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〔腎尿管結石〕

 〔腎尿管結石〕あるいは〔腎臓結石〕とは、腎臓や尿管に結石ができる病気です。

 発生する結石の約8割はカルシウム結石ですが、リン酸マグネシウムアンモニウム結石や尿酸結石、シスチン結石などもあります。

 腎尿管結石は、近年増加傾向にあり、日本人の20人に1人は一生の間に経験するといわれています。

 小児には滅多に起こりませんが、20~50代の人に多く発症します。発症率は男性に多く、女性の二倍ほどあります。


 腎尿管結石には、結石ができた身体の部位により、次のような種類に分けられます。

  ・腎杯結石
  ・腎盂結石
  ・尿管結石
  ・膀胱結石
  ・尿道結石


 これらの結石の中で、腎杯結石と腎盂結石とを合わせて、腎臓結石とか腎結石と呼んでいます。また、尿道結石は、尿路結石とも呼ばれます。

 腎臓にできる結石は、それ自体では自覚症状は出ませんが、これが尿管に落ちると、「疝痛発作」と呼ばれる強烈な痛みを発します。

 痛みは長くは続かず、1時間くらいで沈静化するのが普通です。また、結石が尿管内を移動すると、疝痛発作が繰り返し起こります。

腎尿管結石


どんな病気ですか? ◆〔腎尿管結石〕〔腎臓結石〕とは、一体どんな病気なのか分かります。
腎尿管結石とは

 腎尿管結石あるいは腎臓結石は、腎臓や膀胱および尿路系に沈着するいろいろな物質の結晶からなる石ができる病気で、石ができた状態、および各部位に石が詰まってしまった状態をいいます。腎尿管結石には、結石が出きる部位による分類と、できる結石の成分による分類とがあります。

 日本人の場合の腎尿管結石の発症は、95%以上は「上部尿路結石」と呼ばれるもので腎臓および尿管にできる結石です。残りの5%未満は、「下部尿路結石」と呼ばれるもので、膀胱や尿道にできる結石です。

腎尿管結石の種類

 腎尿管結石(腎臓結石)は、尿路系に沈着するいろいろな物質の結晶からなる石で、それが出きる部位による分類と、できる成分による分類とがあります。

腎尿管結石の種類
部位による分類

 腎臓および尿路の中で結石はどこにでもできます。それぞれの結石が出来た部位ごとに結石の名称がつけられています。

 結石は、腎臓、尿管、膀胱および尿道のどこにもできますが、腎臓と尿管にできたものは「上部尿路結石」と呼ばれ、発生数全体の95%以上を占めています。膀胱や尿道にできたものは「下部尿路結石」と呼ばれ、発生数全体の5%弱程度です。

腎尿管結石の部位による種類
腎臓結石・腎結石

 腎臓結石(腎結石)は、腎臓内部にできた結石の総称で、できる部位により、「腎杯結石」と「腎盂結石」とがあります。

尿管結石

 腎臓から膀胱までの間を繋ぐ尿路である尿管にできた結石は、「尿管結石」と呼ばれます。

膀胱結石

 膀胱内部に出来た結石が「膀胱結石」です。

尿道結石

 膀胱から外部に排泄されるまでの間の管を尿道といい、ここに出来た結石が「尿道結石です。


結石の種類による分類

 腎臓や尿路に結石ができるメカニズムは明確ではないのですが、できる結石の種類については、次のようなものがあります。

結石の種類による分類
カルシウム結石

 結石の大部分は、腎臓内で尿中のカルシウムがシュウ酸と結合してできるシュウ酸カルシウム結石です。リン酸カルシウム結石もあります。

尿酸結石

 痛風、高尿酸血症、高尿酸尿症などの人にでき易い結石です。尿が酸性になるとでき易くなります。尿がアルカリ性になると改善できます。

リン酸マグネシウムアンモニウム結石

 尿路感染症で出来やすい結石です。尿道の短い女性の方が男性より多くできる結石です。

シスチン結石

 遺伝性の病気に「シスチン尿症」というものがあります。これはアミノ酸のシスチンが尿に排出される稀な病気で、尿路に「シスチン結石」を形成することがあります。尿がアルカリ性になると出来にくくなります。




どんな症状ですか? ◆〔腎尿管結石〕の症状が分かります。
結石が出来た状態

 腎尿管結石の多くは、「上部尿路結石」といって、「腎臓内部」で形成され、「尿管内部」にもできます。最も多く結石が形成されるのは腎臓内部の「腎杯」と「腎盂」と呼ばれる部分です。

 腎臓内部に結石ができても、その状態自体では、ほとんど自覚症状が現れることはありません。尿検診などで尿に潜血があることを発見され、精密検査で結石が見つかることが多いです。

 腎杯頚部などは狭いために、ここに結石が形成されやすく、一旦結石が形成されてしまうとそこを通過しにくいために、腎杯内で大きく成長してくることがあります。こうなると、軽度の鈍痛を感じるようになります。

