チーズという言葉
|
チーズは、牛乳や山羊乳、羊乳などに、乳酸菌や酵素(レンネット)を加え、凝固させ発酵熟成して作る食べ物です。一部のチーズでは熟成させないものもあります。
ピザやグラタンなどと共に誰でも日常的に食べているチーズですが、チーズについて詳しく知る人は意外と少ないようです。ということもあって、このページではチーズとは何かという観点で調べてみました。
チーズという言葉はラテン語の「cseus」に由来し、ドイツ語では「Kse」、イタリア語では「cacio」といいます。フランス語では「fromage」といいますが、これはラテン語で「形づくる」を意味する言葉「forma」に由来しています。
|
チーズの原産地・歴史
|
搾りたての乳をそのまま放置しておくと、自然に乳酸菌発酵が起こり、上層部には脂肪が浮きあがり、その下には「ホエイ」と呼ばれる透明の液体の層と、「カード」と呼ばれる乳酸でたんぱく質が凝縮した層とに分離します。
このことから、人類が家畜を飼い始めた食の頃から、カードは容易に作ることができたものと考えられます。これらの保存には単純な加熱や乾燥、加塩などの方法がとられました。現在でも遊牧民のチーズには、脱脂酸乳を加熱して作るカードに加塩して絞り天日乾燥したものが多くあります。
チーズの本当の起源は定かではないものの、上記のような段階を経て、家畜の乳からとれる栄養価の高い食品として世界中のさまざまな民族の間で考案されました。このように、そのままでは腐敗しやすい乳の保存性と運搬性を高めたのがチーズの始まりであり、紀元前4000年頃には作られていたものとされています。
チーズの発見については、「古代のある日、アラブの商人が羊の胃袋の皮で作った水筒にミルクを入れ、砂漠を旅していたとき、喉の渇きを癒そうとしたところ、中から澄んだ水(乳清)と柔らかい白い塊(カード)が出てきた」というのがチーズの発見の最初であるという説が有力だとされています。
チーズは古くは紀元前3000年頃のメソポタミア時代の粘土板文書に記録があります。その頃のオリエント一帯地方の遺跡からチーズ製造用の「漉(こ)し器」と考えられる多数の土器が出土しています。更に、スイスにある湖上住居文化遺跡からは木製の漉し器が出土しています。古典的な酸凝固型チーズの製造法は、数千年前の古代より既に広い地域に存在したと考えられます。
チーズが現在のようなチーズになるためには、もう一段階「レンネット(Rennet)」の発見が必要でした。レンネットはプロテアーゼに属する酵素の一種で、凝乳酵素、あるいはレンニン 、キモシンとも呼ばれ、牛などの乳をチーズにする過程で用いられます。
レンネットは、牛や山羊、羊などの偶蹄目の哺乳期間中の第4胃袋に存在する酵素です。レンネット酵素発見の時代は不明ですが、レンネットを用いる進んだチーズの原産地は西南アジアと考えられています。
ひとつの証拠として、紀元前900年頃のコーカサス地方にあったウラルトウ王国の城の台所の遺跡から、羊の胃袋の切れ端や穀類、干し葡萄などの酵母が入って土器が見つかっています。
|
チーズ世界への普及
|
レンネットの発見以来、旧来の酸凝固型や加熱濃縮型チーズに加えて、乳酸発酵やレンネット酵素によるチーズの製法が西欧に広まり、多種多様なチーズを生み出しました。
かくして、チーズは全世界に広まり、牛乳・山羊乳・羊乳・馬乳・らくだ乳・トナカイ乳などという原料乳の種類や風土、製法などの違いによって一説では、現在、世界には800種類ものチーズが存在するようになりました。
フランスには一村一チーズと呼ばれるほど多数のチーズがありますし、中国にも、チベットのヤクのチーズや、料理に用いられるルーシャンや大良牛乳などの特殊なチーズがあります。モンゴルでは、牛や羊、山羊、馬、らくだの乳からクリーミーなチーズや干した脱脂チーズが作られています。
西欧でのチーズ作りの技術はシトー修道会(トラピスト)などが重要な役割を果たして進歩しましたが、工業的な生産が始まったのは1851年にアメリカにおいて、ジョージ・ウイリアムがニューヨークに小規模なチェダ-チーズの工場を建設したのが最初です。
その後、1870年代になると、デンマークのハンセンが精製したレンネットを販売するようになり、20世紀初頭にかけて工業的生産が普及しました。1904年には、アメリカのクラフトがプロセスチーズの製造を開始し、1916年にはチーズを加熱溶解して成型する製法の特許が成立しています。
