薬用植物の効用
|
古来より中国で試されてきた、薬用植物と呼ばれる植物には、外傷の手当てや特定の病気の治療、アレルギーなどの体質の改善などに効果を持つものが多数存在します。
これらの薬用植物の利用法として、各種の生薬や漢方薬が開発され、主に漢方による治療に使用されています。また、医学的な使用に限らず、染料や香料、化粧品などに応用利用されることも珍しくありません。
また、民間療法として、薬草を酒に漬け込んで「薬味酒」として利用することもあります。
漢方では、これらの薬用植物の知識や利用法を「本草学」として集大成しています。
近年の医学的な進歩により、薬用植物に含まれる栄養成分、医薬成分などが確認され、医学的な有効成分を豊富に含む植物が大規模に栽培されるようにもなってきました。
|
植物の薬用成分
|
薬用植物が何故、医療的な有効成分を有するようになったのかは興味あるところです。
一般に、植物は害虫などの攻撃から自らを防衛するために、動物にとって害のあるようなアルカロイドなどと呼ばれるような化学物質を生成し、植物の中に蓄積します。
これらの有毒成分は、通常は毒として作用しても、ときに特定な病気や症状に対して薬として作用することがあります。このような毒性植物を上手に用いることで薬理効果を発揮しようとするのが漢方の手法となっています。
いわゆる民間療法の中でも、古来からの長い経験則などから、薬草植物などに含まれる毒性成分を薬理効果を持つ成分として有効活用できる場合があるのです。
|
薬用植物の応用
|
古来より伝わる薬用植物を近代医学の分野から研究し、いわゆる薬用植物から特定の病気や症状に効果を示す有効成分を抽出し、その化学構造を決定して近代的な化学工程を経て合成することもしばしばあります。
世界各地に伝わる薬用植物を調査研究して、その成果を用いた新たな医薬が発見されたことも珍しくありません。このような動きは世界の有名医学企業などで現在でも続けられています。
このような方法で製造される薬用成分は、ときに効果が強すぎたり、予想外に効果がなかったり、あるいは深刻な副作用を伴うなどの問題がでることも起こります。
合成医薬では、効き目が強すぎるなどの理由から、例えば養命酒などのように、もともとの薬草のままを適度に配合するなどして、緩やかな効能を引き出そうとすることも珍しくありません。
中華料理で香辛料になる「八角」と呼ばれる植物はの有効成分は「シキミ酸」ですが、これを原料にして鳥インフルエンザの治療薬「タミフル(オセルタミビル)」が合成されています。しかし、原料である八角をそのまま摂取してもインフルエンザには効果はありません。
なお、古来よりの薬用植物でも実際には医学的な効果はないのに、実際にその生薬などを摂取すると何らかの効果が現れることもあります。このような例では、多分にプラセボ(偽薬)的効果があることも知られています。
|