小児喘息は どんな病気ですか?
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小児喘息は、小児気管支喘息とも呼ばれる疾患で、通常、思春期終了までの間の喘息とされています。
日本小児アレルギー学会ガイドライン委員会編の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005g(略称JPGL2005)」において、次表ように説明されています。(はっきり言ってよくわからない説明文ですが、理解のために、特徴や発作程度、重症度、寛解という見出し項目を付け加えています。)
小児喘息の分類には、「アレルギー性での分類」「発症パターンによる分類」「季節性による分類」などでいくつかの表現方法があります。
小児喘息の特徴 |
気管支喘息(喘息)は、発作性に喘鳴を伴う呼吸困難を繰り返す疾病である。
組織学的には気道炎症が特徴で、小児においても気道リモデリングが認められる。
小児喘息ではアトピー型が多く、ヒョウヒダニに対するIgE抗体が高率に認められる。
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小児喘息の発作程度 |
小児喘息の発作程度は小、中、大発作および呼吸不全の4段階に区分され、呼吸状態と生活状態の障害程度によって判定する。
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小児喘息の重症度 |
小児喘息の重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型で表わすが、重症持続型の中で経口ステロイド薬の持続投与を要する重症例は重症持続型2として区分し、難治喘息(最重症型)と位置付ける。
小児喘息の重症度とGlobal Initiative for Asthma (GINA)ならびに「喘息予防・管理ガイドライン2003」における成人喘息の重症度を比較すると、小児の軽症持続型は成人の軽症間欠型、小児の中等症持続型は成人の軽症持続型に相当し、小児と成人では重症度判定に1段階のずれがある。
すでに長期管理薬を使用している患者の重症度を判定する場合には、現在の治療ステップを考慮して判断する必要がある。
各喘息治療薬を点数化し、それを積算することによって個々の症例の治療点数とし現すことにより、患者個々人の重症度変化を客観的に評価することができる。
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小児喘息における寛解 |
小児喘息においては、無治療・無症状になったときからを寛解と判定し、寛解が5年以上持続すれば臨床的治癒とする。
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小児喘息の定義
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小児気管支喘息は、発作性にヒューヒューとした笛性喘鳴を伴い呼吸困難を繰り返す疾病で、発生した呼吸困難は自然にあるいは治療により軽快して治癒する病気です。
その病理像は、気道の粘膜、筋層にわたる可逆性の狭窄性病変と、持続性の炎症とそれに基づく組織変化からなるものと考えられています。
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アレルギー性による分類
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小児気管支喘息においても、大人の喘息と同様に、アレルギー発症を伴う「アトピー型」と、感染因子が関与する「非アトピー型」とに分類されます。そして、小児喘息の大多数はアトピー型です。
アトピー型小児喘息 |
アトピー型小児喘息は、ダニやハウスダストなどの環境性アレルゲンに対して血液中に「IgE抗体」を作る体質の子供の喘息です。
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非アトピー型小児喘息 |
非アトピー型小児喘息では、ダニやハウスダストなどの環境性アレルゲンに対しては「IgE抗体」を作らない体質の子供に起こる喘息です。
特別なアレルギーのもととなる物質がなくても、喘息の発作が起こるタイプの小児喘息という意味です。
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発症型による分類
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発症の仕方の分類では「発作型」と「慢性型」とがります。
発作型小児喘息 |
小児喘息では、発作型が大多数を占めています。小児喘息の発作の程度は、呼吸の状態や呼吸困難感、生活の状態、意識障害の有無、ピークフロー値などによって、「小発作」「中発作」「大発作」および「呼吸不全」という段階に分類されます。
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慢性型小児喘息 |
小児喘息の多くは発作的に発症し、いろいろな段階の発作症状を起こしますが、発作がおさまると正常人と同じ状態になります。しかし、慢性型では、発作と発作の間においても、咳や痰がでたり、運動時の呼吸困難などの症状が現れます。
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季節型による分類
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小児喘息は、発作の起こりやすい季節があるかどうかの分類では、「季節型」と「通年型」に分かれます。
通常は季節型が多数を占めていて、特定の季節により多く発症します。
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治療方針 |
小児喘息の治療方針は、大きくは、「生活改善」「予防的治療」および「対処的治療」という三つの段階に分けて行われます。