 腎盂についても尿管への移行部は、尿管の生理的狭窄部位のひとつであるため、腎盂に結石ができると成長して大きくなることがあり、同様に鈍痛を感じるようになります。

 腎盂の形に鋳型状の結石が形成される「サンゴ状結石」は、腎結石の終末状態です。

結石の降下・移動

 結石がある程度の大きさまで成長し、それが元の発生位置から下部に向かって移動することがあります。こうなると、腎尿管結石による典型的な症状が現れます。

 突然、疝痛(せんつう)とよばれる、強烈に激しい差し込むような痛みが脇腹を襲います。激しい吐き気や嘔吐の症状の他、血尿がでたり、下腹部や大腿部までにも痛みが走ります。あまりの痛みに耐え切れず、エビのように身体を曲げて倒れこんでしまいます。

 移動した結石が小さい場合には、結石は尿とともみ下流に流れて行き、痛みも下腹部へと移動してきます。膀胱付近の尿管まで流れてくると、排尿しようとしても出にくかったり、残尿感が現れます。

 小さい結石であれば、なんとか膀胱まで降下してくれば、ほとんど自力で排泄されます。しかし、ちょっと大きめな結石になると、腎盂や尿管の途中で止まってしまいます。こうなると、痛みは徐々に弱くなりますが、そのまま放置してしまうと、今度は尿がせき止められて流れなくなり、腎臓が機能しなくなる恐れがでてきます。

 この状態は、尿路結石といわれ、放置すれば極めて危険な状態に陥ります。


原因は何ですか? ◆〔腎尿管結石〕の原因や発症の仕組みが分かります。
基本的原因

 通常、尿の中には、結石構成成分であるカルシウム、シュウ酸、尿酸などが過飽和状態で存在しています。このような状態のところに、更に多くの結石構成成分が排泄されてくると、もはやそれ以上、液体として蓄積することができなくなり、不安定化飽和状態を経て、急激に結晶が形成されてしまいます。

 一方で、腎臓の中には、結晶の形成成長を抑制する成分として、クエン酸やマグネシウムなど、結晶化を抑制しようとする物質が存在しますが、これらが不足すると、結石は形成され易くなります。

 健常人であれば、いったん結晶が形成し始めても、尿中にこのような結晶化抑制物質が豊富に存在すれば、多くは小さい結晶のまま排泄されてしまいます。逆に不足すれば結晶は成長してしまうのです。

結晶成長因子

 生活習慣によっても結石はでき易くなることが知られています。結石生成の基本原理から推察されるように、尿の中のカルシウムやシュウ酸が多いと、結晶化し成長して結石となります。

 このような状況を作り出すひとつの要素は、飲料水摂取量が少なく尿が濃縮された場合や、カルシウムやシュウ酸を多量に含有する飲食物を摂取した場合などです。

 尿の「pH」も重要な因子で、尿が酸性になると尿酸やシスチン結石ができやすくなり、本来的にシスチン結石は先天異常のシスチン尿症に合併するのですが尿中シスチンの増加とpH低下(酸性化)がその原因とされています.

 尿の流れを阻止したり、停滞を来たす尿路通過障害の病気やそれによる長期臥床も原因となります。感染症に伴うアルカリ尿では、リン酸系の結石ができ易くなります。

 生活習慣においては、次のような点には注意が必要です。

 ・偏食が多く、一度に多く食べる。
 ・動物性蛋白、砂糖、牛乳摂取が多い。
 ・経口水分摂取量が少ない。


診断はどうなりますか? ◆〔腎尿管結石〕の検査方法や診断方法が分かります。
一般的腎尿管結石検査

 腎尿管結石が尿路中を移動したり、詰まってしまい激しい疼痛症状があれば、痛みの状態と血尿などからおおよその診断が可能です。

 より詳しい、腎尿管結石の検査は、尿沈渣、尿潜血(顕微鏡検査)、腹部X線単純撮影(KUB)、腹部超音波、X線CTなどの検査方法により行われ診断されます。

 尿検査で、肉眼で見えるほどの赤い血尿があればもちろんのこと、顕微鏡で見て分かる場合も含めて血尿があり、激しい疼痛もあるなら、腎尿管結石の疑いが高くなります。

 レントゲン検査や腹部超音波検査で、結石そのものが映っていたり、「水腎症」と呼ばれる腎盂が膨らんでいる症状があれば、腎尿管結石と診断されます。

上部尿路結石

 上部尿路結石(腎臓内の結石)の検査では、超音波検査が有用です。患者を横ばいまたは仰向けに寝かせて、超音波検査機で腎臓を観察すると、腎盂・腎杯の位置にキラキラした白いエコー像と音響陰影とが見られます。

 結石が腎盂に嵌まり込んでいる状態で、激しい疼痛を起こしている状態ならば、腎盂や腎杯が膨張する「水腎症」を呈します。腎盂・腎杯の全体に結石が形成成長している「サンゴ状結石」では、腎尿管膀胱部単純X線検査(KUB)でも明確に診断できます。

