大麦という穀物
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大麦は、イネ科オオムギ属の穀物です。大麦は多くの場合、稲刈り跡の水田で二毛作として栽培されます。
大麦の脱穀した種子は、ビールやウィスキー、焼酎などの酒類や醤油、味噌などの発酵食品の原料として使われています。
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大麦の原産地・歴史
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大麦の原産地は、小麦と並んで世界で最も古くから栽培されていた作物のひとつです。大麦は約一万年前の古代より、現在のイラク辺り、メソポタミア文明が栄えて地域で栽培されていました。
一万年前の時代というのは、17万年前にアフリカで誕生した人類が、中近東、アジアへと広がり、シベリア、アラスカを経て南米まで辿りつき、地球上の大陸全土に広がった時代に相当します。
古代エジプトでは、紀元前5000年頃から農耕が始まりましたが、大麦が主食のパンの原料として使われていたことがヒエログリフに描かれています。
大麦は日本には3世紀頃、中国から朝鮮半島を経て伝来しました。3世紀頃といえば、弥生時代が終わり、女王卑弥呼が邪馬台国を統治していた頃のことです。そして、奈良時代には日本でも広く栽培されるようになりました。
日本に伝来当時の漢字表記「大麦」の「大」という文字の意味は、大小という意味合いではなく、「大=重要・本物・上質・品質の優れているもの・広い用途のもの」などで全般に優れているものを意味しています。大麦以外にも「大豆」「大麻」などがあります。
これに対して、「小麦」「小豆」などの「小」という文字の意味合いは、どちらかといえば、「小=代用品・品格の低いもの・劣るもの」的な意味合いをもっていました。
現在、栽培されている大麦の品種は、現在イラク周辺に生えている二条大麦の一種、「ホルデウム・スポンタネウム」という野生大麦が改良されたものともいわれています。
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大麦の生産量
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1年間の世界における大麦生産量は、約1.5億トンですが、主な生産国はロシア、カナダ、ドイツ、ウクライナなどとなっていますが、2004年の統計は次表のようになっています。
順位
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国名
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生産量
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備考
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1位
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ロシア |
1,718万トン |
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2位
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カナダ |
1,319万トン |
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3位
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ドイツ |
1,299万トン |
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4位
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ウクライナ |
1,107万トン |
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5位
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フランス |
1,104万トン |
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6位
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スペイン |
1,061万トン |
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7位
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トルコ |
900万トン |
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8位
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オーストラリア |
645万トン |
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9位
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アメリカ |
608万トン |
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10位
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イギリス |
586万トン |
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日本の大麦の主な輸入国は、オーストラリア、カナダ、アメリカの3か国で、平成18年の裸麦を含む大麦の輸入量輸入量は、オーストラリア 83万トン、アメリカ 16万トン、カナダ 34万トンとなっています。
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大麦の品種と用途
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大麦は穂の形状の違いから「二条大麦」「四条大麦」および「六条大麦」とに分けられます。穂を上から見たときに二条になる大麦が二条大麦、六条になる大麦が六条大麦です。
二条大麦や六条大麦には「皮麦」と「裸麦」とがあります。裸麦は、もともとの大麦(皮麦)が突然変異してできた種類で、お米の籾(もみ)に相当する部分表皮が剥がれやすくなっています。
大麦はその種類によって用途が異なりますが、種類ごとの主な用途は次のようになっています。
六条大麦
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六条大麦は、主にお米と一緒に炊いて麦ご飯として食したり、焙煎して麦茶として飲んだりします。
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二条大麦
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二条大麦は、麦ご飯として食べますが、その他の用途として、主にビールや麦焼酎などお酒の原料にもなります。
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裸麦
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裸麦は、麦ごはんとして食べるほかに、麦味噌や焼酎の原料にもなります。
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大麦は、この他にも、「香煎(麦こがし)」や「水飴」の原料にも使われます。大麦にはグルテンが含まれていないので、大麦の粉でパンを焼いても小麦粉のパンのようには膨らみません。どっしりと重い感じのパンができあがります。
また、漢方薬などに使われることもあります。品質のよくない大麦は、家畜の飼料ともなります。
尚、最近の健康ブームもあって、若葉を粉砕して粉末にしたものは青汁として盛んに販売されるようになりました。
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