眼瞼痙攣の治療方針
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現在、眼瞼痙攣の真の原因が分かっていないために根治する治療法はありません。従って、現時点での眼瞼痙攣の治療法は、症状を抑えたり、軽くしたりする対症療法となります。
眼瞼痙攣による羞明(眩しさ)を軽減する日常的な方法としてサングラスを用いると、少しでも苦痛を和らげる効果はあります。
しかし、このような方法だけでは現実的な苦痛を取り去ることは不可能で、どうしても積極的なな治療が必要です。現在、用いられる対症療法としては「薬物療法」「手術療法」および「ボツリヌス療法」などがあります。
ボツリヌス療法は、ごく微量のボツリヌス毒素を患部に注射する治療法で、90%以上の患者に対して着実な効果が認められている新しい治療法となっています。
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薬物療法
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薬物療法は、人工涙液の点眼により目の症状を緩和する治療を行ったり、抗痙攣薬・抗コリン製剤・抗うつ薬・抗パーキンソン薬などの神経の興奮を鎮静させるような内服薬による治療法です。
これらの治療法は、効果が不十分であり、かつ不安定であったりしてとても完全な方法とはいえません。一時的には症状が軽減されても再発する可能性が高く、しかも副作用として顔面神経麻痺や聴力障害などの合併症が現れることがあるなど問題点の多い治療法です。
これらの治療法に掛かる費用は安価ですが、眼瞼痙攣の治療薬としては、健康保険の適応にはなっておりません。
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手術療法
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眼瞼痙攣の手術療法は、障害の出現している眼輪筋などの筋や神経の一部を切除する手術法で、外輪筋や神経を切除してしまうので一定の効果は期待できますが完全ではありません。いったん手術してしまえば、その部分に関してだけは再発の心配はありません。
しかし、顔の表情を豊かにする眼輪筋などの一部を失うことで、手術後に多少ながら容姿が変わってしまう恐れがあります。特に女性の場合では、顔が無表情になるなど問題が残るかも知れません。
手術療法では、この他の方法として顔面神経に接触する血管の位置をずらしてしまう「開頭手術(微小血管減圧術)」が行われることがありますが、成功率は50~70%程度とされ、これも完全な方法ではありません。この手術を施しても、神経の過敏性はそのまま残っているので、依然として痙攣が治まらないこともあります。
手術療法では、更に脳外科的手術を行うこともありえますが、お勧めはできません。
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ボツリヌス療法
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薬物療法が効果を発揮しない場合や、手術療法を避けたい場合には、近年開発された「ボツリヌス療法」という優れた治療法があります。この治療法は「ボツリヌス毒素療法」とか「ボトリックス療法」などとも呼ばれます。
ボツリヌス療法では「ボツリヌスA型毒素」という毒素を有効成分とする新しい治療薬で、このごく微量を眼瞼部・眼窩部の数か所に注射することにより、神経筋伝達を阻害し、持続的な筋弛緩作用をもたらすことができます。ボツリヌス毒素はボツリヌストキシンとも呼ばれます。
ボツリヌス毒素は1977年に米国において斜視治療としてはじめて臨床応用され、その後、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療に展開された医薬です。日本では眼瞼痙攣治療薬として1996年に保険適応が承認されました。更に、2000年には片側顔面痙攣治療薬としても効能追加されました。毒素を使用するため、一定の講習と実技をマスターした登録医師だけに使用が許可されています。
ごく微量のボツリヌス毒素の筋肉への注射は「ボトックス注射」と呼ばれています。
このボトックス注射をまぶたの皮下の筋肉に行うと、運動神経筋接合部で神経末端から神経伝達物質が放出されることを阻害します。これにより、異常な神経の興奮が眼輪筋へ伝達されるのを遮断してしまうので、結果として痙攣発作の出現が抑制されます。
治療効果は、ボトックス注射後1週間くらいから現れ、1か月ころに最大となり、徐々に効果が弱まりながら3~4か月間持続します。ボツリヌス毒素で障害を受けた神経は、3~4か月すると再度枝を延ばして筋肉に到達するようになるためです。
注射後3~4か月して、効果が弱まり症状が再発する場合は、再度ボトックス注射を繰り返します。
人体の免疫機構の作用で、投与したボツリヌス毒素の総量が2000単位以上になると、ボツリヌス毒素に対する抗体が産生されるようになり、毒素の効果が無くなり症状を抑えることができなくなります。
注射一回あたりに投与される毒素の量は最大30単位くらいですが、長年月にわたりこの療法を繰り返すためには、注射と注射の間隔はできるだけ長くとり、注射量も必要最小限に抑えて、抗体の産生を防ぐことが重要です。
現時点で、ボトックス注射は最も優れた治療法ですが、毒素の投与量が過剰だったりすると、まれに物が二重に見えたり、夜間睡眠時に瞼が閉じにくくなったり、流涙、眼の乾燥感、眼瞼下垂、頭痛、めまい、発疹、全身の筋力低下などの副作用が出ることがあります。これらは、一時的な現象です。
しかし、滅多にないことですが、極度に強いアレルギー反応が出現する場合には、この療法は中止するしかありません。
先に述べたように、ボツリヌス毒素療法は、許可された施設や医師が限られていますので、最寄の施設などの情報は「眼瞼痙攣電話情報センター(電話:0120-611-094)」で確認してください。(受付時間:月曜~金曜の午前9時~12時、午後1時~5時、祝祭日は受け付けない。)
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