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〔呼吸器の病気〕

肺炎


 肺の肺胞領域に炎症を起こすものを総称して〔肺炎〕といいます。

 肺炎になると、咳や痰、胸痛、呼吸困難などの典型的な症状が現われ、更に発熱、倦怠感、食欲不振などの全身的症状を呈するようになります。

 特に痰は特徴的で、膿のようなものから、血液が混じった茶色い錆び色のような肺炎特有なものとなります。



 肺炎の種類には、原因や発症部位、罹患場所などによる分類があり、それぞれにより発症の仕方、症状が異なります。

 ・肺炎を引き起こす原因
 ・肺炎の発症部位
 ・羅感場所による分類



 また、全く別の分類法として、一般的な肺炎の治療に最も効果のある「β-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系等)」が有効か無効かという分類法もあり、この分類法では肺炎は、〔定型肺炎〕と〔非定型肺炎〕の二つに分類されます。

 国民衛生の動向調査によれば、日本での肺炎による年間死亡者数は、原因別死因順位で第4位を占めています。高齢者の死亡率の中で肺炎は非常に上位に位置していて、全肺炎死亡者の92%は65歳以上の高齢者です。

肺炎の基本的分類法
原因による分類

・感染性肺炎
(細菌性肺炎・ウイルス性肺炎など多くの種類がある)
・機械的肺炎
・薬剤性肺炎
・症候性肺炎
・好酸球性肺炎
・放射線肺炎
・過敏性肺炎

発症部位による分類

・肺胞性肺炎
・間質性肺炎

羅感場所による分類

・市中肺炎
・院内肺炎

定型・非定型分類

・定型肺炎
・非定型肺炎



どんな病気ですか? ◆〔肺炎〕とは、一体どんな病気なのかの説明です。
どんな病気ですか?

 肺炎は、肺組織の中で病原体である微生物が増殖しておきる炎症性疾患の総称ですが、肺の急性感染症を指す場合が多いです。一般的には、体力が落ちているときや高齢のため免疫力が落ちていると罹りやすくなります。

 肺の中で微生物が繁殖すると、発熱、咳、痰、胸痛、呼吸困難などの症状が現れます。これが肺炎です。肺炎の原因となっている病原菌を培養して特定するには時間がかかるので、待てない場合もあり、最も可能性の高い抗菌薬を使うことになります。高齢者の死亡率の中で肺炎は非常に上位に位置しています。