チーズは大きくはナチュラルチーズとプロセスチーズに分けられますが、ナチュラルチーズが加熱処理などしないチーズであるのに対し、プロセスチーズは加熱・溶解させることで発酵を止め、長期保存に適した状態にしたチーズです。
|
日本でのチーズの歴史
|
日本では、飛鳥時代頃から乳牛が伝来し、酪(らく)や、酥(そ)、醍醐(だいご)などと呼ばれる乳製品が存在しました。この乳製品は恐らくは加熱凝縮型のチーズに近いものと推測されています。そして、この醍醐は最上級のチーズのことを指すとされています。「醍醐味」という言葉の語源ともされています。推古天皇の御世には醍醐の品評会が行われたとの記録も残っています。
日本でレンネット酵素による近代型チーズの最初の生産は、1875年(明治8年)のことで、北海道函館郊外七重の開拓庁勧業試験場において、アメリカ人ダンの指導のもとで行われました。
函館近郊湯の川のトラピスト修道院において、民間での最初のチーズが生産されたのは1900年(明治33年)のことでした。その後、1933年(昭和8年)になると、現在の雪印乳業が、千歳空港周辺の早来町遠浅(現安平町)で生産を開始しました。
当初は、保存性のよくないナチュラルチーズは普及せず、プロセスチーズが盛んに作られましたが、第二次大戦後になると、食生活の欧米化も進み、ナチュラルチーズも増大し、国内生産ばかりでなく、海外からの輸入品も販売されるようになりました。
|
チーズの作り方
|
チーズは「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の大きく2つに分類されます。「ナチュラルチーズは」乳種、製造や熟成、外観のタイプによってさらに7つに分けられます。
チーズには古典的な酸凝固型や乳酸菌型などの方法もありますが、ここでは、レンネットを用いた場合の基本的なチーズ製法(レンネット酵素凝固系チーズ:ゴーダチーズ)についてご説明します。
タンパク質凝固工程
|
30度C程度に加熱した原料牛乳にレンネット酵素と乳酸菌を加えて、たんぱく質を凝固させ「カード」を形成させます。
|
ホエイの排除工程
|
出来上がったカードを細かく切断し、更に加温してカードを収縮させ、乳清(ホエイ)を排除します。
|
圧搾工程
|
ホエイの排除を行ったカードを型枠に詰めて、圧搾して残っているホエイを更に除去します。
|
食塩水浸漬工程
|
成型されたカードを食塩水に浸漬して塩味をつけます。
|
熟成工程
|
塩味付けされたカードを15度C前後の室温で寝かせ数か月間熟成します。この熟成期間に、カードに残っている乳酸菌酵素がたんぱく質や脂肪分を分解して、チーズ独特の風味を作り出します。
|
各工程段階で、いろいろな処理を組み合わせることで、いろいろな種類のチーズをつくることができます。
|
チーズの用途
|
チーズは、そのままお酒の肴として食べたり、ピザなどのトッピング具材として用いたりしますが、その他にもいろいろな食品に広く使われています。チーズが用いられる主な用途としては、料理の素材として、お菓子作りの素材として、調味料としてなどに次のようなものがあります。
料理用
|
パン |
|
サンドイッチ |
|
ピザ |
フルーツピザにも用いる。 |
フォンデュ |
チーズフォンデュ |
パスタ |
粉チーズを食前に適量振りかけたり、カルボナーラパスタのようなパスタ料理として |
竹輪 |
紀文のチーちくなど |
|
お菓子用
|
ケーキ |
チーズケーキ |
クッキー |
|
クラッカー |
クリームチーズ等をのせて食べる。 |
せんべい |
チーズおかきなど |
イージーチーズ |
|
|
|
ギネスのチーズ
|
チーズの世界にもギネス記録に載っているものがあります。ここではそんな情報サイトをご紹介します。
巨大チーズケーキ
|
2009年1月29日、AFPによると、1月25日にメキシコ市で、メキシコ人シェフらが作った世界一大きなチーズケーキがギネス記録に認定されたという。
その大きさは実に直径2.5メートル、高さ55センチ、重量は2トン以上もあるという。チーズケーキ完成後に、2万人以上の民衆に振舞われたというから驚き!
(ギネス認定の巨大なチーズケーキ、重さは2トン!)
|
世界最大のチーズ
|
ウイキペディアの記事によると、世界最大のチーズは28.5トンもの巨大なもので、1995年、カナダ・ケベック州のアグローバ酪農組合がスーパーマーケットチェーンの注文で制作したものだという。
大人のカナダ人が一年で消費するチーズの2500人分の量に匹敵するとのこと。
(チーズ)
|
|