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心の病気

 

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〔心の病気〕

◇幼児期・小児期・青年期障害◇

精神遅滞


 幼児期・小児期・青年期に発症する障害は数多くありますが、〔精神遅滞〕もそのひとつであり、日本における正式名は〔知的障害〕となっています。

 通常は〔精神発達遅滞〕や〔精神薄弱〕あるいは〔知恵遅れ〕と呼ばれることも多い精神疾患です。

 〔精神遅滞〕は、一般的な知的機能が平均的な状態より明らかに低く、同時に適応行動の障害を伴う状態であり、それが幼児期・小児期・青年期などの発達期に現れるものをいいます。


 「知的機能」は、いわゆる「知能検査」での「知能指数:IQ(intelligence quotient)」により測定されます。〔精神遅滞〕や〔知恵遅れ〕は、このIQ値が70以下であり、かつコミュニケーションや自己管理などに支障を来たしている状態とされます。

 〔精神遅滞〕は、このような症状の発症時期が18歳未満であるものとされています。

 通常、〔精神遅滞〕があると、ストレス状況によって、「引きこもり」や「自傷行為」「他者への暴力行為」などさまざまな問題行動が生じやすくなります。

 〔精神遅滞〕はその程度により「軽度精神遅滞」~「最重度精神遅滞」などに分類されています。

精神遅滞の区分
軽度精神遅滞  IQ:IQレベル50~55からおよそ70(精神年齢9~12歳未満)
中等度精神遅滞  IQ:35~40から50~55(精神年齢6~9歳未満)
重度精神遅滞  IQ:20~25から35~40(精神年齢3~6歳未満)
最重度精神遅滞  IQ:20~25以下(精神年齢3歳未満)
精神遅滞
重症度特定不能
 その人の知能が標準的検査では測定不能
 (あまりにも障害がひどい、または非協力的、または幼児の場合)


精神遅滞はどんな病気ですか? ◆〔精神遅滞〕とは、一体どんな病気なのかご説明します。
精神遅滞は
どんな病気ですか?

 〔精神遅滞〕は、一般的な「知能機能」が平均的状態よりも明らかに低く、同時に「適応行動」上の障害を伴う状態があり、それが幼児期・小児期・青年期の発達期に現れる精神疾患をいいます。

 幼児期・小児期・青年期に発症する障害は数多くありますが、〔精神遅滞〕もそのひとつであり、〔精神発達遅滞〕や〔精神薄弱〕あるいは〔知恵遅れ〕と呼ばれることも多いです。

 しかし、日本では1998年の法改正で、正式には〔知的障害〕と呼ばれるようになっています。(アメリカ合衆国や国際学会では依然として〔精神遅滞(mental retardation)〕と呼ばれています。)

 次のような三つの要素を満たすときを〔精神遅滞(知的障害)〕があると認められます。

精神遅滞の要素
知的機能の制約 ・明らかに平均以下の「知的機能」であること。

・知能検査で、およそ70またはそれ以下のIQであること

適応行動の制約 ・適応行動に制約を伴う状態であること。

・下記二つ以上の領域で適応機能の欠陥や不全があること。
(コミュニケーション、自己管理、家庭生活、社会的・対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、発揮される学習能力、仕事、余暇、健康、安全)

発症時期(年代) ・症状の発症時期が18歳未満の発達期に生じる障害であること。


 通常、発達期以降になっての事故の後遺症や認知症などによって発症する知能の低下については、〔精神遅滞(知能障害)〕とは呼びません。

 事故の後遺症は医療上の問題であり、認知症については老人福祉上での取り扱いとなります。

 尚、〔精神遅滞〕は、その程度により「軽度精神遅滞」~「最重度精神遅滞」などに分類されています。IQ(知能指数)は、確定的な数値ではないため、IQについては、おおむねいくつ位という程度に定められています。

精神遅滞の程度による分類
軽度精神遅滞 IQ(知能指数):おおむね50~70

中等度精神遅滞 IQ(知能指数):おおむね35~50

重度精神遅滞 IQ(知能指数):おおむね20~35(白痴 idiot)

最重度精神遅滞 IQ(知能指数):おおむね20以下

精神遅滞
重症度は特定不能
精神遅滞が強く疑われるが、その人の知能が標準的検査では測定不能の場合。

(あまりにも障害がひどい、または非協力的、または幼児の場合)


精神遅滞に見られる傾向

 〔精神遅滞〕は、乳幼児期から小児期、青年期に発症する精神障害ですが、それぞれの生育期において多少の特徴的傾向が見られます。

精神遅滞の生育期に特徴的傾向
乳幼児期
(0~6歳ごろ)
 言葉の発達に遅れがあったり、同年代の乳幼児との交流が上手にできない。

学齢期
(6~15歳ごろ)
 判断力や記憶力が弱く、普通学級の授業についていけない。複雑な遊びなどに参加できない。また、高校などへの進学は困難なことがある。

成年期
(15~18歳ごろ以降)
 通常の職場での就労はかなり困難である。ボランティア団体や保護者、障害者などでの通所施設では活躍できることが多い。悪意ももつ者に騙されることがある。



どんな症状ですか? ◆〔精神遅滞〕の症状をご説明します。
精神遅滞の症状

 〔精神遅滞〕は、一般的な「知能機能」が平均的状態よりも明らかに低く、同時に「適応行動」上の障害を伴う状態があることとされています。

 「知的機能」は、いわゆる「知能検査」で測定されるもので、「知能指数(IQ値):IQ(intelligence quotient)」として表現されます。

 〔精神遅滞〕や〔知恵遅れ〕は、この「IQ値」がおおむね70以下であり、かつコミュニケーションや自己管理上などに支障を来たしている状態とされます。

 幼児においては、IQ値(知能指数)自体が測定できない場合もあるため、明らかに平均以下の知的機能であるという臨床的判断によることもあります。

 「適応機能」とは、その人が生活する文化圏において、その年齢相応に期待される基準への適合能力をいいます。日常生活上で、その人に期待される要求に効率よく適切に対処でき、自立できているかを示す機能です。