肺の構造図

 肺の基本的機能は、空気中の酸素を血液中に送り出し、かつ血液中の二酸化炭素を取り出して空気中に排気することにあります。

 その基本となる組織は、肺の中に無数にある「肺胞」と呼ばれる組織です。

 空気中の酸素は、次々と分岐する気管支を通り、最終的には肺胞組織にまで到達します。

 肺胞は、肺胞に張り付いた肺動脈中に存在する二酸化炭素を抜き出します。そして、空気中の酸素をその血液中に入れて、肺静脈血液として送り出します。

 こうして、肺静脈からの血液は心臓へと送られ、全身に酸素を供給するために循環されます。

 これが肺胞でのガス交換と呼ばれるシステムです。ガス交換後の空気は、逆の経路を辿って、大気中へと排出されます。


肺胞の実質と間質

 上の図で示すように、肺の組織は複雑になっています。外部から病原体、あるいは何らかの異物が侵入してくると、それぞれの組織が炎症を起こすことがあり、これが肺炎です。

 肺炎の病気には、非常に多くの種類があります。最も基本的なのは、肺胞組織に炎症を起こすもので、肺胞性肺炎と呼ばれます。

 それ以外にも、肺胞の「間質組織」に炎症を起こす、間質性肺炎もあります。また、気管支などに炎症を起こす、気管支肺炎などもあります。

 肺炎の症状には、多くの共通的な症状が出るほか、発症部位などによっても、それ特有な症状を呈するなど違いがあります。

肺炎の分類

 肺炎には多くの種類が知られており、それぞれにより発症の仕方や症状が異なります。

 それぞれの肺炎は、「肺炎を誘起する原因」や「肺炎の発症部位」、および「肺炎の羅感場所」により分類されます。

 「肺炎を誘起する原因」による分類では、肺炎を引き起こす原因が、細菌なのかウイルスなのか、あるいは機械的原因なのか、薬剤性なのかなど、その発症原因で分類します。

 「肺炎の発症部位」による分類では、肺炎の主座の存在部位が、肺胞性なのか、あるいは間質性なのかにより分類します。

 そして、「肺炎の羅感場所」による分類では、その肺炎が一般生活環境下で発症したのか、あるいは病院内で感染したのかにより分類します。

 肺炎の特殊な分類法として、〔定型肺炎〕と〔非定型肺炎〕という分類法があります。通常の肺炎治療薬である「βラクタム系薬剤」が治療効果を示す肺炎は、定型肺炎と呼ばれ、治療効果がない肺炎は、非定型肺炎と呼ばれます。

 ここでは、それぞれの分類法により、どのような名称の肺炎があるかを表で示します。

肺炎の分類
原因による分類 感染性肺炎

 感染性肺炎を引き起こす数多くの原因病原体が存在し、その原因病原体の種類などにより次のように分類されます。

 ・細菌性肺炎
 ・ウイルス性肺炎
 ・マイコプラズマ肺炎
 ・クラミジア肺炎
 ・レジオネラ肺炎
 ・ニューモシスティス肺炎
 ・リケッチア肺炎
 ・その他の肺炎

機械的肺炎

 機械的肺炎は、肺に異物を侵入させるなどの機械的原因で引き起こす肺炎で、次のように分類されます。

 ・誤嚥性肺炎、または嚥下性肺炎
 ・閉塞性肺炎
 ・吸入性肺炎

薬剤性肺炎

 薬剤性肺炎は、病気治療のための インターフェロンや抗癌剤などの医薬、漢方薬、健康食品などの副作用やアレルギー反応などで引き起こす肺炎です。

症候性肺炎

 症候性肺炎は、膠原病が原因となる肺炎で、膠原病性肺炎、とか膠原病肺とも呼ばれます。

好酸球性肺炎

 好酸球肺炎は、白血球である好酸球が肺組織に浸潤し炎症を起こす肺炎です。

放射線肺炎

 放射線肺炎は、がん治療などに使用する放射線が原因で引き起こされる肺炎です。

過敏性肺炎

 過敏性肺炎は、カビや化学物質の吸引により肺胞にアレルギー症状を引き起こす肺炎です。

発症部位による分類 肺胞性肺炎

 肺胞性肺炎は、肺の実体組織である気管支や大葉組織に起こる肺炎で、次のようなものがあります。

 ・気管支肺炎
 ・大葉性肺炎

間質性肺炎

 間質性肺炎は、肺の間質組織に発症する肺炎です。

 その中で原因不明のものは、特発性間質性肺炎と呼ばれます。

 また、肺内部で発症した肺炎によって産出された異物が細気管支などに蓄積したものを、特発性器質化肺炎と呼びます。

羅感場所による分類 市中肺炎

 市中肺炎とは、ごく普通の日常生活の中で発症した肺炎です。

院内肺炎

 院内肺炎とは、病院入院中に感染して発症する肺炎です。

定型肺炎と非定型肺炎 定型肺炎

 定型肺炎は、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌等の細菌による肺炎で、細胞壁に作用するβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系等)が効果を発揮する肺炎(一般細菌性肺炎)です。

 ・肺炎球菌肺炎
 ・クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)肺炎
 ・インフルエンザ菌肺炎
 ・黄色ブドウ球菌肺炎
 ・モラクセラ肺炎

非定型肺炎

 非定型肺炎は、マイコプラズマのように細胞壁を持たないことで、細胞壁に作用するβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系等)が全く効果を発揮しない肺炎です。