小児喘息は遺伝的要素が強い病気ですが、それは小児喘息を発症しやすい体質が遺伝するということで、このような体質的要因がある上で、アレルギーを引き起こし易い、家庭ダニやカビ、花粉、化学調味料、医薬品、排気ガスや黄砂などの大気汚染物質によるアレルゲンとの接触が大きな要因となって発症します。
また、ストレスや激しい運動なども大きな発症要因となるので、これらの要因を除去したり、要因を避ける工夫が必要となります。これらを総合して、治療の第一歩は「患者の日常生活の改善」ということになります。
医療としての治療では、喘息発症の起点となるのが、「気道の炎症」であることから、このような炎症を抑制する治療が行われます。これにより発作が起きないようにするわけで、これを「予防的治療」と呼びます。
喘息発作が起きてしまうと、患者は呼吸困難になり、ひどくなると横になって呼吸もできず、坐ったままの起坐呼吸をするような、非常に苦しい状態になってしまいます。このような発作の苦痛を緩和する応急処置的な治療が不可欠となります。この段階の治療は「対処的治療」と呼ばれます。
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小児喘息の治療・管理ガイドライン
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日本小児アレルギー学会は、「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005」を提唱しています。それによれば、小児喘息の重症度については、「間欠型」「軽症持続型」「中等症持続型」および「重症持続型」に分かれていて、それぞれの型に対して、治療方針などを定めた「ステップ」が1~4段階に定められています。
また、このガイドラインは、小児の年齢層に応じて、「年長児(6~15歳)」「幼児(2~5歳)」および「乳児(2歳未満)」に分けて提唱されています。
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管理ガイドライン (年長児:6~15歳)
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ステップ |
基本治療 |
追加治療 |
1 間欠型 |
発作に応じた薬物療法 |
抗アレルギー薬 |
2 軽症持続型 |
吸入ステロイド薬(100μg/日)、あるいは抗アレルギー薬 |
テオフィリン 徐放製剤 |
3 中等症持続型 |
吸入ステロイド薬(100~200μg/日) |
以下の1つまたは複数の併用
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・テオフィリン徐放製剤
・長時間作用性吸入β2刺激薬
・DSCG
・貼付β2刺激薬
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4 重症持続型 |
吸入ステロイド薬(200~400μg/日)
以下の1つまたは複数の併用
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・テオフィリン徐放製剤
・長時間作用性吸入β2刺激薬
・DSCG
・貼付β2刺激薬
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経口ステロイド薬(短期間・間欠考慮) |
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管理ガイドライン (幼児:2~5歳)
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ステップ |
基本治療 |
追加治療 |
1 間欠型 |
発作に応じた薬物療法 |
抗アレルギー薬 |
2 軽症持続型 |
抗アレルギー薬、あるいは吸入ステロイド薬(考慮)(50~100μg/日) |
テオフィリン 徐放製剤 |
3 中等症持続型 |
吸入ステロイド薬(100~150μg/日) |
以下の1つまたは複数の併用
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・DSCG
・テオフィリン徐放製剤
・貼付β2刺激薬
・長時間作用性吸入β2刺激薬
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4 重症持続型 |
吸入ステロイド薬(150~300μg/日)
以下の1つまたは複数の併用
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・DSCG
・テオフィリン徐放製剤*3
・貼付β2刺激薬
・長時間作用性吸入β2刺激薬
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管理ガイドライン (乳児:2歳未満)
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ステップ |
基本治療 |
追加治療 |
1 間欠型 |
なし(発作の程度に応じた急性発作時治療を行なう) |
抗アレルギー薬 |
2 軽症持続型 |
抗アレルギー薬 |
DSCG吸入、吸入ステロイド薬(50μg/日) |
3 中等症持続型 |
吸入ステロイド薬(100μg/日) |
以下の1つまたは両者の併用
・ロイコトリエン 受容体拮抗薬
・DSCG(2~4回/日)
・β2刺激薬(就寝前貼付あるいは経口2回/日)
・テオフィリン徐放製剤(考慮)(血中濃度 5~10μg/ml)
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4 重症持続型 |
吸入ステロイド薬(150~200μg/日)
以下の1つまたは両者の併用
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・DSCG(2~4回/日)
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β2刺激薬(就寝前貼付あるいは経口2回/日)
・テオフィリン徐放製剤(考慮) (血中濃度 5~10μg/mL)
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