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体の病気

 

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〔身体の病気〕

◇消化器の病気◇

逆流性食道炎


 何かの原因で、胃液や胆汁が食道にまで逆流して、食道の粘膜に炎症を起こしてしまう病気が〔逆流性食道炎〕です。これが更に酷くなって粘膜が深く傷ついてしまうと〔食道潰瘍〕となります。

 典型的な症状は、食物を摂取したあとに胸やけや胸がつかえるような感じがします。特に脂っこいものを食べると胸やけがひどくなります。胃もたれや、喉に何かがつかえたような違和感があるようなら、逆流性食道炎の恐れがあります。


 直接の原因は、食道と胃の境目にある噴門部の括約筋が緩んでしまい、胃液が食道側に逆流して起こります。

 逆流性食道炎の症状を引き起こす誘引は、いくつかありますが、胃酸の逆流によるもの、細菌によるもの、過度の飲食などによる物理的刺激などです。


 逆流性食道炎は、食生活の欧米化に伴って増加傾向にあります。高齢者では、筋力が低下するために、若い人よりは発症しやすく、特に60歳以上の高齢者には多く発症します。また、高齢者の中でも男性よりは女性の方が多いといわれています。

 治療は、薬物療法で行うのが普通ですが、正しい日常生活を習慣づけることや、ストレスを避けること、禁煙すること、身体を締め付けすぎたりしないことなども重要です。

逆流性食道炎はどんな病気ですか? ◆「逆流性食道炎」とは、一体どんな病気なのかの説明です。
逆流性食道炎は
どんな病気ですか?

 逆流性食道炎の直接的原因は、食道と胃の境目にある噴門部の括約筋が緩んでしまい、胃液や胃の内容物が食道側に逆流してしまい、食道の粘膜に炎症を起こことです。この病気は「胃食道逆流症」と呼ばれることもあります。

 胃液や胃で消化中の内容物には、強い酸性分が含まれているので、これが食道に逆流すると、食道には、胃酸の消化力を防御する機能はないので、粘膜は容易に炎症を起こしてしまいます。炎症がひどくなると、潰瘍を生じて、出血や狭窄に発展することもあります。狭窄があると、食べ物のつかえ感を感じるようになります。


逆流性食道炎はどんな症状ですか? ◆「逆流性食道炎」の症状の説明です。
逆流性食道炎の症状

 逆流性食道炎の典型的症状は、「胸やけ」「嚥下障害」および「呑酸」の三つで、逆流性食道炎の三大症状ともいわれています。この病気では、一般に「胸がチリチリ焼けるような」症状である前胸部の灼熱感が現れます。このほかにも「咳」や「胸痛」などを伴うことがあります。ひどくなると、出血を伴い、貧血を引き起こすこともあります。

 なお、逆流性食道炎の合併症として、「バレット食道」という病気を引き起こすことがあります。バレット食道は食道腺癌の前癌状態とされ、無治療では高確率で食道癌に発展する可能性があります。バレット食道は日本では低く、北米やヨーロッパでは多いといわれ、これが原因での食道癌は全食道癌の3~6割を占めています。

逆流性食道炎の症状
胸やけ

 胸やけは、逆流性食道炎の三大症状のひとつで、主に食後などに、胸に熱いものがこみあげてくるような感じを伴います。また、みぞおちや上腹部に痛みが起こります。多くの場合、げっぷがでます。

嚥下障害

 嚥下障害(えんげしょうがい)も、逆流性食道炎の三大症状のひとつで、喉が詰まり、食物を飲み下しにくくなります。

呑酸

 呑酸(どんさん)も、逆流性食道炎の三大症状のひとつで、食事中や食後などに横になったときなど、前屈したときなどに、酸っぱいもの(胃酸)や苦いものが口まで上がってくきます。

せき

 激しくせきこんでしまうことがあり、このとき胃酸の飛沫が肺に吸い込まれると喘息の引き金になることがあります。声が枯れることがあります。咽頭部・喉の痛み、違和感、不快感も伴います。

胸痛

 肋間神経痛様の胸痛や胸部がしめつけられるような痛みを感じることがあります。



逆流性食道炎の原因は何ですか? ◆「逆流性食道炎」の原因や発症の仕組みの説明です。
逆流性食道炎の原因

 この病気の直接原因は、何らかの原因で逆流した胃酸が、食道の粘膜を荒らすことで起こります。胃酸の逆流を引き起こす原因はさまざまです。胃酸の過剰分泌や食道機能の低下などのような身体的原因と、腹圧を高めるような衣服を着るなどの外部的原因とがあります。いずれにしても、逆流が起こるのは特定の原因だけではなく、いくつかの原因が重なって引き起こされます。

逆流性食道炎の原因
胃液の逆流を防ぐ機能の低下

 本来、食道と胃の接合部は、括約筋と呼ばれる筋肉が胃の内容物の逆流を防ぐようになっています。しかし、食道裂孔ヘルニアという現象や、胃の手術、加齢による機能の低下が原因となり、胃酸の逆流が防げなくなります。

