先に述べたように、一度熱性けいれんを経験した5歳以下の乳幼児の中で、熱性けいれんを二回以上起こす子が半数近くいます。このことから、一度経験したら、再発するかも知れないので、どのように対処したらよいか知っておくと役にたちます。
熱性けいれんを始めて起こすと、落ち着いて状態を観察すればいいのですが、母親は気が動転してどうしてよいか分からなくて困ってしまいます。けいれん発作は、母親が何かをして止められる性格のものでもありませんし、数分間で自然に止まりますから、それほど心配は要りません。大事なことは、けいれんの状態をよく観察し、どれくらいの時間続いたかなどそ記録することです。
あわてない |
母親にとってはとても長く感じられるのですが、子供がひきつけを起こしている時間は現実には、数分で治まります。その間、あわてないようにしましょう。
大声で名前を呼んだり、叫んだり、身体を揺すったりしてはいけません。そっとしてあげるのが大切です。
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割り箸は無用 |
以前には、ひきつけを起こすと、舌を噛み切ってしまうという迷信があり、スプーンや割り箸を加えさせるとよいといわれたことがあるのですが、舌を噛むことはありませんので、そのようなことは全く無用です。
それどころか、慌ててそのようなことをすると、口の中を傷つけてしまったり、指を噛まれてしまう危険性があります。口の中に吐き出したものがないことだけ確かめましょう。
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楽な姿勢に |
ひきつけを起こしたら、着ている衣類で硬直した身体が締め付けられないように、首まわりや胸元のボタンを外し、衣類をゆるめます。ピンなど危ないものは取り外します。
また、けいれん時に食べたものを吐き出だすこともあるので、吐いたものが喉や気管に詰まらないように、乳幼児を身体ごと横に向かせます。もし吐いてしまったら、口や鼻のまわりを拭き取ります。
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観察 |
もしも、食べたものを吐き出したりして喉や気管を詰まらせないような対応だけは必要ですが、それ以外にひきつけている子に特別にしてあげることはありません。
特別な異常があって病院での治療が必要かどうかなどを確かめるために、いくつかのことを行います。ひきつけ以外に特別な異常がないか、次のような点に注意しましょう。
状態観察 |
今後のために、けいれんの様子をよく観察します。身体の突っ張り方や震え方が左右対称になっているかを確認します。左右どちらか一方だけのけいれんや、身体の一部だけのけいれんなど、何か異常が感じられるなら、至急救急車を呼びます。
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時間測定 |
時計を見て、ひきつけがどれくらいの時間続いたか確かめます。もしも、けいれんが10分以上続いても治まりそうもないときには救急車を呼びます。
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発熱確認 |
通常、熱性けいれんでは38℃以上の発熱があるのが普通です。もしも、まったく熱がないのにひきつけているときは、熱性けいれんではなく、別の病気の可能性があるので、至急、救急車を呼んで病院に行きましょう。
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治まったら |
熱性けいれんが数分で治まると、乳幼児は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠りのが普通です。けいれんが終わっても意識が戻らなかったり、身体の動きが悪いときは、救急車を呼んで病院まで連れてゆきます。
けいれんが治まったら、顔色や目の動き、呼吸や手足の状態など、全身状態を確認します。再発防止のために、脇の下や足の付け根、首筋などをゆったりとさせ、冷やします。
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熱性けいれんは普通は一過性であり、自然に治まりますし後遺症の心配もありませんが、中には症状は熱性けいれんに似ていても、別の疾患の場合もあるので、初めて経験した場合は、かかりつけ医に診断してもらいましょう。
熱性けいれんが起きたのが5歳以下の乳幼児で、高熱が出ているときに起こり、発作は10分程度で止まり、1日に2回以内、1年で5回以内であれば、良性な熱性けいれんと考えられます。
しかし、そうではないときは、熱性けいれんではなく、てんかんや他の脳の病気の可能性もあるなど、やや心配なこともありますので、一度、かかりつけ医の診察を受けましょう。それは次のような場合です。
・けいれんが10分以上、特に15分以上続いたとき
・けいれんの様子が作用非対称、身体の一部だけのとき
・1日に2回以上の発作があるとき
・6歳以上で発作がでたとき
・何も熱がないのにけいれんが起こったとき
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