 結石の位置や大きさの確定、水腎症の有無の判定のために、ヨード系水溶液造影剤を使用しての「静脈腎盂造影」を行うことがあります。この検査では、造影剤へのアレルギー反応を起こす人がいるので、事前にアレルギー反応の検査が必要です。

 CT検査をすれば、結石の存在する位置を三次元的情報として確認することが可能です。X線撮影では写らないX線陰性結石の尿酸結石やシスチン結石に対しても、CT検査は有用です。

下部尿路結石

 下部尿路結石の検査も、腎臓結石の場合と同様に、疼痛などの症状、尿検査、腹部超音波、静脈性腎盂造影、CT検査で行います。


治療はどうやりますか? ◆〔腎尿管結石〕の治療方法が分かります。
上部尿路結石

 腎尿管結石の治療法には、鎮痛などの応急処置のための「対症療法」、自然排石を促進するための「待機療法」、尿酸結石やシスチン結石に対する「溶解療法」および、「外科的治療」とがあります。

 結石の状態にもよりますが、直径68mm以下の結石、特に直径5mm以下の結石であれば、自然排石が可能とされます。

 結石は再発しやすい病気なので、破砕・排石した後でも定期的な確認が必要です。

上部尿路結石の治療
対症療法

 現に激しい疼痛があるときには、「鎮痛薬」の投薬をし、同時に「鎮けい薬」を使用しながら「結石形成抑制薬」などを投与します。

 鎮痛薬には、「インドメタシン」の坐薬や「ペンタゾシン」の注射が行われます。

待機療法

 待機療法は、自然排石を目指すものなので、多量の水分摂取が最も重要な治療法となります。吐き気があり、嘔吐が激しいときや脱水傾向がある場合には補液を行います。

 更に、待機療法では、縄跳びなどの適度な運動により身体的刺激を与えることも有効です。

 何らかの尿路感染症が原因でできる結石の自然排石を目指す場合には、原因となっている病原菌の特定を行い、それに合った抗生物質などの投与を行います。

溶解療法

 部分的に自然に排石された場合で、その結石の分析を行い、もしも「尿酸結石」であると判明した場合には、キサンチンオキシダーゼ阻害薬である「アロプリノール」を投与します。同時に尿のアルカリ化を図る目的で、「クエン酸製剤」も投与します。

 シスチン結石の場合には、先ずは尿量増加と尿のアルカリ化を行い、更に「ペニシラミン(メタルカプターゼ)」などの投与でシスチンの溶解性を高めます。

外科的治療法

 結石の大きさが68mm以上となり、自然排石が不可能な場合には、「体外衝撃波破石術(ESWL)」により結石を砕きます。

 腎杯・腎盂全体に広がってしまった「サンゴ状結石」の場合には、「経皮的腎砕石術(PNL)」などの内視鏡手術が行われます。

 更に、症状が深刻な場合などには、「腎切石術」「腎盂切石術」などの外科手術を行います。最悪の場合には、腎摘出術を行う場合もあります。

尿管結石の嵌頓処置

 尿管結石が尿管に完全に嵌まり込み完全閉塞し、腎盂腎炎を併発してしまった場合には、先ず抗生物質を投与して、結石の嵌まり込みを除去します。

 抗生物質の使用で、結石の嵌まり込みが改善せず、発熱も続く場合には、尿管に「ステント」というシリコン製の細い管を挿入・留置することがあります。これは主に、「菌血症」や「敗血症」などを防止するためです。

 尿管へのステントの挿入が困難な場合もあるので、その場合には、皮膚から腎盂までのバイパスチューブを挿入する「経皮的腎瘻増設」を行うこともあります。


下部尿路結石

 下部尿路結石の治療も基本的なところは腎結石の場合と同様です。鎮痛のための「対症療法」や自然排石のための「待機療法」、「溶解療法」などを行います。

 結石の状態にもよりますが、直径68mm以下の結石、特に直径5mm以下の結石であれば、自然排石が可能とされます。

 尿管が完全に詰まるような状態に対しては、「ステント挿入」や「超音波破砕」「外科的手術」を行うこともあります。

 結石は再発しやすい病気なので、破砕・排石した後でも定期的な確認が必要です。

下部尿路結石の治療
対症療法

 現に激しい疼痛があるなら「鎮痛薬(インドメタシン坐薬やペンタゾシンの注射)」「鎮けい薬」「結石形成抑制薬」の投与を行います。

 また、十分な水分摂取、補駅を行います。適度な運動も有用です。尿路感染症を伴っている場合には「抗生物質」を投与します。

ステント挿入

 尿管が両側ともに完全に詰まってしまった「両側尿管結石嵌頓(かんとん)」の場合には、尿管ステントや腎瘻造設(バイパス増設)が必要なこともあります。

超音波破砕

 結石が中部尿管よりも腎臓に近い位置にある場合には、「体外衝撃波砕石術(ESWL)」を行います。

 膀胱側に近い下部尿管結石の場合には、「経尿道的尿管砕石術(TUL)」を行います。尿道から尿管口を経て尿管内まで内視鏡を挿入し、結石を観察しながら結石の破砕する手術です。