広汎性発達障害の特徴的症状は、「対人関係の異常」「コミュニケーションの異常」および「特徴的なこだわり」の三つですが、これらの特徴的障害のどれがより強く現われるかなどによって、広汎性発達障害の種類には、〔自閉性障害〕〔レット障害)〕〔小児期崩壊性障害〕〔アスペルガー障害〕および〔特定不能の広汎性発達障害〕などの種類があります。
典型的な障害は、これら三つの障害をすべて持つもので、〔自閉性障害(自閉症)〕と呼ばれています。何事にも反応が鈍感で、コミュニケーション能力を欠き、同じ行動を何度でも繰り返したりします。自閉症には、〔小児自閉症〕や〔非定型自閉症〕などがあります。
また、対人関係に異常があり、特徴的なこだわりだけを有するものは〔アスペルがー障害(アスペルガー症候群)〕と呼ばれています。
更に、これらに分類されないものとして〔特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)〕と呼ばれるものもあります。
自閉性障害
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〔自閉性障害(Autistic Disorders)〕の基本的特徴は、3歳くらいまでに、次に示すような三つ障害を呈するものをいいます。この障害は〔自閉症〕と呼ばれることもあります。
・対人相互反応の質的な障害
・意思伝達の著しい異常またはその発達の障害
・活動と興味の範囲の著しい限局性
自閉性障害の発症率は、子どもの0.1~0.2%です。
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レット障害
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〔レット障害(Rett's Disorders)〕は、生後2~3歳くらいまでは正常に成長を遂げてきた子どもが、それ以降になって、進行性の脳障害を発症し最終的に重度の精神遅滞をともない、生涯にわたって車椅子での生活を余儀なくされる障害です。
この障害の原因は、性染色体のX染色体上に存在する「MECP2遺伝子」の突然変異によって起こることが知られていて、女児だけにしか発症しません。
MECP2遺伝子は重要な遺伝子で、少なくともひとつは正常でないと発生初期で死んでしまいます。
従って、性染色体の型が「XY」である男子では、X染色体をひとつしか持たないため、ここに異常が起こると発生初期で死んでしまい誕生することがありません。
一方、「XX染色体」を持つ女子の場合には、一方のX染色体に異常があっても、成育して生まれてきます。このため、レット障害は女児だけにしか発症しない特徴があるのです。
レット障害の発症率は、女児10万人に対して6~7人程度とされています。
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小児期崩壊性障害
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〔小児期崩壊性障害(Childhood Disintegrative Disorders)〕は、少なくとも2歳くらいまでは正常に成長してきた子どもが、その後になって、「対人反応障害」や「有意味語消失」と呼ばれるような精神発達が退行してしまう障害です。
典型的な症状では、人との対応がうまく出来なくなることや、有意味語消失と呼ばれるように、意味のある言葉がなくなるのが特徴的です。特定の興味分野に執着したり、同じ行動を繰り返す「常同行動」をすることもあります。
小児におけるこの障害の有病率は、ごく低く0.01%程度ですが、男児の方が多いです。
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アスペルガー障害
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〔アスペルガー障害(Asperger's Disorders)〕は〔アスペルガー症候群〕とも呼ばれる障害で、「社会性」「コミュニケーション」および「興味」について特異性が認められる障害です。
症状としては自閉症的な面も持つが、多くの場合、知能指数(IQ)は知的障害領域にはなく、コンピューターや数学、天文学、地理、恐竜などのような特定分野へ強いこだわりを持ちます。
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特定不能の広汎性発達障害
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〔特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS:Pervasive Developmental Disorder - Not Otherwise Specified)〕は、〔自閉症〕や〔アスペルガー障害〕と類似の症状があるものの、〔自閉症〕や〔アスペルガー障害〕の診断基準には当てはまらない、広汎性発達障害と考えられる障害です。
自閉症やアスペルガー症候群と特定不能の発達障害とを厳密に識別することは困難であり、診断上でも揺れがあると考えられます。
しかし、広汎性発達障害の三つの主要要素「社交能力の欠如」や「コミュニケーション能力の乏しさ」「思考・想像力の欠如」の内、1つあるいは2つだけが該当するとき、PDD-NOSと診断されることがあります。
ちなみに、DSM-Ⅳ-TR(アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル第4版)によると、特定不能の広汎性発達障害は、次のように定義されています。
「対人相互反応に重症で広汎な障害があり、言語的または非言語的コミュニケーション障害や常同的で制限された興味や行動、活動を伴っているが、他の特定の広汎性発達障害や統合失調症、統合失調症型人格障害、回避性人格障害の基準を満たさない場合」
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