ナルコレプシーの種類
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ナルコレプシーの基本的特徴には、次のようなよく知られた三つの発作症状があります。第一は〔睡眠発作〕で、耐え難い居眠り発作が三ヶ月以上も繰り返し出現します。第二は〔情動脱力発作〕で、感動したさいにがくんと力が抜けてしまう発作が出現います。そして、第三の発作は、眠りから目覚めや目覚めから眠りに入る変わり目に、レム睡眠が繰り返し出現する発作です。
第三の〔睡眠変わり目症候群〕とでも呼べるものには、〔入眠時幻覚〕や〔睡眠麻痺・金縛り〕〔夜間熟眠障害〕〔自動症〕、その他〔ナルコレプトイド性格変化症状〕などがあります。
なお、これらの症状は、すべてが同時に全部発症するわけではなく、単独に、あるいはいくつかが同時に時間をおいて発症するのが普通です。
睡眠発作
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日中、突然の耐え難い眠気発作。居眠りの繰り返し症状。場所や状況を選ばず、突然に眠り込んでしまう。
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情動脱力発作
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カタブレキシー症状。喜びや幸福感、愛情といった主に「陽性の情動」で感情が高ぶったときに起こる突然の脱力症状発作。全身の力が抜けてしまう症状で、身体が崩れ落ちるような状態になることもあるが、数分間で収まることが多い。
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入眠時幻覚
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睡眠直後に突然幽霊などが襲ってくるような幻覚。
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睡眠麻痺・金縛り
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睡眠中、恐ろしい悪夢を見て、心は目覚めているのに体が動かない、叫べないような発作。夢は鮮明に記憶される。
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夜間熟眠障害
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昼間は直ぐ眠るのに夜間に熟睡できない症状。
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自動症
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眠さを我慢していて、一瞬眠っても体はまだ直前の行動を続ける症状。
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その他
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眠気を我慢しているときの頭重や頭痛など。頻度が多くなると、ナルコレプトイド性格変化症状がでてくる。
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睡眠発作
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ナルコレプシー発症時の典型的症状が睡眠発作であり、日中、突然に耐え難い眠気に襲われ眠り込むようになります。「居眠りの繰り返し」症状は、社会生活に少なからぬ影響を与えます。
健常者が、自分の意思である程度睡眠をコントロールできるのに対して、ナルコレプシーの患者は、激しい睡魔のために、自分の意思とは関係なく発作的に眠りこんでしまいます。その時間は、ほんの数秒から、2、3分、10~30分などと様々で、一日に何回でも繰り返し起こります。
自分では目覚めていると思っていても、ほんの一瞬、2~3秒から1分以内ほど眠りに陥ることがあります。ほんの瞬間のことで、本人は眠ったという自覚はないのに、その間の記憶が飛んでしまい、何があったのか分からなくなることがあります。車を運転していて、気づいたら20メートル先を走行していたなどという感じになります。
極端な例では、歩いている時、食事中、車の運転中、上司との面談中、電話の最中、試験の最中、歯の治療時、床屋で散髪時などにも、短時間眠り込みます。
散髪時に居眠りする人は多くいますし問題とはなりませんが、会話中の上司が突然居眠りしてしまうと、この上司は部下の話を本気で聞いてくれているのかと不信感をかうこともあります。
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情動脱力発作 (カタプレキシー)
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情動脱力発作は、カタプレキシーとも呼ばれる症状で、嬉しさや怒りなどの感情が昂ぶった瞬間に突然起こる、脱力症状です。首・全身・ひざ・腰・ほほ・あご・まぶたなどの姿勢筋の力が急に抜けたようになります。
症状的には、周囲の人には気づかれない程度のちょっとした脱力感から、身体が崩れ落ちるような重症のものまであります。脱力発作自体は、数秒から数分で自然に回復しまが、そのまま眠り込んだり、幻覚を見たり、金縛りにあったりもします。発作の頻度はさまざまで、一日に数回から毎週数回などです。
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入眠時幻覚
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入眠時幻覚は、睡眠発作により睡眠に陥った際などの寝入りばなに、本当に体験しているような鮮明で現実感の強い幻覚を見る症状です。
入眠時幻覚では、幽霊などが突然身体の上に覆いかぶさってきたり、窓から忍び込んだ何者かが襲い掛かってきたり、化け物などの不気味なものが身体に擦り寄ってくるなどの幻覚が起こります。
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睡眠麻痺・金縛り
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恐ろしい悪夢は、強い恐怖心や不安感を誘引するので、心は逃げようともがいても、身体は麻痺してしまいどうしても動かすことができません。しかも、叫ぼうとしても声も出せなくなります。これが睡眠麻痺と呼ばれる金縛り状態です。金縛り状態では、意識があるのに随意筋を動かすことができないのです。
睡眠麻痺・金縛りでは、心と身体とが分離した状態となります。いま金縛りにあって、身体が動かないんだと自分で判る場合もあります。
ナルコレプシー患者では、就寝するとすぐに「レム睡眠」に入るため、身体は眠っているのに、脳はまだ起きている覚醒状態に近いのです。このため、脳は活動して夢を見ているけれども、脳からの指令は筋肉には伝わらず、身体は動かせません。こうして金縛りになるのです。
突然的に身体が動くようになり、悪夢に登場した幽霊などを追い払うような動作ができるようになりますが、その瞬間には幽霊などは消え失せてしまいます。
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夜間熟眠障害
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ナルコレプシーの患者の夜間の眠りは、寝付きはよくても途中で目が覚めやすく、健常者に比べると、日中に居眠りをする反面、夜間に熟睡できない等の障害が起こります。
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自動症
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眠さを我慢しているとき、ほんの一瞬だけ眠りに入っても、身体の方はその直前に行っていたこと、普段行っていることを無意識に実行してしまうのが、自動症あるいは自動行為です。
授業中、ノートをきちんと取っているつもりでも、後で見たらミミズが引きずったような意味不明のことが書いてあったり、パソコンで仕事中にマウスを押そうとしていないのに手の方が勝手に動いてしまったりします。極端な例では、家に帰ろうとしているのに、自宅を通り過ぎてしまったり、知らない駅で途中下車してしまったりします。
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その他
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眠気を我慢しているとき、頭重、頭痛がします。また、肥満、多汗症、糖尿病が合併することもあります。
学校や職場で居眠りによる失敗が続くと、自信喪失となり、消極的、受動的、内向的になり、対人関係を嫌うような「ナルコレプトイド性格変化」と呼ばれる症状がでてきます。
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