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栄養成分

〔多量ミネラル〕


 人体を構成する物質の96%は、炭素+水素+酸素+窒素の4つの元素で占められていますが、残りの4%を占める数多くの元素がミネラルです。

 本来、ミネラルの種類は非常に多く100種類以上もあります。

 その中で、ヒトが生存するために必要不可欠な必須ミネラルが、16種類あるとされ、それらは7種類の〔多量ミネラル〕と9種類の〔微量ミネラル〕とからなります。

 多量ミネラルはしばしば〔主要ミネラル〕とも呼ばれています。


 〔多量ミネラル〕は、体内に比較的多く存在して、1日当たりの必要所要量が100mg以上となるミネラルをいい、それらは硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リンの7種類です。多量ミネラルは、体内のミネラルの99%を占めています。

 これらのミネラルは、動物が生存するために必要不可欠ですが、動物の種類や性別、成長段階などにより、必要となるミネラルの種類や量は変わります。ミネラルが不足すれば〔ミネラル欠乏症〕が起こり、逆に体内に過剰に蓄積すれば〔ミネラル過剰症〕が起こります。


多量ミネラルの種類(7種類)
元素名 化学記号 特徴
硫黄 S

 皮膚や毛髪、爪をつくる。

塩素 Cl

 酸とアルカリのバランスを調整する。

カリウム K

 体内のナトリウム量を調整し細胞を正常に保つ。

カルシウム Ca

 骨の主要成分で、血液中に溶解して血液凝固や精神安定の働き、筋肉の働きをサポートする。

ナトリウム Na

 ナトリウムポンプが体内水分の均衡を保つ。

マグネシウム Mg

 血圧の正常化、体温調節に関与する。神経の興奮を抑制し筋肉の働きを正常化する。

リン P

 カルシウムと結合してリン酸カルシウムとなり骨や葉の成分となる。


多量ミネラルの説明 ◆〔多量ミネラル〕の種類や機能の概要についてご説明します。
硫黄

 硫黄は、体内で蛋白質やアミノ酸と結合して存在し、健康な毛髪や皮膚、爪を作る重要な成分です。また、軟骨や骨、腱を作る成分にも含まれています。

 硫黄が欠乏すると、皮膚炎やシミが出来、爪がもろくなったり髪が抜けたりします。

 硫黄を多く含む食品は、魚介類・肉類・卵・牛乳などです。

塩素

 塩素は酸とアルカリのバランスを調整して、体を中性付近に保つ機能があります。塩素は食べ物を消化するための胃酸を作ります。肝臓の働きを補助し老廃物を体外に排泄させます。

 塩素が欠乏すると、胃液の酸度が弱くなり消化不良や食欲低下が起こります。また毛髪や歯が抜けるなどが起こることもあります。しかし、普通の食事を摂っていればこの心配はありません。

 逆に塩素を摂りすぎると、むくみなどの症状がでることがありますが、通常は過剰摂取しても、汗や尿で対外に排出されるので特別な副作用はありません。

 塩素を多く含む食品は、食塩、梅干、しょうゆ、みそなどなどです。

カリウム

 カリウムは体内に200gほど存在します。血球や細胞の内液に多く含まれます。ナトリウムと同様に、細胞内の浸透圧を一定に調整する働きや、体液の酸アルカリ平衡に重要な機能を果たします。

 カリウムには、ナトリウムを排泄する作用があり、カリウムの摂取で高血圧などの予防に役立ちます。水分を多く飲んで排尿量が増えると、カリウムも同時に排泄されてしまうので、こんなときはカリウムの補給が必要です。

