酵母を利用して有用な食品などを製造することができ、これを「発酵」と呼んでいます。発酵とは、狭い意味では、酵母などの微生物が嫌気性条件化でエネルギーを得るために有機化合物を酸化して、アルコールや有機酸、二酸化炭素などを生成する作用をいいます。また、広い意味では、微生物の作用を用いて、有用な食品を製造することを意味します。
もっと簡単に言うと、酵母とは糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する単細胞微生物をいいます。ビール、日本酒、ワイン、味噌、醤油、パン、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品は、酵母の働きにより製造されています。このような食品の製造に利用される酵母類には次のようなものがあります。
ビール酵母
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アルコール発酵を促す酵母の中で、ビールの発酵作用がある酵母がビール酵母です。ビール酵母には、エール酵母(上面発酵)とラガー酵母(下面発酵)という二つの種類があります。
エール発酵では、15~25度Cの常温でアルコール発酵させる作用があります。酵母が発酵しその役割を終えると表面に浮かんでくるので上面発酵と呼ばれています。また、ラガー酵母は、0~15度C以下でもアルコール発酵できる酵母で、酵母が沈殿する性質があります。現在ではラガービールが主要な製造方法となっています。
ビール酵母は、一般的にアルコール度が6%より高くなると活動を停止してしまう作用があります。このため、ビールのアルコール度は5~6%程度となっているのです。
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清酒酵母
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アルコール発酵を促す酵母の中で、清酒の発酵作用がある酵母が清酒酵母です。清酒酵母は、アルコール濃度が少々高くても活動を続けるため、アルコール度数も高めにすることができます。
明治28年に清酒もろみから清酒酵母が分離され、以降、酵母や麹菌として研究され、清酒製造用の多くの酵母が開発されました。現在、清酒製造のために20種類以上の優良酵母が使われています。
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ワイン酵母
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アルコール発酵を促す酵母の中で、ワインの発酵作用がある酵母がワイン酵母です。
ワイン酵母は、アルコール濃度が少々高くても活動を続けるため、アルコール度数も高めにすることができます。
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黒酵母
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黒酵母菌は、さとうきびの原糖に含まれる高分子多糖体、オリゴ糖からなる水に溶けやすい粘り気のある水溶体で、ドリンク剤や化粧品の原料、ペット用食品、畜水産飼料、水質浄化などに利用されています。
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パン酵母
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パンの発酵に使用されるのはイースト菌という単一種の酵母です。パン酵母が発酵するときに発生する炭酸ガスを利用して、パン生地はふっくらと膨らみます。
健康食品に利用されるパン酵母には、自然治癒力に働くキノコ類と同じ、βグルカンが豊富に含まれています。
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