|
〔ウイルス性肝炎〕 |
|
〔ウイルス性肝炎〕には、A型、B型、C型、D型、E型など多数の疾患があります。 |
五類感染症で重要な〔ウイルス肝炎〕は、〔B型肝炎〕と〔C型肝炎〕の二つです。 |
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスの感染によって発症します。このウイルスは肝臓細胞内で増殖しますが、侵入された生体側では、異物であるウイルスを排除しようとして免疫機構が働きます。 また、B型慢性肝炎では、出生時や幼少時にB型肝炎ウイルスの感染したもの、生体の免疫機能が未発達で発症していないキャリアと呼ばれる人たちが、成長して免疫機能が働くようになって、肝炎を発症した状態です。 体力が弱っていて、B型肝炎に感染し、その後体力の回復と共に、免疫機能が働くようになって同じことが起こることもあります。 免疫機構が働き出すと、B型肝炎ウイルスは既に肝細胞内に侵入している状態なので、ウイルスを排除するためには、肝細胞ごと破壊することになり、炎症(肝炎)を起こすのです。 結局、B型肝炎ウイルス自体が肝細胞を破壊することはないのですが、人体の免疫機構がウイルス撃退のために、肝細胞に障害をあたえるのです。 B型肝炎は、症状の現れ方で、急性肝炎と慢性肝炎に分類されます。
|
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって、肝臓の細胞が炎症を起こす病気で、血液や体液によって感染します。 母子感染や輸血や刺し針事故、性的接触などでの感染があります。 このウイルスは、フラビウイルス科へパシウイルス属に属するC型肝炎ウイルスで、遺伝子型(ジェノタイプ)で「1a型」「1b型」「2a型」および「2b型」のタイプに分類されています。 日本人のC型肝炎患者では、「1b型」が約70%、「2a型」が20%、「2b型」が10%程度で、「1a型」はほとんどおりません。これらの内で、「1a型」「1b型」は、治療薬であるインターフェロンが効き難いとされています。 C型慢性肝炎患者の約70%では、徐々に病状が進行します。 何も治療せずに放置すれば、10~30年間で3~4割の人は、肝硬変になります。 肝硬変は、長期間の慢性肝炎症状のために、肝細胞が破壊され、繊維成分が増加して肝臓が硬くなってしまう状態です。 肝硬変になると、やがて症状は肝がんへと進行します。更に、生命の危険に関わる、食道静脈瘤や肝性脳症などを合併します。 |
|||||||||
C型肝炎には「急性肝炎」と「慢性肝炎」とがあり、急性肝炎では、特別な自覚症状はなく、発症初期に発熱や全身倦怠感、その後食欲不振や悪心・嘔吐が出現程度です。 まれに、黄疸が出ることもあります。慢性肝炎では、自覚症状は少なく、全身倦怠感、食欲不振、易疲労感などを認めることがある程度です。 しかし、C型肝炎に感染すると、必ずしも軽い炎症のまま経過することは少なく、かなりの確率で慢性化し、ウイルスの保菌者となります。 自然治癒は難しく、長い年月経過して肝硬変や肝がんなどに進展する危険性があります。 |
|||||||||
C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染します。感染者の血液が他の人の血液に入ることで感染しますが、空気感染や経口感染はしません。 以前には、輸血用の血液管理などが不十分だったために、手術時の輸血や血液製剤を介して感染する事故が多発しました。 現在では、先進国では検査体制が確立されたために、このような経路からの感染はほとんどありません。 しかし、覚せい剤の回し打ち、不衛生な環境でのピアスや刺青、針灸治療などは感染源となっています。 |
|||||||||
C型肝炎の診断では、先ず、血液検査として、IgM型HA抗体、HBs抗原、IgM型HBc抗体、HCV抗体検査を行います。 ここで、A型肝炎、B型肝炎でないと確認した後、HCV RNA を検査し、HCV抗体が陰性か低力値であれば、C型急性肝炎と診断されます。HCV抗体が陽性の場合、数ヵ月後に再検査し、抗体値が上昇していれば急性肝炎、そうでなければHCVキャリアの急性憎悪と診断されます。 HCV抗体検査が陽性の場合、HCV RNA が陰性なら慢性肝炎ではありません。感染が確定された後の継続的な検査としては、肝硬変や肝がんの早期発見、早期治療の手段として、肝機能を定期的に検査します。
|
|||||||||
C型肝炎に感染した場合の治療は、「対症療法」と「抗ウイルス療法」の二つがあります。 対症療法としては、急性肝炎の症状で消化器症状が強ければ栄養補給を行います。 抗ウイルス療法では、インターフェロンの投与を行います。急性肝炎であれば、発症後半年以内に投与すれば顕著な効果が期待できます。 慢性肝炎では、インターフェロン単独投与、またはインターフェロン+リバビリンの併用投与を行って治療します。 慢性肝炎を発症した場合、その後20年で約60%の人は肝硬変を患います。肝硬変になると、年間7~8%の患者が肝細胞がんに進展してしまいます。 尚、2017年初頭のニュースでは、C型肝炎を完全に治療する先進医薬が開発されたとされています。現時点では詳細は調査中です。 |