朝鮮人参の原産地
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朝鮮人参は、ウコギ科の多年草で、収穫するまでに通常は、5年以上の長年月にわたって栽培される薬用植物です。
朝鮮人参の原産地は、中国の遼東半島から朝鮮半島にかけての地域であり、中国東北部やロシア沿海州にかけて自生しています。江戸時代以降では、日本でも栽培されていますが、現在、世界で消費される朝鮮人参の70%以上は韓国や中国で栽培されたものです。
この植物は、太い主根があり、その先が分岐して白色~黄色~赤くなり独特な香りをもっています。茎は70cmほどに成長し、茎頂部に5個の小葉からなる掌状複葉を数個輪生します。夏季に茎頂に散形花序を出し淡緑黄色の小花を多数つけます。
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朝鮮人参の伝来
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紀元前1世紀頃の中国の書物である「急就草」には高麗人参が登場していて、既に2000年以上の歴史があることが分かります。更に、同じ頃の中国の薬草の書である「神農本草経」にも「上品」の薬草として記述されています。当時、薬草は上品・中品・下品と分類されていました。
高麗人参が日本に初めて伝来したのは、西暦739年(天平11年)のことで、渤海文王の使者が人参30斤を聖武天皇に奉呈したとの記録があります。奈良の正倉院には、光明天皇が高麗人参を人々に推奨したとの文献ばかりか、高麗人参そのものが保存されています。
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朝鮮人参の栽培方法
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朝鮮人参は、古来よりその薬効が認められ珍重されてきましたが、栽培は極めて困難であり、人工栽培が成功したのは、18世紀はじめの李氏朝鮮の時代になってからです。
天然ものの方が栽培ものより薬効が強く人気がありますが、現在、自生の朝鮮人参はほとんど入手困難で、市場にでるのは大部分が栽培種です。自生のものは、極めて高価で信じられない値段がついていたりします。日本円で1本100万円もするほどですが、当然、偽者が出現するので信用できません。
現在、朝鮮人参が栽培されているのは、韓国や北朝鮮、中国、そして日本です。
韓国・北朝鮮
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韓国では忠清南道錦山郡と仁川広域市江華郡にあります。韓国京畿道坡州市の烏頭山統一展望台などで購入できます。
北朝鮮では開城が朝鮮人参の産地として有名で、開城の人参酒が主要な輸出品ともなっています。
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中国
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中国では白頭山(長白山)の麓で「長白山人参」として栽培されています。
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日本
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日本では、福島県会津地方、長野県東信地方、島根県松江市大根島などが主な産地となっています。
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朝鮮人参は、もともとは寒冷高山植物であり、その成長は極めて遅く、収穫されるまでには4~5年以上の歳月が必要です。5年以下で収穫してしまうと、有効成分であるサポニンの含量も少なく、二十種類もあるサポニンのバランスも不安定になるとされ、通常、産地では6年以上のものが収穫されます。
このように、早期収穫したものでは、食べて時に薬効が十分に発揮できないとされるのです。朝鮮人参はなんといっても六年根を選ぶべきなのです。
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人参という呼び名
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朝鮮人参は、日本では御種人参(おたねにんじん、学名:Panax ginseng)と呼ばれたり、高麗人参(こうらいにんじん)と呼ばれたりします。本場韓国では、「人参」あるいは「人蔘(インサム)」と呼ばれています。
御種人参とは奇妙な名称ですが、江戸幕府八代将軍吉宗が、対馬藩に命じて試植させ、後に各地の大名に種を分け与えて栽培を奨励したことから、この名称が広まりました。
韓国では、かつて朝鮮半島に存在した統一王朝である「高麗」にちなんで「高麗人参」と呼ばれることがありますが、朝鮮人参とは呼びません。朝鮮という言葉が北朝鮮を意味するためです。
ところで、人参という名称の意味合いですが、枝分かれした根の形が人間の姿に似ていることに由来するとのことです。
日本では「人参」という文字がついているために勘違いされることもありますが、本来、朝鮮人参と普通の食用人参はまったく別の植物です。ちなみに、英語では「ginseng(朝鮮人参)」と「carrot(普通の人参)」となっていて、完全に別物として扱われています。
戦後の日本では、以前には、輸入元の韓国の感情に配慮して「朝鮮」という言葉を使わないように「薬用人参」と呼ばれて時期があったのですが、後にこの呼び方は、薬事法に抵触するとの行政指導があり、最近では「高麗人参」と呼ばれることが多くなっています。
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朝鮮人参の種類
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朝鮮人参は、畑から掘り出した後の加工方法により「紅参」「白参」という区別があります。
白参
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白参(はくじん、ペクサム)は、「生干し朝鮮人参」とも呼ばれるもので、掘り出したばかりの新鮮な朝鮮人参を、そのまま天日で乾燥させたものをいいます。
白参の一種で、濃い砂糖水に漬け込んでから乾燥させたものがあり、「糖参」と呼ばれています。
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紅参
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紅参(こうじん、ホンサム)は、掘り出したばかりの新鮮な朝鮮人参を、皮を剥がさずに、湯通ししてから乾燥させたものをいいます。日本薬局方では、根を蒸したものを紅参としています。
紅参は、最初に蒸すことで、朝鮮人参の持つ有効成分をほとんど損なうことがないため、白参に比べて有効成分であるサポニンの含有量が多い特徴があります。
更に、蒸してあることで、朝鮮人参に含まれるでん粉質がアルファー化されていますので、煎じたときに有効成分が溶け出し易くなるという長所もあります。
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