決めて集まり、カウンセラーの指導のもとで、各自の問題やトラウマを話し合う療法です。

家族療法

 家族療法は、PTSD患者の治療というより、患者を取り巻く家族問題の緩和を目的とした「システムズアプローチ(家族関係のトラブルを直接扱う療法)」と、PTSDの患者を持つ家族を支援する療法とがあります。

入院治療

 入院治療は、慢性PTSD患者の中で外来治療が困難な人に長期治療の一環として行います。また、自傷行為・他害行為・破壊的行為などの危険を防止し、安定化させるための短期間支援環境として行うこともあります。

 入院治療では、一定の治療目標を定め、いくつかの治療法を組み合わせて集中的に治療を行います。

その他の治療法

 その他の治療法として、絵画療法、音楽療法、箱庭療法、舞踏療法、心理劇、詩歌療法などに触れる芸術療法、ペットとすごす動物療法などがあります。子供のPTSD患者などには有効な方法とされます。