 〔精神遅滞〕では、下に示すような事項における二つ以上の領域で、そのような適応機能に欠陥あるいは不全が存在する状態をいいます。

適応機能の欠陥や不全の種類
意志伝達 コミュニケーション能力
自己管理
家庭生活
社会的・対人的技能
地域社会資源の利用
自律性
発揮される学習能力 読み書き、計算など知能を使う日常生活や学校生活
仕事 職場になじめない。
余暇 子供同士の遊びに参加できない。
健康
安全 交通信号の認識


精神遅滞の原因は何ですか? ◆〔精神遅滞〕の原因や発症の仕組みをご説明します。
精神遅滞の原因

 精神遅滞や知的障害の発症原因には、大きくは何らかの病理的要因によるもの、親からの遺伝など偶発的要素である生理的要因によるもの、生育環境など心理的要因によるものなどがあります。

精神遅滞の発症原因
病理的要因  病理的要因による知的障害は、何らかの疾患により発症する精神遅滞で、先天的なものと後天的なものとがあります。

 先天性疾患が原因となるものには、脳性麻痺やてんかんなどの脳の障害やダウン症候群などの染色体異常、自閉症などがあります。

 このような先天性疾患が原因での精神遅滞では、身体的にも問題を有することが多くあり、外見上も知的障害者特有な容貌を呈することが多いです。また、障害の程度も中度以上となることが多くなります。

 後天性疾患が原因となるものには、出産時における酸素不足、脳の物理的圧迫などの事故、乳幼児期以降の病気による高熱や不測の事故によるものなどがあります。

生理的要因  やや低めの知能指数を持つ親からの遺伝的要因を引き継いだ子や特別な知的障害がない普通の親から偶発的に生まれる子の精神遅滞です。

 知能指数の検査により、たまたま70前後の知能指数となり、障害とみなされた程度であり、特に重度の精神遅滞ではないものをいいます。

 このような場合は、特別に大きな疾患もなく、良好な健康状態も維持していて、容貌も健常者と何ら変わることもないのが普通です。

 知的障害の程度は軽度から中度であり、多くの知的障害者はこの範疇に属します。多くの場合、本人も周囲も特別な知的障害と気づかないことも多く、普通の社会生活を営むことも可能です。このような場合には、〔単純性精神遅滞〕と呼ばれます。

心理的要因  乳幼児期における養育者の放任や虐待、会話不足など、劣悪な発育環境が原因で発症する知的障害です。

 この場合は、本質的には必ずしも知能指数が低いわけでないため、成人してからの指導や訓練、リハビリにより、知能が飛躍的に回復することもあります。

 また、知能指数が精神遅滞や知的障害の判断基準の大きな要素となっているため、離島や山岳地帯に住む民族などには知能検査自体が不利な要素となり、低いIQ値となることがあります。このような場合も、本質的には精神遅滞ということにはなりません。



精神遅滞の診断はどうなりますか? ◆〔精神遅滞〕の検査方法や診断方法をご説明します。
精神遅滞の診断

 既に述べているように、精神遅滞は次のように判定される。

精神遅滞の判定
A  明らかに平均以下の知的機能であること。個別に行う知能検査で、IQがおよそ70またはそれ以下であること。幼児では、臨床的判断で、明らかに平均以下の知的機能であること。

B  同時に、現在の適応機能の欠陥または不全が、以下の二つ以上の領域で存在すること。

 ・コミュニケーション
 ・自己管理
 ・家庭生活
 ・社会的・対人的技能
 ・地域社会資源の利用
 ・自律性
 ・発揮される学習能力
 ・仕事
 ・余暇
 ・健康
 ・安全

C  発症は18歳以前であること。


 精神遅滞のIQによる重症度分類は次のようになります。

IQによる重症度分類
軽度精神遅滞 IQレベル50~55からおよそ70
中等度精神遅滞 IQレベル35~40から50~55
重度精神遅滞 IQレベル20~25から35~40
最重度精神遅滞 IQレベル20~25以下
精神遅滞
重症度は特定不能
精神遅滞が強く疑われるが、その人の知能が標準的検査では測定不能の場合(あまりにも障害がひどい、または非協力的、または幼児の場合)

 尚、アメリカ精神薄弱学会では、精神遅滞の診断は慎重を期すべきだとして、次の注意を与えています。

アメリカ精神薄弱学会で推奨する注意点
1  診断は、知的機能の発達程度にのみとらわれず、適応行動上の障害を十分に勘案すること。

2  医学的、心理学的、社会学的な臨床所見のすべてを基礎にすること。

3  知能検査によるIQ値(知能指数)は、あくまでも判定のための一資料であり、これを絶対視しないこと。



精神遅滞の治療はどうやりますか? ◆〔精神遅滞〕の治療方法をご説明します。
精神遅滞の治療

 多くの場合、精神遅滞の治療はかなり困難な面があります。特に先天的な原因による重度の精神遅滞については治療は困難となります。

 何らかの原因疾患があって発症する精神遅滞の場合には、その疾患を治療することである程度の回復は可能かもしれません。

 てんかんのような合併症がある場合には、抗てんかん薬による治療などである程度の効果を発揮することはあります。

 社会生活を一般健常者と同じレベルで行うことには困難もありますが、リハビリや軽度の作業などを行うことで社会の一員として活躍することは可能です。自治体やボランティア団体などがこのような支援の手を差し伸べている場合も多いです。