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体の病気

 

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〔身体の病気〕

◇血液・造血器の病気◇

出血性疾患


 〔出血性疾患〕とは、出血傾向と止血困難を特徴とする一連の病気をいいます。ちょっとしたことで出血しやすく、一度出血が始まるとなかなか止まらない状態となります。

 出血性疾患の典型的な症状は、次のような形で起こりやすくなります。

 ・歯ぐきからの出血
 ・鼻血
 ・血尿
 ・月経過多
 ・関節の内出血


 本来、出血があった場合に、血液中の血小板と凝固因子とが協力し合ってすぐに止血する作用があります。しかし、次のような異常がある場合には、出血傾向が強くなり、止血作用がうまく働きません。

 ・血管異常
 ・血小板異常
 ・凝固因子異常
 ・線溶異常


 これらによる出血傾向には、いずれも先天性と後天性のものがあり、先天性では単一の因子の異常で発症し、後天性では複数の因子の異常が合併して発症することが多くなります。

 出血性疾患では、頭蓋内などで出血が起こると致命的になるので、出血傾向を予知して出血を未然に防止することが非常に重要となります。

出血性疾患の原因 ◆主な出血性疾患の原因には、四つの異常があります。
出血性疾患の原因

 出血性疾患と呼ばれる出血傾向と止血困難をきたす病気の原因には、既に示したように四つがあります。

 ・血管異常
 ・血小板異常
 ・凝固因子異常
 ・線溶異常

 主な出血性疾患には、次のように非常に多くの病気があります。

 ・血小板減少性紫斑病
 ・単純性紫斑病
 ・血管性紫斑病
 ・血小板無力症
 ・壊血病
 ・血友病

出血性疾患の原因となる異常
血管異常

 血管出血には先天性・遺伝性のものと後天性のものとがあります。遺伝性で皮膚や粘膜の毛細血管が拡張しやすいものでは鼻からの出血が多く見られ、青年早期に発症します。遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)が有名です。

 また、後天性のものでは、シェーンライン・ヘノッホ症候群と呼ばれるものなどがあり、点状出血、紅斑、紫斑、関節痛、腹痛、血尿などの急性症状が現れ、小児に発症しやすい特徴があります。

 なお、動脈瘤破裂や、心筋梗塞、脳卒中、脳梗塞などによる急性の出血による疾患は、脳や心臓、血管などの臓器の疾患として別項目が設定されていますので、このコーナーでは含めておりません。

血小板異常

 血小板は、血管の損傷に対して傷口を塞ぎ、出血を止める作用を持っています。この血小板の異常には、血小板減少症と血小板増加症とがあります。

 血小板数が極度に減少すると、出血しやすくなります。逆に極度に多くなると血液が固まり易くなり血栓症の危険性が高まります。血小板の機能に異常が起こると、血小板数が十分あるのに、止血効果が少なくなることがあります。

 血小板異常では、皮膚や粘膜からの出血、小さな傷からの出血など点状出血が見られます。

凝固因子異常

 凝固因子異常には、先天性凝固障害と後天性凝固障害とがあります。先天性凝固障害では、各凝固因子が先天的に欠如しているか、あるいは機能に異常がある場合に生じます。

 後天性凝固障害は、ビタミンK欠乏症や肝障害、凝固因子や血小板の少ない保存血液による大量輸血時、および特定の薬物などが原因で発症することがあります。

 凝固因子異常での出血では、小さな傷からの出血や点状出血は稀で、関節や筋肉の深部出血、斑状出血が多くみられます。

線溶異常

 血液には血液凝固因子が存在して、血液を凝固させて出血を止める作用があるのですが、一方で、固まった血栓を溶かして分解する線溶系(線維素溶解系)が存在します。普段は、これらの作用が微妙にバランスした状態にあります。

 ところが、特殊な病気になると、身体各部で凝固因子が消費され枯渇してしまうために、線溶系が亢進して止血できなくなることがあります。このように凝固系と線溶系とのバランスが崩壊すると出血傾向を示すのです。



こんな病気があります ◆「出血性疾患」には、こんな病気があります。
血小板減少性紫斑病

 血小板減少性紫斑病は、血液中の血小板が減少し皮膚に紫斑ができる病気です。この病気になると、歯ぐきからの出血、鼻血、黒い便、血尿、月経過多などの症状が起こります。免疫機能の異常により、血小板に対する自己抗体ができることで、脾臓で血小板が破壊され、血小板の数が減少してしまうのが原因です。

 この病気の発症年齢は、小児では5歳未満が最も多く、次いで5~9歳、10~14歳に多くみられる病気です。成人では20歳代後半~40歳代後半に多く、男女比では子供では同数ですが、成人では女性が男性の3倍多く発症します。人口100万人当りの発症数は約11.6人です。

単純性紫斑病

 一般に、紫斑病は、何らかの原因で出血しやすく、皮膚や粘膜、内臓などに大小の出血斑を生じる病気ですが、単純性紫斑病は、毛細血管の抵抗が減少したか透過性が高まったために出血を起こす病気で、症状は比較的軽度です。

 全身症状はなく、主に下肢にポツポツした米粒大の点状の出血斑が多数散在して現れます。特別な痛みなどの自覚症状はなく、症状は3~4週間続くことがあります。

 特に女性に生じ安く、過労時や月経時などに皮下に紫斑が出ます。

血管性紫斑病

 血管性紫斑病は「アレルギー性紫斑病」や「シェーンライン・ヘノッホ紫班病」「アナフィラクトイド紫班病」などの別名で呼ばれることもある病気です。

 血管性紫斑病には紫斑、腹部症状、および関節症状という三大症状があり、通常は数週間で改善します。しかし、その他の症状として腎障害を合併することもあり、重大な状態に至ることもあります。

血小板無力症

 血小板無力症は、先天的に血小板凝集因子が欠損した疾患であり、血小板機能異常のために出血時間が著明に延長する病気です。この病気では出血時間は延長しますが、血液凝固因子は正常のため、凝固時間が延長することはありません。

 血小板による一次止血が遅れて出血時間が延長します。皮膚粘膜出血が主体で、幼児期から出血傾向がみられ、皮膚の出血斑、鼻からの出血、歯肉出血などが止まり難くなります。

 血小板無力症の治療では、血小板輸血が唯一の治療法です。

壊血病

 壊血病は、体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患で、「ビタミンC欠乏症」とも呼ばれる病気です。ビタミンCの欠乏でコラーゲンの生成などができなくなり、進行すると血管損傷により出血します。

 成人のビタミンCの必要摂取量は1日に 100mg 程度とされていますが、妊婦や授乳期の女性ではもっと多く必要となります。また、人口栄養の乳児では不足することがあります。

 全身の倦怠感や関節痛、歯肉からの出血、体重減少、傷が治り難くなったり、感染症に罹り易くなったり、うつのような症状などとして現れます。症状は成人と乳幼児では多少異なります。

血友病

 血友病は、血液中の血液凝固因子の一部欠損や欠落で血液の凝固に異常が起こる病気です。通常なら怪我をしても、やがて血液が固まり止血しますが、血友病では血液を凝固させる成分がほとんどないために、一度出血すると血が止まり難くなります。

 性染色体であるX染色体上の血液凝固因子のどれに欠損や欠落があるかよって血友病Aと血友病Bの二種類に分けられます。

 血友病AもBも症状は同じで、筋肉内や関節内で内出血しやすく、進行すると変形や拘縮を来たすこともあります。一度止血しても、数日後にまた出血するなどの危険性が高いです。