 ・レジオネラ肺炎
 ・マイコプラズマ肺炎
 ・クラミジア肺炎
 ・コクシエラ菌肺炎
 ・RSウイルス肺炎
 ・インフルエンザウイルス肺炎
 ・パラインフルエンザウイルス肺炎
 ・アデノウイルス肺炎


細菌性肺炎

 感染性肺炎の内で、細菌が原因となって肺の急性炎症を起こす疾患が、細菌性肺炎です。そして、細菌性肺炎の多くは、肺の肺胞と呼ばれる部位に発症する、肺胞性肺炎です。

 細菌性肺炎の原因となる細菌には、次のようなものがあります。

細菌性肺炎の原因となる細菌類
肺炎球菌

 肺炎球菌性肺炎が最も典型的な肺炎。これに有効なワクチンがある。

インフルエンザ桿菌

 多くの人の鼻や喉に常在し中耳炎や喉頭炎などの原因菌で、名称は似ていても、いわゆるインフルエンザウイルスとは全くの別物です。

連鎖球菌

 光学顕微鏡観察で、連なった鎖のように見える真正細菌で、扁桃周囲膿瘍や猩紅熱、リウマチ熱、急性糸球体腎炎の原因菌です。

モラキセラ

 口腔や上気道・性器の粘膜に常在する菌です。

黄色ブドウ球菌

 皮膚や腸に常在する菌で、しばしば食中毒の原因菌です。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

 ペニシリンの一種であるメチシリンが効かなくなった黄色ブドウ球菌で「MARS」と呼ばれ治療は困難です。免疫力が衰えると呼吸器感染症、腸炎、敗血症などを誘起します。

クレブシエラ

 肺炎桿菌と呼ばれ、高齢者やアルコール多飲者、ペニシリン系抗生物質服用者に肺炎を発症しやすい。

緑膿菌

 自然界に常在する菌で、免疫力の低下した人には感染して緑膿菌感染症を誘起する。

大腸菌

 大腸菌は無害なものも多いが、O-157などのように、重篤な食中毒の原因となるものもある。

嫌気性菌

 無酸素状態でも生育できる細菌。動物の消化管内にぞんざい擦る嫌気性細菌も多い。

放線菌

 土壌中や一般自然界に広く分布する菌で、病原性を示すものもあるが、ストレプトマイシンなど抗生物質を産出するものもある。

ノカルジア

 土壌中に分布し粉塵の吸入などで、免疫不全者などに経気道感染する。肺(肺炎・肺膿瘍)や脳、皮下組織、胸膜、心臓などに発症する。

真菌

 カビの仲間菌で、アスペルギルスやクリプトコッカス、 アスペルギルス、カンジダ、ムーコルなどの種類があり、結核患者や抗がん剤治療者、エイズ患者などに肺炎を誘起する。


ウイルス性肺炎  感染性肺炎の内には、ウイルスによって引き起こされる肺炎もあり、これを、ウイルス性肺炎と呼びます。

 ウイルス性肺炎の原因となるウイルスには、次のようなものがあります。

ウイルス性肺炎の原因となるウイルス
インフルエンザウイルス

 ヒトに感染してインフルエンザを引き起こすウイルスです。

パラインフルエンザウイルス

 ヒトに呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。

RSウイルス

 弱いウイルスですが、時に免疫不全者や乳幼児に気管支炎や肺炎などを誘起します。

アデノウイルス

 扁桃腺やリンパ節中で増殖し炎症を起こすウイルスです。ヒトに感染するアデノウイルスには、49種類が知られています。

SARSウイルス

 重症急性呼吸器症候群(SARS) の病原体ウイルスで、飛沫感染などで拡散します。

サイトメガロウイルス

 ヘルペスウイルスの一種で、肺炎やサイトメガロウイルス網膜炎、サイトメガロウイルス髄膜炎、サイトメガロウイルス腸炎などを引き起こします。

水痘ウイルス

 感染すると水痘や帯状疱疹を引き起こすウイルスで、免疫力が低下すると活性化します。

麻疹ウイルス

 麻疹を発症させる他、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の原因ともなるウイルスです。


マイコプラズマ性肺炎

 マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマを病原体とする呼吸器感染症で、抗生物質のペニシリンが効かない特徴があります。小学生を中心とした若年者に多く発症し、主な症状として空咳がでます。肺炎球菌などによる普通の肺炎とは異なるため、非定型肺炎(時には異型肺炎)とも呼ばれます。