 カリウムはバナナなどの果物や、野菜、海藻類などに多く含まれますが、野菜などを茹でるとき水に溶け出してしまうので、手早くする必要があります。

 カリウムが欠乏すると、筋力低下や腸壁緊張などの症状が起こります。また、腎臓の機能障害者が過剰に摂ると高カリウム血症を起こすことがあります。

 カリウムを多く含む食品は、バナナ・スイカ・リンゴ・柿・栗・セロリ・ジャガイモ・薩摩芋・小豆・牛乳・昆布・ワカメ・鮎などです。

カルシウム

 カルシウムの大部分は、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムの形で骨や歯の成分として体内にあり、成人では1kgくらいの量があります。また、血液中にも微量ながら存在し、心臓や脳の働き、筋肉の収縮、血液凝固などの機能として、生命維持にかかせない働きをしています。

 カルシウムは、食品から摂取するのも大切ですが、腎臓で作られる活性型ビタミンDで吸収が促進されので紫外線に当たることも大切です。また、適度な運動などで骨に加重をかけるとカルシウムの吸収が促進されます。

 血液中のカルシウムが減少すると、それを補うために骨から溶け出します。骨は体を支えるためだけでなく、カルシウム補給のための補給基地となっているのです。カルシウムは、生命維持の機能を果たしながら消費されます。また、閉経後の女性ではホルモンの関係で骨からの流出が進みますので、日常の十分な摂取が必要です。

 カルシウムが不足すると、骨粗鬆症や歯がもろくなったり、成長障害、神経過敏などが起こります。更に、血管を老化させて動脈硬化や心臓病、脳卒中なども誘引します。逆に過剰すぎると、高カルシウム血症になることもあります。

 カルシウムを多く含む食品は、牛乳・乳製品・小魚・干しエビ・海藻類・ゴマ・切り干し大根などです。

ナトリウム

 ナトリウムの大部分は、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムとして体液中に存在します。その量は全体で100g程度の微量です。また、細胞の外液の浸透圧を一定に調整する働きや、体液をアルカリ性に保ったり、筋肉、神経の興奮を鎮める作用もします。

 ナトリウムが欠乏すると食欲減退や精神不安になりますが、最近の日本人の食事では、食塩の摂取が多く、ナトリウムが不足する心配はありません。むしろ、過剰摂取による高血圧や動脈硬化、胃潰瘍などになる方が問題です。カリウムを多く摂るとナトリウムの排泄を促進するので、カリウムを摂ることがお勧めです。

 ナトリウムを多く含む食品は、食塩・醤油・味噌・塩から・佃煮・ハム・ソーセージ・蒲鉾・インスタントラーメンなどです。

マグネシウム

 マグネシウムの大部分は、リン酸マグネシウムの形で骨や歯の成分として存在します。その量は全体で30g程度の微量です。また、ごく微量ながら筋肉、脳、神経にも存在ていします。細胞内のマグネシウムが不足すると骨組織から放出されます。

 マグネシウムが骨から放出されるとき、その5倍量のカルシウムも一緒に放出されます。細胞のイオン開口部から余分なカルシウムが細胞内に侵入すると、血管の筋肉などを収縮させ高血圧の原因ともなります。マグネシウムの投与で高血圧、動脈硬化、糖尿病などの予防になります。

 マグネシウムが欠乏すると、心悸亢進、神経興奮、虚血性心疾患などの障害が起こります。しかし、通常の食事をしていれば不足する心配はありません。

 マグネシウムを多く含む食品は、魚肉類・バナナ・ほうれん草・ごま・大豆・ワカメ・昆布などです。

リン

 リンの大部分は、リン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの形で骨や歯の主成分として体内にあり、成人では0.5~0.8kgくらいの量があります。また、血液中にも微量ながら存在し、血液の酸、アルカリの中和の機能を果たします。リンには、ビタミンB1、B2と結合して補酵素をつくったり、糖質代謝にも作用します。

 リンが欠乏すると、歯がもろくなったり、骨粗鬆症となることがありますが、通常の食事をしていればその心配はありません。逆にリンを過剰摂取すると、副甲状腺機能亢進や軟組織のカルシウム沈着などの問題が起こります。

 リンを多く含む食品は、牛乳・乳製品・卵黄・肉・魚などです。