食道や胃の蠕動運動の低下

 一旦食道へ逆流してきた胃液を胃に送り返すことができず、食道内に留まってしまうことで起こります。

腹圧の上昇

 肥満やベルトなどによる腹部の締め付け、しゃがんだり、重いものを持つことで力むと胃が圧迫され腹圧が上昇し、胃液を逆流しやすくなります。妊娠や便秘による腹圧の上昇も一つの原因になることがあります。

胃液の分泌増加

 何らかの原因で、胃液の分泌が多くなると、一旦逆流が起こると食道粘膜が損傷されます。肉類や脂分の多い食品を日常的に摂取する欧米型食生活では、胃の活動が活発になり過ぎて胃酸の分泌量が増加し、胃酸の逆流も起きやすくなります。食物の過剰摂取も同様なことが起こります。

食物摂取量の増加

 暴飲暴食や脂肪の多い食物の摂取、アルコールの過剰摂取、ストレスなどが胃の働きを悪くし、胃と食道の問にある「噴門」が開きやすくなります。そこから空気がでれば「げっぷ」となり、胃液がでれば「逆流」となります。



逆流性食道炎の診断はどうなりますか? ◆「逆流性食道炎」の検査方法や診断方法の説明です。
逆流性食道炎の診断

 逆流性食道炎の診断は、症状から想像することができますが、現実に逆流が起こっていれば、食道内は酸性になっているはずであり、食道内のpH検査を行って確定診断します。

 また、食道がんの疑いとの分離のために、内視鏡検査(胃カメラ)を行うのが普通です。内視鏡検査で、食道の発赤やびらんが認められれば、逆流性食道炎と診断されます。

 バリウムによるX線検査(食道造影)も行われますが、バリウムを飲み、体位変換しながら胃の中の造影剤が食道側に逆流するかどうかを観察します。バリウム法では軽症例の発見は困難です。

 内視鏡による観察結果で重症度を判定する方法として、「ロサンゼルス分類」と呼ばれるものが一般的に使われています。これを下表で示しますが、グレードNとグレードMCは日本独自の分類です。

ロサンゼルス分類
グレードN

異常が認められない正常粘膜

グレードMC

明らかな糜爛(びらん)や潰瘍がなく、発赤だけを認めるもの

グレードA

粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以内のもの

グレードB

粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以上で相互に癒合しないもの

グレードC

複数の粘膜ひだにわたって癒合し、全周の75%を超えないもの

グレードD

炎症部位が全周の75%以上にまたがるもの



逆流性食道炎治療はどうやりますか? ◆「逆流性食道炎」の治療方法の説明です。
逆流性食道炎の治療

 逆流性食道炎の治療には、次の四つなどがあります。

 ・生活習慣の改善
 ・薬物療法
 ・手術療法
 ・精神的治療法

逆流性食道炎の治療
生活習慣の改善

 逆流性食道炎の治療や緩和の最初に行うべきことは、悪い日常生活の改善です。食生活では、極端に欧米化した食生活を避け、食べる量も暴飲暴食を控え、胃への刺激が少ないものを腹八分目というのが安心です。

 食事では、脂肪分の多い食物、チョコなどの甘いもの、柑橘類、コーヒーや紅茶、香辛料、アルコール類、タバコなどは胃酸の分泌量を増やしたり、胃内での食物の停滞時間が長くして、逆流を起こしやすくします。

 食後すぐ横になると、逆流しやすくなるので、食後1~2時間は座って過ごし、寝た後で症状が強くなる人は、上体を少し高めにして寝ると緩和されます。また、寝るときの姿勢は右を下にするとよいといわれます。うつぶせ寝は駄目です。

 腹圧の上昇も、胃を圧迫して胃酸を逆流させる原因となるので、ベルトの締めすぎや、無理な姿勢で重量物を持たないなどが重要です。前屈みの姿勢、排便時の力み、肥満は勿論よくありません。

薬物療法

 薬物療法では、あくまでも症状を緩和する対症療法として、主に飲み薬が使用されます。使用される薬は「胃酸分泌抑制剤」「消化管運動機能改善剤」「制酸剤」「粘膜保護剤」などです。一般的には、症状に応じて、これらの薬を組み合わせて使用します。薬の服用は医師の指導に基づき用法・用量を正しく守ることが重要です。

 尚、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となるピロリ菌の除菌療法は、逆流性食道炎には効果はありません。

逆流性食道炎の薬物療法
胃酸分泌抑制剤

 ・最も効果が強いプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与
 ・H2ブロッカーの併用

消化管運動機能改善剤

 ・食道の運動機能を改善し、胃酸の逆流を生じにくくする。
 ・消化管の運動を活発にし、胃内食物の滞留時間を短縮する。

制酸剤

 ・胃酸を中和して症状を軽減する。
 ・速効性はあるが作用時間が短い。

粘膜保護剤

 ・食道の粘膜を保護する。
 ・炎症を起こした粘膜を修復する。


手術療法

 薬物療法で効果がない場合や重症のとき、外科的手術という方法もありますが、一般的ではありません。どうしても外科手術を行うときは、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの方法が採用されます。

精神科的治療法

 原因がはっきりしない場合には、ストレスによって発症する例が多くなるため、薬物療法に加えて精神科的治療も行うこともありますが、治療は長期間かかります。