クラミジア肺炎

 クラミジア肺炎は、クラミジア(肺炎クラミジア、トラコーマ・クラミジア)により引き起こされる肺炎です。市中肺炎の中でよくみられ、主に幼児が感染して、乾性の咳、鼻水、鼻づまり、ノドの痛み、発熱と頭痛、嗄声の症状が現われます。マクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系の薬品の服薬などで治療します。

レジオネラ肺炎

 通常、土壌や水溜りの中で繁殖するレジオネラ菌が原因で起こる肺炎です。咳、痰、発熱、全身倦怠、呼吸困難、食欲不振などの症状がでます。

 通常の肺炎と同様な症状です。この病名の由来は、フィラデルフィアのホテルに在郷軍人が集まった際、新種の細菌で肺炎が発生し多数の死者が出たことによります。在郷軍人会を意味するレジオンから、この新種の細菌名がレジオネラと名づけられました。

ニューモシスティス肺炎

 ニューモシスチス肺炎は、酵母様真菌であるニューモシスチス・イロヴェチを病原体とする肺炎です。

 免疫能力が高い場合には感染することはなく、化学療法やステロイド剤使用者、後天性免疫不全症候群などにより免疫機能が低下している時に感染する日和見感染症の一つです。痰を伴わない乾いた咳が出て発熱や呼吸困難の症状が現われます。

リケッチア肺炎

 リケッチア肺炎は、一般細菌より小さな病原体であるリケッチアにより引き起こされる肺炎です。感染すると、発熱し激しい頭痛や悪寒、極度の脱力感、筋肉痛、胸痛などの症状を伴って突然発症します。

他の感染性肺炎  細菌やウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、ニューモシスチス・イロヴェチ、リケッチアなどによる肺炎以外にも、真菌や原虫、寄生虫などが原因となる感染性肺炎もあります。

機械的肺炎

 機械的肺炎は誤嚥性肺炎(嚥下性肺炎)、閉塞性肺炎、吸入性肺炎とに分類されます。誤嚥性肺炎は、高齢者や術後の人に多く、食物、胃内容物、口腔内常在菌を誤って飲み込んでしまって起こる肺炎です。

 閉塞性肺炎は、慢性閉塞性肺疾患とも呼ばれ、喫煙や有毒ガス、微粒子の吸引が原因で、気管の炎症や肺胞の破壊により気管が詰まる肺炎で、痰の増加、息切れ、動悸、呼吸困難が起こります。吸入性肺炎(吸引性肺炎)極微粒子などの吸い込みで起こす肺炎です。

薬剤性肺炎

 薬剤性肺炎は、インターフェロンや抗癌剤、漢方薬など服用や点滴、健康食品やサプリメントによる副作用が原因で発症する肺炎です。薬品や毒物自体の影響、あるいはアレルギー反応などにより肺に炎症を起こします。

症候性肺炎

 症候性肺炎は、病気などから身体を守る免疫機能に異常が発生し、自分自身の肺を攻撃してしまうために発生する肺炎で、膠原病性肺炎、あるいは膠原病肺とも呼ばれます。症候性肺炎の主なものは、関節リウマチにおけるリウマチ肺です。

好酸球性肺炎

 好酸球性肺炎は、白血球の一種である好酸球が肺の組織に浸潤をきたし、肺炎を発症する一連の症候群です。症状や状態により、単純性好酸球性肺炎・慢性好酸球性肺炎・急性好酸球性肺炎・ぜんそく性好酸球性肺炎・熱帯性好酸球性肺炎・結節性動脈周囲炎・ウェゲナー肉芽腫などがあります。

