〔石榴（ざくろ）〕

　石榴の原産地は、イラン東部から北インドのヒマラヤ山地辺りとされています。石榴は主に食用とされますが、観賞用としても栽培されます。

　古代ギリシャなどの医学書や哲学書など多くの古文書に、ザクロの効能が記載されていて、ザクロが古代より珍重されてきたことが分かります。

　日本へは、10～11世紀、平安時代にはシルクロードを経由して、薬用目的で渡来したとされ、「日用本草」や「本草蒙筌」などの書物に記載されています。

　ザクロは漢名では「石榴」と書かれ、この音読み「せきりゅう」が次第に変化して最終的に「ザクロ」と発音されるようになったと考えられています。

　石榴の果皮を乾燥させたものは「石榴果皮（せきりゅうかひ）」と呼ばれ、アルカロイドやイソペレチェリン、タンニンなどを含んでいます。

　果汁には女性ホルモン物質である、エストロゲンが含まれるとされていますが、国民生活センターの試験では検出されなかったとのことで確かではありません。

　アメリカFDAの報告によれば、石榴の種子には、エストロゲンが含まれ、生物学的効能は実際のエストロゲンと同様だとされています。

　栄養素分析の結果では、ビタミンCの含有量は豊富でが、他にエラグ酸、酒石酸、クエン酸、ミネラルのカリウムが豊富に含まれています。

　石榴の果皮を乾燥させたものは「石榴果皮（せきりゅうかひ）」を煎じて飲むと、下痢止めや有鉤條虫駆除薬の虫下しになるとされますが、副作用が強いために現在では使用されません。

　エストロゲンが含まれているとして、血流改善効果、美容効果や抗ガン作用があるとの多数の商品がありますが、有効性は必ずしも確認されていません。

　一方で、石榴の皮は、嘔吐や悪心、めまい、下痢などの副作用を起こすことがあり、大量に摂取すると中毒症状となり、発熱、悪心、ふるえ、虚脱、黒内障、複視、視野狭窄などの眼障害が起こる可能性があります。これらの副作用の原因はタンニンによるのではないかといわれています。そのため、タンニンを除去した石榴ジュースも販売されています。

　食用とされる石榴には、石榴を料理の飾りつけにしたり、果汁を濃縮して料理の味付けやサラダドレッシングにしたり、果肉の粒を煮込み料理やデザートに用いたりします。また、石榴シロップというものもあります。