子宮筋腫の治療
|
子宮筋腫は、一般に良性腫瘍なので、症状が比較的軽度で日常生活に特別な支障がない場合には、とりあえず定期的に経過を観察するだけの場合があります。何らかの治療が必要な場合でも、症状が軽度であれば「薬物療法」や「対症療法」により対応します。
一方、筋腫が握りこぶし大以上に大きく生育していたり、数が非常に多くなっていて、症状が激しくなっている場合には「手術療法」が行われます。その他、日常生活・食生活の改善なども重要となります。
子宮筋腫はがんではないので、たとえ月経多過などのような不快な症状があったとしても、緊急を要する病気ではありません。このため、閉経まじかの女性では、薬物療法を続けて腫瘍を小さくし、そのまま閉経を待ち、手術をしないで済ますという手段もあります。
|
子宮筋腫の薬物療法
|
子宮筋腫の薬物療法は症状が比較的軽い場合の処置で、通常「ホルモン療法」および「対症療法」があります。
ホルモン療法 |
子宮筋腫のホルモン療法では、飲み薬の服用や注射などで女性ホルモンの分泌を抑制する療法です。処方されるのは「プセレリン」や「タナゾール」などの医薬で、子宮内膜症の治療にも用いられる合成ホルモン剤です。
これらの医薬は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を抑制して、人工的に一種の閉経状態を作り、子宮筋腫を縮小させようとする方法です。
|
対症療法 |
対症療法というのは、症状に応じてその症状を緩和したり、無くすことを目的とした処置です。これらの処置はあくまでも症状を一時的に停止する療法なので、薬の使用を中止すると症状は再発しやすいです。
対症療法は、子宮筋腫の大きさが比較的小さく、症状も軽い人や、更年期の女性などに適した療法です。一般に、閉経以降の女性では加齢とともに筋腫は萎縮し小さくなる傾向があるので、処方を中止しても再発しないこともあります。
止血剤 |
月経過多、不正出血などの症状を和らげます。
|
鎮痛剤 |
月経痛の症状を緩和します。
|
増血剤・鉄剤 |
出血多過による貧血の症状を抑えるために鉄分の補給をします。
|
|
|
子宮筋腫の手術療法
|
子宮筋腫が想像以上に大きく生育していて、それにより周囲の臓器を圧迫したり、多くの症状や苦痛が現れている場合には、手術療法が必要なことがあります。
症状が激しい場合や、月経多過による出血や貧血、激しい月経痛、不妊症、早産、流産などが心配されるときに、手術療法は女性としてのQOL(Quoliry of life:生活の質)向上のためにも必要です。手術するにあたり、事前に薬物療法により筋腫を小さくしておいてから手術する場合もあります。
手術療法には「筋腫核手術」および「子宮全摘出手術 」とがあります。
筋腫核手術 |
これは子宮筋腫のみを摘出する手術です。筋腫のみを摘出するので、将来妊娠を希望する女性、妊娠の可能性のある女性には適しています。
しかし、実質上は、筋腫核を完全に切除することは不可能なので、目に見えないような小さな筋腫がある場合、数年後に再び手術しなければいけないことも起こります。
|
子宮全摘出手術 |
これは子宮をすべて取り去ってしまう手術です。妊娠や出産を終えた女性で、今後妊娠を希望しないかその可能性がない女性に適した手術です。
この手術は子宮自体を取り去るという根治療法であり、それまで辛かった月経に伴う多くの症状から完全に解放され、再発もありえません。また、子宮がなくなることから、子宮がんに罹る可能性もなくなります。
子宮全摘出手術の方法には「腹式全摘出術」「膣式全摘出術」という二つの方法があります。
腹式全摘手術 |
この手術の方法は開腹して筋腫を切除するものです。開腹しての手術なので、筋腫の状態を直接的に観察しながら手術ができるメリットがあります。また、他の臓器への癒着などの観察もできるのも利点となります。
開腹するために、手術後の回復には時間がかかり約2週間の入院加療が必要です。
|
腟式全摘手術 |
この手術は、膣から子宮を引き出して摘出する手術方法です。
開腹しないで手術するので、手術後の回復も早く3~7日程度の入院加療で済みます。
|
|
|
日常生活の改善など
|
月経多過などの症状があると、貧血になることがあるので、そのようなときは、鉄分を多く含む食品などを多めに摂取します。レバー、赤身の魚(カツオ・マグロなど)、貝類、海藻類、肉類、小魚、緑黄色野菜(ニンジン)などが適しています。
|