放射線肺炎

 放射線肺炎は、肺がん、および近傍の食道がんや乳がん、胸壁に発生したがんの治療のために放射線照射を行うことがあります。この放射線を浴びることで間質性肺炎や繊維症を起こすことがあります。

過敏性肺炎

 カビや細菌、真菌、および様々な化学物質や有機物を吸引することで、肺内部の肺胞にアレルギー症状が発生することがあります。過敏性肺炎は、このようなアレルギー反応によって引き起こされるアレルギー性肺炎です。

気管支肺炎

 肺炎の病変の形態による分類では、肺胞性肺炎と間質性肺炎とがあり、気管支肺炎は、肺内部の気管支壁に肺胞が出現する部分の「細気管支」や「小葉」部分で発生する肺炎です。

 近年みられる大部分の肺炎は、このタイプの肺炎で、小葉性肺炎とか巣状肺炎とも呼ばれます。

 気管支肺炎は、炎症の範囲が細気管支と肺胞を含む小葉に限局している肺炎で、咳や黄色い痰、数日間以上継続した発熱がみられ、食欲低下や全身倦怠の症状が現われます。風邪やインフルエンザ感染後に発症することが多い市中肺炎です。

大葉性肺炎

 肺を大きく分割している部分である肺葉全域に、肺炎双球菌や肺炎桿菌の感染で発生する肺炎で、クループ性肺炎、あるいはクルップ性肺炎とも呼ばれます。肺の広い範囲に炎症がおよぶため、咳や痰、高熱、呼吸困難、胸痛などの症状が比較的重くなります。

間質性肺炎

 間質性肺炎は、肺の内部組織である間質組織に炎症を起こす肺炎で、肺胞組織に炎症を起こす通常の肺炎とは異なった症状や経過を辿ります。間質性肺炎の症状には、呼吸困難や呼吸不全などがあり、治療が困難な難病です。

特発性間質性肺炎

 間質性肺炎の中で原因不明で起こる肺炎を特発性間質性肺炎と呼びます。特発性とは医学用語で原因不明という意味です。安静時には普通に呼吸していても、歩行中や入浴、排便など日常的なちょっとした動作で呼吸困難症状が現われます。また、季節に関係なく乾いた咳がでます。

特発性器質化肺炎

 膠原病や病原体、放射線照射、薬剤など様々な原因により、肺内部の組織である肺胞や細気管支で炎症が起こると、炎症によって生み出されたものが固まって、器質化物という産物ができます。

 これが細気管支に蓄積充満した状態を器質化肺炎といい、原因がはっきりしないものを特発性器質化肺炎と呼びます。

市中肺炎

 ごく普通の日常生活の中で発症した肺炎を市中肺炎と呼びます。病原微生物により、肺炎球菌や肺炎桿菌などの感染による定型肺炎(一般細菌性肺炎)や、多くのウイルスやマイコプラズマなどによる非定型肺炎と呼ばれるものがあります。

院内肺炎  院内肺炎とは、何らかの病気治療のために入院中に、肺炎の原因となる微生物に感染して起こるすべての肺炎をいいます。

 入院後48時間以内に発症した肺炎は、入院前に感染したと考えられ市中肺炎と呼びます。これに対し、院内肺炎は、入院後48時間以上経過後から、退院後48時間以内に発症した肺炎をいいます。


どんな症状ですか? ◆〔肺炎〕の症状の説明です。
肺炎の症状

 肺炎に感染すると、はじめは普通の風邪症状に似た、喉の痛みや、鼻水、鼻づまり、咳、頭痛などの症状からはじまります。やがて、高熱が出て、咳、痰、胸痛(胸の痛み)、呼吸困難(息苦しさ)、浅くて早い頻呼吸と頻脈などの症状がでます。

 また、重症になると、チアノーゼと呼ばれる、唇や爪が青黒くなる症状も現れるようになり、脱水症状や敗血症をおこすこともあります。

 高齢者の場合には、食欲不振や元気喪失などが前面にでて、表面上はそれほど激しい症状も出ないことも多く、気がついたときにはかなり症状が悪化していることもあります。


原因は何ですか? ◆〔肺炎〕の原因や発症の仕組みの説明です。
肺炎の原因

 肺炎の原因は多種多様ですが、主体となる細菌やウイルスによる肺炎では、それらの病原体は、呼吸にともない鼻や口から身体に侵入します。

 健康体であれば、病原菌は喉で痰として排除されますが、風邪やインフルエンザなどで体調が悪かったり、免疫力の低下している人などでは、病原菌が素通りして肺胞まで入ってしまいます。そして、病原体が肺に侵入してしまったとき、細菌などの感染力が人の免疫力を上回ると発症します。

 特に、高齢者の場合や糖尿病、心臓病、脳血管障害、腎臓病、肝臓病などの慢性疾患のある人では、免疫力の低下が起こりやすいので、注意が必要です。

 非感染性の肺炎として、エアコン付着のカビや、加湿器内で繁殖した真菌などのアレルギー原因物質(アレルゲン)が肺胞内に入っておこる肺炎もあります。


診断はどうなりますか? ◆〔肺炎〕の検査方法や診断方法の説明です。
肺炎の診断方針

 肺炎の診断は、医師による問診からはじまり、気管支状態の聴診、胸部X線検査、血液検査などで行います。

 最近では、一部の肺炎については迅速診断キットがあり、容易に診断できる場合もあります。肺炎の原因菌を特定するには、痰や血液の検査が必要ですが、判定困難な場合も相当あります。肺炎の検査と診断方法を下表に示します。

肺炎の検査

 肺炎の検査方法には、胸部X線検査、血液検査、痰の検査などがあり、これらの結果から病原菌の特定などを行います。

肺炎の検査方法
胸部X線検査

 胸部X線写真のパターンから、病原菌を推定できる場合があります。肺炎の性状、広がりなどを詳細に検査するには、追加してCTスキャンでの検査が必要です。

血液検査

 肺炎の炎症が生じているかどうかを血球、好酸球、赤沈、CRPなどから判別します。細菌性肺炎では白血球増加と、幼若な好中球の増加を意味する「核の左方向移動」に特徴があり、非定型肺炎では白血球増加がみられないことがあります。

病原菌の特定

 今後の治療に当たって、どのような薬を用いるのがよいのか判断するために、病原菌の特定を行います。このためには、痰の検査と、血液検査が必要です。


肺炎の重症度判定

 肺炎に罹っている場合、重症度の判定は重要です。入院での治療が必要か、外来治療で大丈夫かなどの判断のためです。肺炎の検査と診断方法を下表に示します。

 日本呼吸器学会における肺炎の重症度分類は、以前には、「身体所見+胸部X線陰影での判定法」と「検査所見での判定法」によって行われていましたが、この方法での分類と肺炎死亡との相関性が高くないため、現在では、「A-DROPシステム」と呼ばれる重症度分類法に変更されています。

 この重症度分類法は、肺炎患者の生命予後に重点をおく方法で、症状や所見、背景因子に基づき、次に示す5つの指標を用いて判定します。

「A-DROP」重症度分類に使用する指標
指標番号 指標項目 指標内容
1 年齢層  男性70歳以上、女性75歳以上
2 BUN  21mg/dL以上または脱水あり
3 SpO2  90%以下(PaO2 60Torr以下)
4 意識障害
5 血圧(収縮期)  90mmHg以下

 5つの指標のうち、いくつが該当しているかにより、肺炎の重症度を「軽症」「中等症」「重症」および「超重症」の4つに分類します。

 また、重症度に基づき、「外来治療」か「外来または入院」「入院」「ICU(集中治療室)入院」となるかという、治療の場を決定されます。

A-DROPシステムでの肺炎重症度分類
重症度 該当内容 治療の場
軽症  上記5つの項目の何れも満足しないもの 外来治療
中等症  上記項目の1つまたは2つを有するもの 外来または入院
重症  上記項目の3つを有するもの 入院
超重症  上記項目の4つまたは5つを有するもの
 ただし、ショックがあれば1項目該当のみでも超重症
ICU入院


治療はどうやりますか? ◆〔肺炎〕の治療方法の説明です。
肺炎の治療

 肺炎の治療では、原因となる病原体に対応した抗生物質を使用します。原因菌の特定には数日間はかかるので、痰を顕微鏡観察するなどで有効な抗菌薬を選定するのが普通です。肺真菌症には抗真菌薬を、ウイルス性肺炎では抗ウイルス薬を用いるなどです。

 肺炎の治療においては、原因となっている病原菌を培養して特定するには時間がかかるので、待てない場合もあり、最も可能性の高い抗菌薬を使うことになります。

 肺炎の治療に使用される抗菌薬は、発症原因に合わせて選定されますが、原因判明までの間は、原因と推定される病原菌に合わせて、ペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬が使い分けられます。

 一般的な肺炎であれば、これらの治療薬を内服したり、点滴することで、病原体の増殖を抑制して治療します。

 また、患者の身体への負担軽減のための対症療法として、咳や痰に対する鎮咳薬、去痰薬の治療を行い、発熱に対する解熱薬、消炎薬での治療なども行われます。

 通常の病院で肺炎の治療を開始する場合、医薬選定の最初の手段は、その肺炎が市中肺炎か院内肺炎かにより判断されることが多いので、それぞれについてどのような抗菌薬が選定、使用されるかを下記の表に示します。

 症状が軽症~中等症で、脱水症状がなければ外来での治療が可能です。しかし、重症はもちろん、中等症でも脱水がみられるとき、および65歳以上の高齢者の場合は、入院での治療が必要です。

 一般的には、免疫力の低下している人や高齢者を除けば、適切な抗菌薬での治療により1~2週間で治癒します。しかし、免疫力が極度に低下している人や高齢者などでは死亡する場合も起こります。

 尚、肺炎の診断で治療を行っても、肺の影像に異常が消えないバアには、肺がんや肺結核などの肺炎以外の重篤な疾患が隠れている場合もあります。その検査や診断、治療には更に長い期間を要することもあります。

想定される原因微生物と抗菌薬選定
肺炎区分 推定原因微生物 治療薬
市中肺炎 肺炎球菌  ペニシリン、マクロライト、セフェム系
インフルエンザ菌  ペニシリン、ニューキノロン、第三世代セフェム
マイコプラズマ  テロラサイクリン、マクロライト
クラミジア  テロラサイクリン、ニューキノロン
ミレリグループ連鎖球菌  ペニシリン、マクロライト、セフェム系
レジオネラ  マクロライト、テトラサイクリン、ニューキノロン、リファンピシン
黄色ブドウ球菌  第一世代セフェム、耐性菌にはバンコマイシン
院内肺炎 緑膿菌  第三世代セフェム、カルバペネム、モノバクタム
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)  バンコマイシン、テイコプラニン、ニューキノロン
緑膿菌以外のグラム陰性細菌
クレブシエラ  第二・第三世代セフェム系、アミノ配糖体


肺炎の予後はどうですか? ◆〔肺炎〕の予後の説明です。
肺炎の予後

 日本での原因別死亡率で、肺炎は4位に位置していますが、肺炎で死亡する人の92%は65歳以上の高齢者であることが特徴的です。

 肺炎を発症部位で大きく分類すると、肺胞性肺炎と間質性肺炎とになります。ごく一般的な肺炎は、肺胞性肺炎ですが、適切な治療を行えば、予後は悪くはありません。

 しかし、間質性肺炎は、予後のよくない肺炎であり、たとえ適切な治療を行った場合でも、発症後5年目の生存率は約36%、10年目には約20%程度となります。直接の死因は、感染時からの急性増悪や、呼吸状態の悪化による呼吸不全、肺がんを合併するなどがあります。